英インターコンチネンタル・ホテルズ・グループ(IHG)の新ブランド「ホテルインディゴ」が箱根に上陸した。最大の特徴は、日本ならではの温泉を大胆にアレンジした点にある。水着着用で混浴とし、ソファを配したり壁面にデジタルアートを投映したりと、まるでプールのような施設に仕上げている。

「ホテルインディゴ箱根強羅」の温泉大浴場。内部はまるでプールのような設備になっている
「ホテルインディゴ箱根強羅」の温泉大浴場。内部はまるでプールのような設備になっている

 「え、これが大浴場なの!?」。2020年1月24日に開業した「ホテルインディゴ箱根強羅」(神奈川県箱根町)を訪れた日本人は、大半が驚くに違いない。温泉大浴場に足を踏み入れると、入り口こそ「ゆ」の文字が書かれた純日本風ののれんがかかるが、男女別の脱衣場を抜けると、水着着用で男女混浴の「スパスペース」が広がるからだ。

 あえてスパスペースと書いたように、ホテルインディゴ箱根強羅の温泉大浴場は日本人が想像する大浴場の概念を超えている。ジェットバスの壁面にはデジタルアートの映像が投映され、鑑賞用のベンチやカウチソファが用意。歩きながら体を芯から温める深さ1.2メートルの「立ち湯」というスペースもある。浴槽には、まるでプールにあるようなデッキチェアも置かれている。

神奈川県箱根町の強羅地区、早川の畔(ほとり)に開業した「ホテルインディゴ箱根強羅」
神奈川県箱根町の強羅地区、早川の畔(ほとり)に開業した「ホテルインディゴ箱根強羅」
入り口はいかにも温泉の大浴場といった雰囲気-
入り口はいかにも温泉の大浴場といった雰囲気-

 なぜ、このような不思議な空間が生まれたのか。その秘密をひもとくにはまず、ホテルインディゴというブランド特徴を知る必要がある。ホテルインディゴは、外資系ホテルチェーンである英IHGの1ブランド。04年に米国のアトランタにオープンしたのを皮切りに、世界15カ国以上に100軒超を展開している。日本国内ではこの箱根強羅が第1号となる。21年下期には愛知県犬山市での開業が決まっており、さらに都市部への展開も検討されているようだ。

 ホテルインディゴは、IHGのホテルラインアップの中ではラグジュアリーホテルである「インターコンチネンタル」よりは下で、「クラウンプラザ」とほぼ同等に位置付けられる。インターコンチネンタルやクラウンプラザが伝統的なホテルのイメージを持つのに対し、ホテルインディゴは個性的なサービスを売りにする。

 「ネイバーフッド ストーリー」というコンセプトを掲げており、食や歴史、文化などその土地でしか体験することができない要素をホテルのハード・ソフト両面に取り入れている。「世界中に一つとして同じホテルインディゴはない」(ホテルインディゴ箱根強羅のポール・ツジ総支配人)という。「共通しているのは、IHG共通のリワードプログラムと、メイン料理が選べるセミビュッフェ形式の朝食を用意していることぐらいだ」(ツジ総支配人)

 冒頭で紹介した大浴場は、箱根を代表する文化である温泉を、インディゴ流に大胆にアレンジしたものだと言える。ツジ総支配人は「訪日外国人の中には人前で裸になることに抵抗がある人も多い。温泉という文化はリラックスするためのもの。日本人にはまるでプールのように見えるかもしれないが、訪日外国人も含めて誰でもリラックスできる空間を考えたら、こうなった」と話す。

ホテルインディゴ箱根強羅のポール・ツジ総支配人。日本国内の外資系ホテルでキャリアを積んできた、オーストラリア出身の日系2世だ
ホテルインディゴ箱根強羅のポール・ツジ総支配人。日本国内の外資系ホテルでキャリアを積んできた、オーストラリア出身の日系2世だ

 箱根は国際的な知名度がありながらも、宿泊施設の多くは伝統的な温泉宿で、これまで外資系ホテルは「ハイアットリージェンシー 箱根 リゾート&スパ」しかなかった。温泉という日本ならではの文化を体験したいと思いながらも、温泉宿への宿泊はハードルが高いと考える訪日観光客は少なくなかった。

 実際、箱根町の調査によると、18年の宿泊者数は年間452万6000人で、うち外国人は59万6000人。インバウンド比率は約13%で、同期間の全国平均17%(宿泊旅行統計調査。観光庁調べ)よりも低い。日中は訪日客が目立つ箱根だが、多くは日帰り客や通過客で、宿泊する人は限られている。

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