ソフトバンクは2020年3月5日、次世代通信「5G」の商用サービスを3月27日に開始すると発表した。対象機種を購入すれば5Gを使うための追加料金は2年間無料としたが、体験できるエリアはかなり限定的だ。まもなくNTTドコモやKDDIも5Gサービスを発表する。いよいよ本格的な5Gのサービス競争が始まった。
5Gの特性を生かした新サービス「5G LAB」
2020年3月5日、携帯キャリア大手3社の中で、いち早く5Gの商用サービス開始時期を発表したソフトバンク。3月27日に始まる新サービスの目玉は、5Gの特性を生かした新しいエンターテインメントやスポーツの体験を提供するコンテンツ配信サービス「5G LAB」だ。
5G LABで提供されるサービスは大きく4つある。1つはAR(拡張現実)技術を利用して、アイドルやスポーツ選手、各種キャラクターなどをスマートフォンのカメラに登場させることができる「AR SQUARE」。また、従来のVR(仮想現実)映像配信サービス「LiVR」をベースに内容を大幅に拡大した「VR SQUARE」は、VRによる臨場感あふれる映像が楽しめるものとなっている。「FR SQUARE」は、コンサートや試合のライブ映像を複数の視点から視聴できる多視点映像配信サービス。FRとは「Free view point Reality」の略だ。以上3つを合わせた「5G LAB ベーシック」の利用料は月額500円(税別)。
「GAME SQUARE」は先述の3つのサービスとは別料金で、利用料は月額1800円(税別)。こちらは米エヌビディアのクラウドゲーミングサービス「GeForce NOW」をソフトバンクが日本で提供する「GeForce NOW Powered by SoftBank」のことを指す。同サービスは以前からベータテストが実施されていたが、5Gのサービス開始に合わせて正式版の提供となる。
5G対応スマホは4機種、Xperiaは採用見送り
ソフトバンクは、5Gのサービス開始に合わせて5G対応の端末も用意する。そのラインアップを見ると従来とはかなり傾向が異なっている。
新たに登場する4機種のうち、ソフトバンクがフラッグシップモデルと位置付けたのは、8K動画の撮影が可能なシャープ「AQUOS R5G」。また、専用ケースを装着することで2画面に拡張できる韓国LG電子「LG V60 ThinQ 5G」も、5Gの先進性をアピールできる端末として発表会でのデモに多用されていた。
ミドルレンジは、AQUOS R5Gと同等のチップセットを採用したZTE「Axon 10 Pro 5G」。有機ELディスプレーは6.4型。先述の2機種よりも目立つ特徴は少ないものの、価格を抑えた形で販売される見込みだ。
エントリーモデルは、オッポが携帯キャリア大手向けに初めて提供する「Reno3 5G」。こちらはチップセットにミドルクラスの「Snapdragon 765G」を採用し、5Gに対応しつつも一層の低価格を実現したモデルだ。この端末は、国内ではソフトバンク独占販売となっている。
一方で、ソニーモバイルコミュニケーションズが20年2月に発表した5G対応モデル「Xperia 1 II」がラインアップに含まれていない。ソフトバンク副社長執行役員兼COOの榛葉淳氏によれば「いろいろな条件などを鑑みて、サービス開始時のラインアップとしては見送った」とのこと。19年の電気通信事業法改正で端末値引きが規制されたことで、販売しづらくなった高価格帯のモデルの数を絞ったとみていいだろう。
4Gの月額料+1000円で5Gのサービスが利用可能
ソフトバンクが20年2月25日に発表した新料金プラン「メリハリプラン」は、5Gのサービス提供を強く意識した料金プランだ。このプランは月額7480円(税別)で最大50GBの通信ができるほか、「YouTube」や「Facebook」といった主要オンラインサービスのデータ通信量がカウントされないのが特徴。月当たりの通信量が2GB以下の場合1500円値引きされる点が、従来の「ウルトラギガモンスター+」とは大きく異なる。
3月27日以降、メリハリプランの契約者は5G LABベーシックが利用可能になるが、同サービスの利用時も基本的にデータ通信量はカウントされないとのこと。メリハリプランなどの4Gの料金プランで5Gを利用する場合は、5Gの基本料金として月額1000円の追加が必要だが、8月末までの加入者に対しては2年間、5Gの基本料金を無料にする。
ソフトバンクが5Gのサービスを無料で提供するのは、サービス開始当初、利用できるエリアが限られているためとみていいだろう。同社が公開しているエリアマップによれば、東京23区で5Gが利用できるのは、山手線でいえば秋葉原から浜松町辺りまでと非常に狭い(20年4月末時点)。20年夏以降に対応が予定されているエリアを見ても、5Gの恩恵に授かれる人は多くないと思われる。
ソフトバンクは、総務省から割り当てられた5G用の周波数帯が広範囲をカバーするのに適していないため、4Gの周波数帯を5Gと共用することで、5Gの対象エリアを広げる方針を打ち出している。しかし、そのためには総務省の許諾が必要で、現在議論が進められている最中だ。榛葉氏は「21年度中に人口カバー率90%を目指す」としているが、その実現は総務省次第と言える。
(写真提供/ソフトバンク)