あのときの“大興奮”が原体験

 「eスポーツは歴史がないからこそストーリーやドラマ性が重要」と西谷氏は語るが、実際、Rush Gamingのその後の道のりはドラマに満ちたものだ。

 リーグ戦形式で行われた2018年の「コール オブ デューティ ワールドウォーIIプロ対抗戦」。“王者”という立場で臨んだRush Gamingは、勝ち点で2位のLibalent Vertexと並んだが、直接対決成績で破れ、東京ゲームショウ2018で開催されたグランドファイナルへの出場権を逃した。ただし、1位になったDetonatioN Gamingとの直接対決は2戦2勝。DetonatioN Gamingが落としたのはRush Gaming相手の2試合だけと、王者としての意地をファンにしっかりと見せた。

 また、18年7月と8月にはプロ対抗戦の期間中にもかかわらず、主力選手2人が相次いで脱退。現在は戦線に復帰してはいるものの、19年1月にはリーダーであるGreedZz選手が目の故障により無期限の休養を発表した。さらに同年12月の日本代表決定戦での大敗。西谷氏をはじめとするチームスタッフは、一部選手に見られる胆力の弱さが敗因の1つとみて、レギュラーメンバーの入れ替えと立て直しを図っている。

 「プロチームである以上、強いだけじゃだめ」。西谷氏はプロとして活動する選手に対して時に厳しい姿勢を取る。関連記事「ラフォーレで1週間に150万円売る eスポーツチーム・Rushの集客力」で紹介したように、YouTubeの再生回数やTwitterのインプレッション、ECの売り上げなど、選手の人気を計る“数字”のチェックも怠らない。だが、その運営方針は決してドライなものではない。先のプロ対抗戦の際、脱退が決まって涙を流す選手に寄り添う西谷氏の姿を筆者は会場で見ている。「ドライどころかうちはウエット中のウエットです」と西谷氏は笑った。

 「GreedZz選手をeスポーツ界の錦織圭選手にしたい」。それが西谷氏の目標だ。テニスにおける錦織選手のように、絶対的なスターが1人でもいれば、その競技人口は爆発的に増える。「CoD」の、さらにはeスポーツの人気を日本で定着させる起爆剤になってほしいという思いがある。

 「GreedZzと出会って初めてCoDの試合を見たときの大興奮。それが(eスポーツに情熱をささげる)原体験なんですよ」(西谷氏)。

(写真/志田彩香、写真提供/Rush Gaming)


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