IoT機器を使ったサービスを提供する事業者など向けに通信回線を貸し出すMVNO(仮想移動体通信事業者)のソラコム(東京・世田谷)。法人向けに特化して成長を遂げた同社が2020年2月21日、初となる個人向けサービス「ソラコムモバイル」を開始した。なぜ、あえてレッドオーシャンに飛び込むのか。

ソラコムはeSIMを使った個人向けMVNOサービス「ソラコムモバイル」を始めた(写真提供/ソラコム)
ソラコムはeSIMを使った個人向けMVNOサービス「ソラコムモバイル」を始めた(写真提供/ソラコム)

 2019年9月の改正電気通信事業法施行による大手キャリアの料金プラン改定や、20年4月から「楽天モバイル」が自社回線によるサービス提供を始めるなど、MVNO事業者が苦境に立たされている。当初は料金が安い「格安スマホ」として一定の支持を集めたものの、大手キャリアの値下げで料金差が縮小。通信速度やアフターサービスでは自社回線を持つ通信キャリアに及ばず、MVNOへの乗り換えは伸び悩みを見せ始めている。事業者間の競争が激しく収益を上げにくくなったことから、DMM.com(東京・港)が19年9月に「DMM mobile」事業を楽天モバイルに事業譲渡するなど、業界再編も始まっている。

 そんな中、「Soracom Mobile(ソラコムモバイル)」ブランドで個人向けMVNOサービスを始めたのが、KDDIグループのソラコムだ。契約すると、北米(4カ国)/オセアニア(2カ国)か欧州(36カ国)で使える。料金プランは30日間1GBから10GBまでの4種類。例えば、欧州の1GBプランは6.99ドル(約760円)、北米/オセアニアの10GBプランは97.99ドル(約1万600円)となる。主に海外旅行客の現地での通信手段として打ち出すが、「今後、要望があれば日本国内での通信プランも検討したい」(玉川憲社長)とする。

ソラコムモバイルを発表したソラコムの玉川憲社長(写真提供/ソラコム)
ソラコムモバイルを発表したソラコムの玉川憲社長(写真提供/ソラコム)

 14年創業のソラコムはこれまで、IoT機器向けに特化し、BtoBで通信回線を提供してきた。国内のみならず海外でも通信サービスを展開する。ソースネクストの通訳機「POCKETALK(ポケトーク)」が海外でも通信契約を結ぶことなく利用できるのは、実はソラコムを採用しているおかげだ。ソラコムが提供するIoT回線は100万を突破し、今後もLPガス大手の日本瓦斯(ニチガス)が約86万台を設置する予定のスマートメーター「スペース蛍」で採用することが決まっている。

 どちらかと言えば“黒子”に徹してきたソラコムが、距離を置いてきた個人向けサービスに今、あえて踏み込むのはなぜか。ポイントは、物理的なSIMカードが要らない「eSIM」を今回のサービスで活用している点にある。玉川社長は「eSIM向けのサービスはまだ小さな市場。マーケットの拡大を待つのではなく、我々自身が乗り出して立ち上げていきたかった」と明かす。

 eSIMは、従来のSIMカードを置き換える技術だ。通常のSIMカードには固有の加入者番号が記録されており、スマートフォンやIoT機器に差すことで通信が可能になる。この仕組みをソフトウエア化したのがeSIMである。物理的なSIMカードを抜き差しすることなく、アプリなどを使って通信事業者や電話番号を変更できる。

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