ネット上でいかにブランド認知を高めるかは、店舗などを運営する事業者にとって大きな課題の1つ。検索サービスやSNS上で正確な情報を提示するための支援サービスを提供する米Yext(イエクスト)のハワード・ラーマン最高経営責任者(CEO)に、ネット上で起きている変化について聞いた。

ハワード・ラーマン氏
米イエクストのハワード・ラーマンCEO。今回の来日では福島の訪問が重要な目的の1つだったという
ハワード・ラーマン氏
米イエクストCEO
2006年にイエクストを創業。「企業の最終的な権限はその企業自体が掌握するべき」という理念に基づき、企業が自社の公開情報や事実を検索サービス上でコントロールするサービスを開発した。匿名メッセージングサービスの米Confideの共同創業者兼会長も務める。米デューク大学を卒業。

 「銀座 ランチ」などとスマホで検索すると、住所、電話番号、営業時間、口コミといった店舗の情報が瞬時に出てくる。店舗の事業者から見れば、それら情報に誤りがあれば、ネットからの集客力は低下する。イエクストは、店舗や各社のサービスに関する情報をデータベース上に集約し、米グーグルなどが展開する検索エンジンにデータを一括配信するサービスを提供している。地図サービス、音声検索、旅行案内サービスなどを含め世界150のサービスに対応する。

 世界で1700以上の企業が利用し、同社データベース内の情報は、前年同期比で50%増のペースで成長しているという。日本でもヤマト運輸やJTBなどの企業が導入している。なぜ今そうしたサービスが求められているのか。SEOとは何が違うのか。イエクスト創業者のハワードCEOの話を聞いた。

検索体験の向上を目指すという事業を立ち上げた経緯と狙いは。

その前に今回の来日について話をさせてほしい。重要な目的の1つは、福島の訪問だった。かつてニューヨークの日本食レストランで、ある有名ジャーナリストと会食した。そこで福島の日本酒を飲もうとすると、そのジャーナリストは「オーダーするな、汚染されている」と、スマホで「Fukushima」と検索した。画面には放射能の汚染についての記事や原発の写真ばかりが並んでいた。

 これだけの悪いレピュテーション(認知)は、実態とは異なるのではないか。その場で福島に行こうと決心した。現地で採れた作物を食べ、お酒も飲む。その動画を撮り、欧米人に安全であることを見せたいと考えた。今回はそれを実行した。酒蔵の人々や観光業界の方にも会い、どのように米を調達し、作物を収穫しているかを聞いた。

 私がこの会社を始めた理由は、オンライン上に真実を載せるためだ。福島の例で分かるように、時としてオンライン上の情報は真実とのギャップが生じる。

 約20年前を振りかえると、グーグルが登場し、キーワードを入力するとリンクの一覧が出てくるドキュメント検索が一般的になった。マクドナルドと入力すると、公式サイトなどへのリンクが出てきた。その状況が、10年ほど前から少し変わってきた。検索結果の中で、まず地図が現れ、周辺店舗の住所、営業時間、電話番号を表示するようになった。我々は、それらの情報を正しく表示するためのサービスを提供している。

「意図した瞬間」が重要

サービスにはどんな特徴があるのでしょうか。

イエクストは、SaaS型のサービスであり、ユーザー企業が管理画面上で正確な情報を入力する。我々のデータベースにある正確なデータを、グーグルだけでなく、米アマゾンの音声を使った人工知能(AI)「アレクサ」、米アップルの地図サービスや音声アシスタント「Siri(シリ)」、米マイクロソフトの検索サービス「Bing(ビング)」、中国の検索サービス「バイドゥ」にも、一挙に送り届ける。検索サービスのユーザーが何かを調べたとき、正しい情報を得られるようにする。

 ユーザーが何かの意図をした瞬間に、正確な情報を提供できることが、ブランド認知にとって最も大切なのだ。例えば道路を走っていたときにタイヤがパンクしたとする。そのドライバーがタイヤ交換できる場所を検索したときに、整備サービスの店舗情報が正確でなければ、競合店に顧客を奪われてしまう。

 検索サービスが世の中のインターネットをクロールして集めている情報は、必ずしも正しいとは限らない。勘違いをしている人、あるいは悪意を持った人が書き込んだ情報によって、検索結果がゆがめられているかもしれない。それが福島の検索結果でも起こったことだ。

どのように数多くの検索サービスに対応させているのでしょうか。

グーグルやアマゾンのアレクサ、バイドゥなど検索エンジンを運営する企業もまた、正確な情報を求めている。我々のデータベースには、顧客に認証された店舗やサービスの正確な情報が2億5000万件あり、前年同期比で50%のペースで成長している。だからこそ、グーグルなどの検索エンジンの事業者は、我々が情報を更新できるようにするオープンなAPIを用意してくれている。

SEO(Web最適化)とは何が違うのでしょうか。

SEOは技術を指す言葉にすぎない。SEOを実行するには、コンテンツマネジメントシステムの他、Webサイトを運用するホスティングプロバイダーを用意し、グーグルなどさまざまな検索サービスのリスティング状態の管理者も必要だ。我々のサービスはSaaS型でそれら機能を一気通貫で用意する。従来のSEO対策が「馬」だとしたら、我々のサービスはより進化した「自動車」ということだ。

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