アサヒビールは2020年1月23日のRTD事業方針説明会で、20年は蓋を開けてすぐ飲めるRTDカテゴリーで、独自価値を打ち出す1ブランドにマーケティング資源を集中投資することを明らかにした。複数ブランドに分散して市場平均を下回った19年の失敗を踏まえ、新戦略で挑む。

アサヒビールが2020年のRTD戦略でマーケを集中させる「贅沢搾り」
アサヒビールが2020年のRTD戦略でマーケを集中させる「贅沢搾り」

伸び続けるRTD市場で平均下回る前年比

 アサヒビールの19年のRTD売上高は6年連続で増収ながら、前年比は102%で市場平均の112%を下回る結果となった。RTD市場は低価格や高アルコールで他の酒類ジャンルからの流入が多く、12年連続伸長している。ビール系飲料は酒税改正で20年10月から段階的にビールの税率が下がるが新ジャンルの税率は上昇し、26年には税率が同じとなるため価格面での魅力が薄れてしまう。そのため低価格帯のアルコール飲料を求めるユーザーがますますRTD市場へ流入し、酒類の主戦場となることが予想されている。

 各社がアルコール度数の高いストロング系チューハイなどでしのぎを削る中、RTDでは後発のアサヒビールは後れを取り戻すため、19年は高アルコール帯ブランドの「もぎたて」「ウィルキンソン・ハードナイン」(それぞれアルコール度数9%)、低アルコール帯の「贅沢(ぜいたく)搾り」(4%)の3ブランドに重点を置いてマーケティング展開をしてきた。しかしアサヒビールの松山一雄専務によると、「アルコール度数に応じてセグメンテーションをしたが、マーケティング投資が分散し、各ブランドの認知やトライアルを十分に喚起できなかった」と反省する。

 そこで20年は競合に対してアサヒビールの優位性を築くため、人工甘味料を使わず果汁のみを使った贅沢搾り1本に絞って攻める方針を決めた。「レッドオーシャンのRTDで複数のブランドで戦っても消耗戦になる。消費者が未充足のニーズにアサヒビールならではの独自価値を提供して差別化を図る」(松山専務)

 贅沢搾りを選んだ背景には同社がユーザー2000人に実施した調査がある。これによるとRTDユーザーが求める価値は、気分や飲用シーンによって味やフレーバー、ブランドを選べる「バリエーション」が1位だったという。さらに果汁感を求める声がアルコール度数の高さよりも多く、アルコール飲用者の約8割が「果物好き」という結果も出た。

RTDニーズの1位は、気分や飲用シーンによって味やフレーバー、ブランドを選べるバリエーションだった
RTDニーズの1位は、気分や飲用シーンによって味やフレーバー、ブランドを選べるバリエーションだった

20年はブランド認知を徹底 結果は21年以降に

 贅沢搾り自体の認知率は50%と決して高くはないが、飲用後の満足度は高く、購入意向率や購入者当たりの購入容量が伸長しているという。松山専務は「リピートにつながるコンバージョンレート(成約率)が、他のブランドと比べてもずば抜けて高い」と今後の成長に自信を見せる。20年はボリュームに主眼を置くのではなく、あくまでブランド価値を高めるために資源を投入して認知徹底を目指す。その結果が出るのは「21年以降」(松山専務)と、先を見据えた戦略であることを強調する。ターゲットは「果実好き」で、性別や年齢によるセグメント分けは行わない方針だ。

 ビール系飲料ではモノ訴求からコト訴求に舵(かじ)を切り、「スーパードライ」で情緒訴求に転向したアサヒビールは、RTDでもそのマーケ戦略を踏襲する(関連記事「アサヒビール、情緒訴求と若年層開拓でマーケ戦略を大改革」)。20年中には家飲みシーンに特化した新たな商品を提供する予定で、「目からうろこを感じてもらえる」と松山専務。

 高アルコールブランドについては継続的に満足度を向上させるというが、昨今指摘されている高アルコール飲料の健康への悪影響については社内でコミュニケーションの方法を検討中だという。「消費者ニーズには応えたいが、総合酒類メーカーとしての責任ももちろんある。持続可能なお酒文化を目指して、三方よしといえる施策を今後地道に探っていく」(松山専務)

アサヒビール専務取締役・松山一雄マーケティング本部長
アサヒビール専務取締役・松山一雄マーケティング本部長

(写真/北川聖恵、写真・資料提供/アサヒビール)