日本コカ・コーラは、緑茶「綾鷹」の50~60代を狙った新製品を発表した。2020年2月13日の戦略発表会で披露した「綾鷹 濃い緑茶」は従来品より多くの茶葉を使っているのが特徴。若年層に比べ“濃い味”を求める年配層のニーズに応え、売り上げに直結するブランド想起率の底上げを狙う。
若年層とシニア層で味の二極化
綾鷹は2007年の発売以来12年連続でプラス成長を続けている。しかし、緑茶市場でのシェアは数量ベースで2位、金額ベースでは2位と3位を競っている。両分野でトップを狙いたい綾鷹が目指しているのが、ブランドの想起率を示す「マインドシェア(意識に占めるブランドの占有率)」で20%を獲得すること(関連記事:「東京五輪をフル活用 公式緑茶『綾鷹』をマインドシェアNo.1に」)。日本コカ・コーラマーケティング本部ティーカテゴリ緑茶グループグループマネジャーの助川公太氏は、「マインドシェアを上げると、売り上げシェアも上がると捉えている」とマインドシェアの重要性を強調する。
東京オリンピック・パラリンピック(東京2020)の公式緑茶である綾鷹は、19年から東京2020を活用したマインドシェア拡大に向けた施策を打ってきた。その結果、ブランド名を一切告げずに「日本の緑茶ブランドとは?」と尋ねた場合に思いつく「非助成認知率」は、17年の11.8%から19年には13.8%に伸びた。東京2020期間まではマーケティングを加速させる計画で、「最大級のマーケティング投資を考えている」と助川氏。
緑茶ブランドとしては後発の綾鷹は、複数ブランドを買い回る層の多いペットボトル入り緑茶市場で想起率を高めることで、強いブランドに育てたいという思いがある。「競合はより長い歴史を持ち、日本のお茶と聞かれれば別のブランドを挙げる人が特にシニア層には多い」と中川氏が話すように、綾鷹のシニア層へのリーチはボリュームゾーンの20~30代に比べて弱い。後発ブランドゆえ製品展開が拡充しきれておらず、幅広いニーズを満たせていないという実情があった。
そこで18年には「綾鷹 茶葉のあまみ」「綾鷹 ほうじ茶」「綾鷹 特選茶(特定保健用食品)」など、ニーズに合わせたラインアップを一気に拡大。さらに年配層と若年層で味の好みが二極化している傾向に目をつけた。それを受けて投入するのが、今回発売する50~60代向けの「綾鷹 濃い緑茶」だ。
「若い人にはさっぱりした味が好まれるが、年齢に伴い味蕾(みらい)が変化し、さっぱりした味だと物足りなくなる。緑茶以外の消費材でもしっかりとした味付けの商品が好評であることから、世の中の濃い味トレンドに合わせて発売することで、より多くの人に手に取ってもらえる」(助川氏)
和柄、デジタル、聖火リレーでマーケティング加速
他にも東京2020に向けたマーケティング施策として上記主要ブランドの全ペットボトルデザインを和柄にし、日本らしさの再認識や訪日観光客へのアピールにつなげる。さらにクーポンなどのサービスを提供するスマホアプリ「コークオン」を利用したデジタル広告や、屋外広告、東京2020バージョンのCMを2本製作するなど積極的に展開する。
とりわけ茶産地を茶農家が走る聖火リレーには、お茶の文化やお茶ビジネスを広く再認識してもらいたいという思いを込めた。一般応募の16人の茶農家が愛知、三重、鹿児島、熊本、福岡、京都、静岡、埼玉の8つの茶産地を4~7月に走る。京都府宇治市の茶農家の細井堅太さんは、「現状はペットボトルでお茶を飲む人のほうが多く、リーフ茶の消費が減っている。しかし若い人はペットボトルからリーフ茶に興味を持つ人も多く、畑に来る人もいる。ペットボトルは茶農家にとって脅威といわれていたが、そこからお茶に入って来てくれるきっかけとして歓迎している。綾鷹は急須で入れたお茶をアピールしてくれているのもうれしい」と話す。
1980年以降、緑茶の消費量は2004年をピークに下がり続けている(全国茶生産団体連合会・全国茶主産府県農協連連絡協議会調べ)。中川氏は「20年は日本の良さを改めて認識する機運が高まり、緑茶の消費も伸びていくだろう。業界全体で盛り上げていきたい」と意気込む。
(写真/北川聖恵)