2020年春にサービスの開始が予定されている次世代通信規格5G。その5Gを使ったエンターテイメントプログラムで渋谷エリアを盛り上げようというプロジェクトが、20年1月24日に始動した。
KDDIや観光協会の呼びかけに32企業が賛同
「渋谷5Gエンターテインメントプロジェクト」は5Gを使って渋谷を訪れた人々にライブ配信やAR(拡張現実)を使ったコンテンツを提供するというもの。KDDIと渋谷区観光協会(東京・渋谷)、渋谷未来デザイン(同)が19年9月立ち上げたプロジェクトに東急やパルコ、動画配信サイト大手のNetflixやアパレル大手のベイクルーズなど32社の多種多様な企業が参画して本格始動する。
プロジェクト立ち上げの経緯について「流行感度が高い渋谷でさまざまな挑戦をしてみたいと思った」とKDDIビジネスアグリゲーション本部アグリゲーション推進部の繁田光平部長は話す。
前身となったプロジェクトでは、これまでにARを使ってスマホ上に渋谷の飲食店情報や交通案内を表示する実験や、AIが位置情報や天気を解析して音楽を自動選曲するサービスなどに取り組んできた。今回参画企業が増えたことで、各社の技術や施設を使ってより大きな試みができる。
100年に一度の再開発で話題を呼んでいる渋谷。スクランブル交差点目当てに国内外から多くの観光客が訪れるが、「実は大きな観光資源がない」と渋谷区観光協会の金山淳吾代表理事は話す。「ハチ公、明治神宮、代々木公園など名の通ったスポットにテクノロジーをかけ合わせることで、新たな観光資源が生まれる。今後は渋谷区全域を対象にしていきたい」(金山代表理事)。渋谷区の長谷部健区長も「各企業の協力を得ながら、アートや音楽など渋谷区らしい文化を世界に発信したい」と抱負を述べた。
KDDIの実証実験の場としても活用
第1弾として、1月24、25日の2日間にわたって渋谷駅前のハチ公広場に5Gの移動式基地局を設置。専用端末を通して1964年の渋谷駅前を再現した映像を体験できるという試みを実施した。また、25日には渋谷区内のライブ会場「LINE CUBE SHIBUYA」と渋谷のKDDI直営ショップ「au SHIBUYA MODI」を5Gで接続。ショップ内に集まったファンがライブの映像演出に参加した。
しかし、5G専用端末を使わないとコンテンツを楽しめないということであれば、利用者は限定されてしまう。その点について「ライブ会場で観客の笑顔を検知してライブの演出に使ったり、スポーツ観戦中に応援パフォーマンスが目立つ観客を大型ビジョンに映してAR上で景品をあげたりなど、スマホを使わずに楽しんでもらえるコンテンツも検討している」(繁田部長)。
プロジェクトの具体的な内容や終了日は未定。だが、「このプロジェクトで手応えを感じたものはKDDIがプラットフォーム化していく。渋谷区以外の地域やKDDIが協賛するスポーツチームにも応用したい」と繁田部長。行政や他企業の協力を得て、渋谷という街を実証実験の場所として活用する狙いもあるのだ。