「第2次キャンピングカーブーム」といわれる昨今、その人気を支えているものは何なのか。その真相を探るべく、2020年1月31日から2月2日までの3日間にわたって千葉・幕張メッセで開催された「ジャパンキャンピングカーショー2020」を取材した。
過去最大、ショーには3日間で6万6000人以上が来場
都会の騒々しさから離れて自然の中でゆったりと過ごす。1990年代の前半から半ばにかけ、バブルの終焉(しゅうえん)と前後して起こったとされる第1次キャンピングカーブームはそんな「脱都会」が1つのキーワードだった。そして2019年頃から本格化したといわれる第2次キャンプブームに伴い、現在「第2次キャンピングカーブーム」を迎えているそうだ。
キャンプ用品の進化も手伝い、より手軽さ、快適さが増していることに加え、日本各地に新たなキャンプ場が次々と作られ、ラグジュアリーな施設でアウトドアを楽しむ「グランピング」という新潮流も誕生している(関連記事「スノーピークがグランピングの最高峰ブランド 第1弾は八方尾根」)。19年4月にはスポーツ用品大手のアルペンが千葉県柏市に世界最大級のアウトドアショップ「Alpen Outdoors Flagship Store 柏店」をオープン(関連記事「デカトロンにも冷静 世界最大級の店舗で見せたアルペンの覚悟」 )。アウトドアでの遊びを題材にしたマンガやアニメ、YouTubeチャンネルも人気だ。SNSや動画メディアを通じてスタイルやノウハウを啓蒙するインフルエンサーたちの存在によって、より手を出しやすいものになっていることも特徴といえるだろう(関連記事「キャンプ動画が大当たり 貫き続けるヒロシに『ジャワティ』共鳴」)。第2次キャンピングカーブームはこのような多様化したアウトドアブームの一端と見ることができる。
そうした追い風を受けたこともあってか、ジャパンキャンピングカーショー2020は3日間の来場者数が6万6000人を超える過去最大規模を記録した。
キャンピングカー・ビルダーやディーラーが加盟する日本RV協会が19年7月に公開した調査結果によると、キャンピングカーの国内総保有台数は11万2500台を突破した。05年の時点では約5万台。そこから年間5000台前後のペースで増加を続けた結果なのだという。19年の数字は集計中とのことだが、18年よりも増加ペースはさらに上がっているのは確実とのこと。そもそもクルマを持つ人が減っている現状にあって、日常での実用性よりも趣味性に大幅に寄ったキャンピングカーの登録台数がより伸びているのが興味深い。「第2次キャンピングカーブーム」の訪れは数字として確実に表れているのだ。
キャンピングカーブームを支えている層を世代別に見ると、50歳代が30.2%、60歳代が40.8%とシニア世代が大半を占めている(出所「キャンピングカー白書2018」)。子育てが一段落し、時間的、経済的な余裕が出てきた世代、退職後の余暇を過ごす楽しみを求めている人たちがブームを支える中心ということになる。「ペットを連れてどこにでも行ける」という点も、この世代の支持を得ている理由の1つだという。
宿などの予約や宿泊費を必要とせず、また交通機関が整備されているかどうかにも左右されない自由度の高いプランが立てられ、ペットと一緒に旅ができる。釣りやマリンスポーツなど、趣味の拡大にも柔軟に対応できるのがキャンピングカーのメリット。アウトドアでの遊びや旅行の楽しさを知る者にとって、プライベートな空間をそのまま旅先へと持ち込めるキャンピングカーは魅力が詰まっているのだ。
ブームのけん引役は「軽キャンパー」
キャンピングカーと一口に言ってもその内実はさまざまだ。トレーラー形式のようにクルマでけん引するものもあれば、クルマ自体を改造し、宿泊に必要な装備を追加したタイプもある。ワゴンやバンをベースにしたタイプには、外から一見した限りではキャンピングカーに見えないものも多い。普段使いにも利用できるとあって、人気が高く、キャンピングカーショーでも数多く出展されていた。
中でもブームのけん引役を担う存在となっているのが、軽自動車をベースにした「軽キャンパー」だ。
近年の軽自動車は「軽ハイトワゴン」と呼ばれるタイプの人気が高い。軽自動車規格の車体サイズを最大限に生かし、広い室内空間を誇るこのタイプなら、シートアレンジによって大人が体を伸ばして寝られるスペースを確保できる。天井が上に向かって開く「ポップアップルーフ」と呼ばれる装備を加えれば、就寝可能な人数を増やすことも可能だ。
キャンピングカーの値段は上下の幅が広く、キャンピングカーショーに出展されたクルマの中には、税別(以下同)で2000万円を超える高級タイプもあった。「キャンピングカー白書2018」によれば、300万~500万円台が44.7%を占めているというが、ベースとなる車体価格が安価な軽キャンパーなら300万円以下のものが中心となる。さらに維持費が安く抑えられるメリットもユーザーから評価されている一因だ。
キャンピングカーというと、室内空間の拡大を考えるあまり取り回しの悪い大型な車体、というイメージを抱いている人もいるかもしれない。しかし軽キャンパーにそんな鈍重さはない。会場に出展されていた各社自慢の軽キャンパーをいくつも見て回ると、その人気の高さに納得がいった。
だが、出展されているクルマのセールスポイントの文言に「納期」が混じっていることが途中から気になり始めた。RV協会のブースで質問したところ、「軽キャンパーはボディーの加工が必要なタイプが多く、内装品の取り付けも手間がかかり、もともと納期は長め。さらに現在は軽キャンパー需要に供給が追いつかず、半年から長いものでは2年という納期を掲げているところもある」とのこと。軽キャンパーの人気の高さがうかがえるエピソードだ。
協会が整備する「RVパーク」とは?
「キャンピングカーがあればどこでも泊まれる」と思いがちだが、これはある意味では正しくない思い込みだ。例えば国交省が整備する「道の駅」は、安全かつ快適に道路を利用するための施設であり、休憩はOKでも基本的に車中泊は認めていない。高速道路のサービスエリア(SA)やパーキングエリア(PA)も同様だ。車中泊しようと選んだ土地が、私有地かどうかを見極めるのが困難な場合も多い。
そこで日本RV協会ではキャンピングカー利用時のトラブルを防ぐため、マナーを啓蒙するリーフフレットを配布している。さらに「安心」「安全」「快適」にキャンピングカーを利用するための宿泊インフラとして、有料駐車スペース「RVパーク」の整備を進めている。RVパークとして認定されるには、以下の条件を満たす必要がある。
(2) 24時間利用が可能なトイレ
(3) 100V電源が使用可能
(4) 入浴施設が近隣にあることが望ましい
(5) ゴミ処理が可能
(6) 入退場制限が緩やかで予約が必須ではないこと
つまり、RVパークなら有料ではあるが快適な車中泊が約束されているというわけだ。キャンピングカーでなくても利用できるのもRVパークの特徴の1つ。クルマで旅行する際は覚えておくといいだろう。
(写真/稲垣 宗彦)