ファンを引きつけるのはストーリー

 ラフォーレ原宿のポップアップショップの成功やアパレルを中心とした物販の好調は、Rush Gamingのファンマーケティングの成果と、それによって構築されたブランド力の高さの証左でもある。

 こうしたファンマーケティングの核になっているのが積極的な情報発信だ。Rush Gamingでは、ブログやTwitterなどのSNS、YouTubeを使った動画で、選手やコーチ陣の日常の姿、その思いをリアルに伝えている。「重視しているのはストーリーやドラマ性。『テラスハウス』などのリアリティーショーをイメージしてもらえばいい」(西谷氏)。

Rush Gamingの試合の様子
Rush Gamingの試合の様子
見せるのは試合中だけではない。選手たちが共同生活を送る「Rush BASE」の様子もSNSなどを通じて随時、公開している
見せるのは試合中だけではない。選手たちが共同生活を送る「Rush BASE」の様子もSNSなどを通じて随時、公開している

 例えば、18年にリーグ戦形式で行われた大会「コール オブ デューティ ワールドウォーIIプロ対抗戦」だ。“王者”として臨んだはずのそのシーズン、Rush Gamingの勝ち点は2位のLibalent Vertexと同じだったものの、直接対決成績で3位が確定。同年9月に東京ゲームショウ2018で開催されたグランドファイナルへの出場権を逃してしまった。

 しかも大会期間中に2人の選手が相次いで脱退。19年1月には中心的選手でリーダーでもあるGreedZz選手が目の故障により無期限の休養を発表した。そんな波乱の出来事もファンに向けてありのままに発信している。

 こうした姿勢を取る理由を、西谷氏は「eスポーツには“歴史”がないから」と語る。「歴史がない分、ストーリーを語って生き様を見せないと、『ただゲームで遊んでるだけでしょ?』と見られかねない。正直、そう見る人がいるのも分かるんですよ」(西谷氏)。

 現状、一部のゲームタイトルを除き、日本のeスポーツの技術レベルは世界に及ばない。日本よりも平均年収が低い国で、eスポーツに人生を懸けている選手と比べると覚悟が違う。その結果がレベルの違いに結びついている面があると西谷氏は言うのだ。

 「プレーを見て『明日頑張ろう』って思ってくれる人がたくさんいるなら、プロ選手としての価値はある。でも、ゲームがただうまいだけなら、“趣味”でいいんじゃないかと思う」(西谷氏)。

 黎明(れいめい)期である日本のeスポーツシーンにおいて、プロeスポーツ選手として道を開拓せんとする姿を、ゲームプレーはもちろん私生活でも見せて、想いを語る。ファンに感じ入ってもらえる何かが作り出せれば、YouTubeの再生数やSNSのフォロワー数、オリジナルグッズの売り上げといった“数字”に反映されていくと考えている。