SNS内のコンテンツがテキスト中心のものから動画へと移行し、女子高校生はアプリを使いこなして動画を作成している。特に誕生日や卒業式などの記念日には、手作り動画をInstagramに投稿してお祝いし合う。今回はそんな女子高生の実態をリポートする。

楽しい思い出づくりの期間が2020年は…… ※画像はイメージです(写真提供:ふじよ/PIXTA)
楽しい思い出づくりの期間が2020年は…… ※画像はイメージです(写真提供:ふじよ/PIXTA)

“振り返り”を動画にまとめて投稿

 学年の締めくくりとなるこの時期、女子高生たちは思い出づくりにいそしむはずだった。しかし新型コロナウイルス対策で休校になり、突然学年が終了、もしくは卒業となった。SNSには「#LJK終了」「#JKブランド終了のお知らせ」などのハッシュタグ付きで、休校を悲しむ投稿が目立った。

 ちなみに「LJK」の「L」とは、「JK(女子高生)」の学年を示し、「Last JK」、すなわち高校3年生の意味だ。1年生は「FJK(First JK)」、2年生は「SJK(Second JK)」と表記する。これらは女子高生たちがよく使うハッシュタグだ。

 この時期、いつもなら「制服ディズニー」と称して制服姿で東京ディズニーリゾート(TDR)へ行ったり、プリクラで制服の写真を撮ったりしている女子たち。しかし2020年の現在、TDRは休園、「プリクラ」は休業の店舗もあり、大切な思い出づくりが思うようにできない……。

 ところが、彼女たちは元気だ。クラスや学校の友達と会えなくなってもSNSがある。LINEの通話やビデオ通話で会話をし、Instagramのストーリーズにある「質問」や「アンケート」などのスタンプでやり取りしている。Zenlyでお互いの位置情報が分かる相手とは、「もう3日家から出てないよね」とからかい合うなど、スマホのおかげで24時間つながっていることが救いになっているのだ(関連記事「『Zenly』で友達に位置情報を全見せ 女子高生など若者が夢中」)。

 そして、空いた時間を動画作成に費やしている女子もいる。これまでの“振り返り”を動画にまとめて、SNSに投稿するのだ。

音楽に合わせて思い出動画を作る

 女子高生は誕生日のお祝いや卒業、学年の締めくくりなど、何かの記念に動画を作成する。誕生日なら相手と自分が写っている過去の写真や動画を、スライドショーのようにつなぎ合わせ、友情をテーマにした楽曲をBGMにする。曲のリズムに合わせてタイミングよく画面を切り替えたり、字幕を1文字ずつ足したりと、その手間をいとわないまめさ、アイデアには脱帽する。

 卒業シーズンにはクラスの友人や行事の写真と動画、先生への感謝のメッセージを含めて動画を作成する。その際、画像加工や動画編集はスマホアプリのみで行う。

 加工アプリは「PicsArt(ピクスアート)」が人気だ。米サンフランシスコに本社を構えるPicsArt社は2012年に創業。20年1月現在、全世界におけるアプリの累計ダウンロード数は7億超、月間アクティブユーザーは1.4億人と発表されている。19年に全世界でダウンロードされたアプリランキングで第14位となった(米SensorTower調べ)。20年3月10日現在、App Storeの「写真/ビデオ」無料ランキングで7位に入っている。人物の切り取りや手書き加工など、若者が好む加工が簡単にできるのが高い人気の理由。静止画だけでなく、動画も加工が可能だ。

画像加工といえば「PicsArt」が女子高生に人気
画像加工といえば「PicsArt」が女子高生に人気

 動画編集アプリ「InShot」や「Perfect Video」、iOS標準の「iMovie」もよく使われている。自撮りに関しては「プリクラ」で撮影した画像が使われることが多いが、日常的な撮影では「SNOW」や「SODA」といった美肌加工アプリの人気が高い。

10代が集まるInstagram

 こうした記念日動画を作成するトレンド、今に始まったことではない。筆者が女子高生カルチャーの取材を始めた6年ほど前にも盛んに行われていた。

 もちろん使うアプリは少しずつ変わり、投稿先も流行しているSNSへとシフトしている。以前は投稿先といえばライブ配信&動画アプリ「MixChannel」だったが、現在はTwitterやTikTok、そして断トツでInstagramだ。

 Instagramでは手作り動画だけでなく、ストーリーズでも“お祝い”が投稿されている。誕生日当日になると、友人たちは一斉にお祝いメッセージをストーリーズに投稿し、本人はそのお礼をストーリーズに投稿する。早くも20年2月25日にリリースされたばかりのInstagram「ミュージックスタンプ」が人気だ(関連記事「Instagram ストーリーズ投稿にミュージックスタンプ、日本解禁」)。女子高生たちは教室でサプライズを演出してみんなでプレゼントを渡すことがあり、その喜びの様子を動画に収め、スティーヴィー・ワンダーの「Happy Birthday」などの楽曲を投稿にスタンプしている。

ストーリーズ投稿の例(著者作成)。実際には2ショット写真がよく使われる
ストーリーズ投稿の例(著者作成)。実際には2ショット写真がよく使われる

 外出がままならない厳しい状況も何のその。3月に誕生日を迎える女子高生もSNSを通じて多くの友人から祝福されている。とはいえ、リアルでのお祝いにはかなわないはず。いつものように教室で会える日が来ることをみな願っているだろう。

(写真提供:ふじよ/PIXTA)

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