ショー要素のあるビジネスは観客の感動が価値

 プロプレーヤーになる意思はまだないGreedZz選手と、日本のeスポーツは時期尚早と判断していた西谷氏。2人の考えが変化する契機は3つある。

 1つは、GreedZz選手の熱意だ。西谷氏はアルバイトとして雇ったGreedZz選手に「CoD」の魅力や同作のeスポーツシーンの国内外の市場規模などをプレゼンさせた。「本人にも自分たちが夢中になっているものを理解してほしいという思いがあったんでしょうね。きちんとリサーチされたいいプレゼンだったんです」(西谷氏)。西谷氏はその熱意に感じ入ったとのこと。

 2つ目は、西谷氏自身が初めてCoDの試合を観戦したときのこと。前述のプレゼンの数日後は折しも『CoD Black Ops3』アジア大会の開催日。「チームで出場するので応援してください」というGreedZz選手の言葉を受けて、Wekidsのメンバーとともに試合のライブ配信を観戦した。「そうしたらめちゃくちゃ面白くて。なんだこれ!?と思いました。ろくに知らないゲームだったのに大興奮ですよ!」(西谷氏)。

 そこにはGreedZz選手の準備もある。初見の西谷氏らでも大会の複雑なルールが分かりやすいように、事前に観戦ガイドを作成していた。また、西谷氏にとって「知っている人が出場するeスポーツの試合」の興奮度は桁違いだったということもあるだろう。しかも、Rush CLANはこのアジア大会で見事優勝。さらに破竹の勢いで戦績を上げ、17年9月の東京ゲームショウ2017で開催されたエキシビションマッチでは当時の“絶対王者”SCARZを倒して優勝した。

2017年9月の東京ゲームショウ2017で開催されたエキシビションマッチ「『コール オブ デューティ インフィニット・ウォーフェア』SCARZ vs Rush CLAN TGS2017頂上決戦」(写真/加藤 康)
2017年9月の東京ゲームショウ2017で開催されたエキシビションマッチ「『コール オブ デューティ インフィニット・ウォーフェア』SCARZ vs Rush CLAN TGS2017頂上決戦」(写真/加藤 康)

 3つ目が、その東京ゲームショウ2017の試合でのファンの反応だ。このときは、会場内に入りきらないほどの観客が集結。試合が終わった後も約100人もの観客が選手たちのサインを求めて長蛇の列をなしたのだ。

 これが決定打になり、西谷氏のWekidsは17年11月にRush CLAN esports部門とスポンサー契約を締結。Rush Gamingと名を変えて新たにスタートさせた。

 西谷氏は判断の根拠をこう説明する。「スポーツに限らず、ショー的要素のあるビジネスでは観客が感動することが価値。選手の活躍する姿を見てそうした思いを抱く人がこれだけたくさんいるなら、必ず大きく育て上げられると思った。何より“Rush”というブランドがファンの中に確立していることが大きかった」(西谷氏)。

「CoD」で戦うプロeスポーツチームの中でもRush Gamingのファンの多さと熱さは抜きんでている。これまでの実績や強さはもちろん、ファンとのコミュニケーションを重視する西谷氏のチーム運営方針がファンを引きつけている
「CoD」で戦うプロeスポーツチームの中でもRush Gamingのファンの多さと熱さは抜きんでている。これまでの実績や強さはもちろん、ファンとのコミュニケーションを重視する西谷氏のチーム運営方針がファンを引きつけている