米フェイスブック日本法人の前代表、長谷川晋氏が新たにスタートアップ「MOON-X」(東京・世田谷)を立ち上げ、その第1弾としてクラフトビールのブランド「CRAFT X」と第1弾商品「クリスタルIPA」を発表した。定額制で提供し、ユーザーからの評価を集めて味の改良や新商品開発に役立てていくことが特徴だ。

クラフトビールブランド「CRAFT X」の第1弾商品「クリスタルIPA」
クラフトビールブランド「CRAFT X」の第1弾商品「クリスタルIPA」

 2020年1月24日に発表された「クリスタルIPA」は、IPA(インディア・ペール・エール)らしいホップの香りを強調しつつ、飲んでみると苦みは少なく甘みが感じられ、とても飲みやすい。クラフトビールブランド「常陸野ネストビール」を製造・販売している木内酒造(茨城県那珂市)と共同開発したものだ。

 販売は定額制で、月額6960円(税込み)で350ミリリットル缶12本が毎月届く。ユーザーにはそのほか季節限定ビールの先行案内やオリジナルグッズのプレゼント、試飲会への参加といった特典を用意する。

 特徴は、ユーザーからの評価を直接吸い上げて素早く製品開発に生かしていくことだ。アンケートに回答することが面倒にならないように、スマホで簡単に回答できる仕組みを用意し、その評価を基に製品を改良していく。19年11月と12月にテスト販売を行ったが、2月からはその時に寄せられた評価を反映したバージョンを販売する。飲んだ直後のリアルタイムでの感想を重視して、将来はユーザーとチャットのグループを作って飲みながら話し合うような形も考えているという。

「クリスタルIPA」の缶にはインスタグラムのアカウントにアクセスできるQRコードやハッシュタグ、製品のバージョンが分かるロット番号がついている
「クリスタルIPA」の缶にはインスタグラムのアカウントにアクセスできるQRコードやハッシュタグ、製品のバージョンが分かるロット番号がついている

 MOON-Xの長谷川晋代表は「購入してファンになってくれたユーザーと継続的に対話し、一緒にブランドやビジネスを作っていく。ユーザーからのフィードバックを製品に素早く反映して、スピード感のあるモノづくりに取り組んでいく」と意気込みを語る。

 販売実績のないクラフトビールをD2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)で販売する形になる。成功するためにはストーリーが大切だと考えている。

 「ユーザーは製品を買うだけでなく、ブランドやモノづくりのストーリーを求めている。いかにストーリーを作り込んで、ネットやITを活用して語り切れるかが大事だ。我々はこの部分に強みがあり、勝負できると考えている」(長谷川氏)

MOON-Xの長谷川晋代表
MOON-Xの長谷川晋代表

 木内酒造の木内洋一代表取締役は「これまではビアパブや百貨店、ブルワリーなどから聞いた意見を製品開発に生かす程度だった。しかしMOON-Xはユーザーからの意見をデータの形で持っている。こうしたデータを見られるのは新鮮で面白い」と、共同開発のメリットを語った。

木内酒造の木内洋一代表取締役
木内酒造の木内洋一代表取締役

 長谷川氏は、P&G(プロクター・アンド・ギャンブル)で紙オムツ「パンパース」のブランドマネジャーなどを務め、楽天ではグローバルマーケティングの責任者を務めた経験を持つ。MOON-Xではテクノロジーを活用して日本のモノづくりを世界に広めていきたいという。重視しているのは、ブランドと発信力だ。

 「P&Gで、いいブランドといい製品には生活を豊かにする力があると実感した。そして楽天やフェイスブックではインターネットを使った世界への発信力を目の当たりにした。日本にはいいモノを作っている会社がたくさんあるが、そうした会社に限ってITやネットを使って発信することは不得手なことが多い。そうした会社とコラボレーションし、我々が発信を手伝うことで、日本発のいいブランド、いい製品を世界中に広げていきたい」と、長谷川氏は創業の目的を語る。

 日本のモノづくりを体現するブランドの第1弾をクラフトビールにしたのは、長谷川氏が米国でクラフトビールのおいしさを体験したことや木内酒造との出合いのほかに、ビジネス面でもクラフトビール市場には大きな伸びしろがあると見ているからだ。

 「米国では出荷量ベースで市場の13%がクラフトビールになっているが、日本は1%弱しかなく、伸びしろしかない。米国以外でもクラフトビールはまだ浸透しておらず、同様の状況で大きな伸びしろがある。課題は、世界にどう発見してもらうかだ」(長谷川氏)

 今後はビールに限らず日本のモノづくりを体現するブランド群を作り、インスタグラムなどテクノロジーを活用して世界中に発信していく。すでに次のブランドの構想が動き始めているという。ユーザーの意見を吸い上げ、スピード感を持って製品開発に反映し、SNSなどで世界に発信する、世界に通用するためにはこの3つが大事と言えそうだ。

(写真/湯浅英夫)


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