SNSで話題となった、美しい「透明な消しゴム」

 もう一つ注目したいのが、アイデア賞を受賞したシード(大阪市)の消しゴム「クリアレーダー」(100~150円・税別)だ。透明なのに消字性能が高いことや、SNSでの話題性が評価された。

文字が透けて見えるので、消したい文字だけ消すことができる
文字が透けて見えるので、消したい文字だけ消すことができる

 Instagramでは青空や夕日を背景にしてクリアレーダーを撮影した写真が多く投稿されている。また、クリアレーダーの表面に細かい模様を彫って投稿している人も見られる。透明性が高く、どれも美しい仕上がりなのがポイントだ。

 この商品、実は完成までに時間がかかっている。シード取締役統括本部長の藤井慎也氏はこう話す。

 「これまで透明素材の消しゴムを作り続けてきたが、2010年の商品を最後に化学品会社の都合で作れなくなっていた。15年に会社が100周年を迎えた際、透明素材に金粉を入れて商品を作ろうとしたがうまくいかず、挫折した。しかし、それをきっかけに新たな透明素材を見つけ、企画を進めてクリアレーダーができた」

1983年(写真上)と86年(同下)に販売された商品
1983年(写真上)と86年(同下)に販売された商品
2010年まで販売していた透明消しゴムの「LOOK IN」
2010年まで販売していた透明消しゴムの「LOOK IN」

 クリアレーダーの開発で苦労したのは、意外にも消しゴムのケースだそうだ。消しゴムの素材であるプラスチックに含まれる可塑剤は、他のプラスチック製品にくっついてしまう(移行現象)。それが起こらないようにするため、紙ケースに入れて販売するのが一般的だ。しかしそれでは透明なクリアレーダーの魅力は伝わらない。そこで商品の透明度を伝えるため、消しゴムとくっつかない透明なプラスチックのケースに入れることにした。そうした最適なケースを見つける試行錯誤も、ヒットに結び付いた一因と言えるだろう。

 19年9月に発売され、当初の販売見込みから15倍以上もの注文がきているという。そのため売り切れ店舗が続出し、現在も供給が追いつかない状態だ。シードはここ数年業績が良くなかったそうだが、「クリアレーダーのヒットが、社員にとって今後の仕事の原動力につながる」と、同社営業部開発課の堀奈津美氏は言う。

 藤井氏は「メーカーと販売店とユーザーが一体となり、盛況となった」と話す。消しゴムの透明度を生かして写真を撮るといった行為は、開発段階では意図していなかったという。メーカー側が想像もしなかった“価値”を、ユーザーが発掘したことが勝因だ。

「机に置いてさまになる」アイテムが増えている

 文房具屋さん大賞の授賞式で司会を務め、自身も文具好きであるフリーアナウンサーの堤信子氏は、昨今の文具についてこう分析する。

 「机の上に置いてさまになるというのが当たり前になってきている。ただの事務文具だけではないおしゃれさが加わっているものが多い。自分の持っている文具が全部違うメーカーの製品でも、好きなテイストにコーディネートができるぐらい、多くのアイテムが市場に出ている」

 授賞式が行われた「東急ハンズ 文具祭り2020 スペシャルイベント」の監修者で、文具雑貨のメーカーでありノベルティーグッズの企画販売をしているノウト代表取締役所長の高木芳紀氏は、「ペンや消しゴムに注目が集まったが、ノート系のものもいい製品が出てくるのではないか」と20年の新製品への期待を述べた。

20年2月15日に開催された「文房具屋さん大賞2020」の授賞式
20年2月15日に開催された「文房具屋さん大賞2020」の授賞式

(写真/梶塚美帆、写真提供/東急ハンズ)