※「日経エンタテインメント!」2020年1月号の記事を加筆、再構成
2019年のテレビCMのヒット作、人気タレント、勢いのあるクリエイターは? サントリー「ストロングゼロ」「金麦<ゴールド・ラガー>」、ファミリーマート、earth music&ecologyなどのCMやBiSH擁するWACKのブランディングなどを手掛ける「ゴンパ」のクリエイティブディレクター・権八成裕氏が前編に続いて語る。
10秒ウェブCMに業界騒然
2019年、権八さんの一番の収穫は?
権八成裕氏(以下、権八氏) カー用品店「ジェームス」の連続ドラマCM「愛の停止線」。ウェブCMは数分ある長いものが多いんですが、これは1本10秒。15秒でも面白くするのは難しいのに、10秒で起承転結を付けて、商品にちゃんと落としている。しかもそれで現在28話まで続いています(19年1月21日時点)。ACC賞のオンライン部門グランプリに選ばれたんですけど、審査員も皆大絶賛で、僕は発明だと思った。
ウェブでは6秒CMが増えていますが、ジェームスは10秒なんですね。
権八氏 YouTubeの「バンパー広告」が最大6秒。それは、生理的に6秒が境目だかららしいんですよ。6秒以内に興味が湧けばそのまま見る、湧かなければスキップして見ないと。でもジェームスは6秒どころか、10秒全部見たい。10秒でちゃんとカタルシスもあるから、クセになって次の話も見たくなる。
「愛の停止線」のプランナーは?
権八氏 博報堂の神田祐介くん。浅野忠信さんのマンダム「ルシード」や、石田ゆり子さんが店員を演じた「スポーツくじBIG」、テレビ東京のドラマ『きのう何食べた?』の企画監修などもしています。
40歳なのでまあまあの年齢なんですけど、才能ある若いプランナーに与える「小田桐昭賞」も受賞しました。ちなみにその審査会で僕は激推ししたんですが、「はい」と手を上げて、「その人、何歳ですか?」と言ったのが佐藤渉くんでした。年齢を知ってるのに、あえて意地悪なことを言う(笑)。
神田さんとは面識が?
権八氏 僕が初めて会った時は、博報堂の井村光明さんの下に付いていましたね。井村さんは2000年代に「ファンタ先生」でヒットを飛ばし、佐藤渉くんと組んだUHA味覚糖「さけるグミ VS なが~いさけるグミ」のCMで18年のACCグランプリに輝いたプランナー。
今年は電通で篠原誠さんの下にいた鈴木晋太郎くんが「アタックZERO」や「Spotify」(#音楽さえあればいい「飛行機篇」)、前編でも話題に上がった「SOYJOY」のCMでヒットを飛ばして、電通の篠原組、博報堂の井村組が花開いた印象でした。
「愛の停止線」のディレクターは?
権八氏 東北新社OND°の平田大輔くん。平田くんは若くて、まだ30歳くらいだと聞いてます。もともとスプーンという会社で制作の仕事をしていて、どうしても演出をやりたいと東北新社に移り、見事に花開いた。ダンディ坂野やスギちゃんら一発屋芸人がずらり出てきてTM NETWORKのパロディーをやったモンスターストライクと『シティーハンター』のコラボCMや、石野卓球さんが関西電気保安協会のサウンドロゴをアレンジした「関西電気保安グルーヴ」などのウェブ動画を作ったりしていました。
「愛の停止線」のYouTube再生回数は累計1000万回超え。拡散を狙うなら、長尺のウェブCMより、短尺の方が良さそうです。
権八氏 今ってみんな脳がタイムライン(TL)化してますよね。SNSのTLで情報を縦に流し見する時代。相当面白そうじゃないとタップしないし、少し見てつまらないとすぐ次へ。そういう意味では、テレビのザッピング文化で勝負してきたCM感覚に近づいてるのかもですね。しかも15秒を通り越して、10秒でこれだけ面白いものを作られちゃった日にはもう、びっくりです。ACCだけでなくTCC賞(※)、海外のSpikes AsiaやADFESTなどの広告賞をとりまくってます。
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