※「日経エンタテインメント!」2020年1月号の記事を加筆、再構成
2019年のテレビCMのヒット作、人気タレント、勢いのあるクリエイターは? サントリー「ストロングゼロ」「金麦<ゴールド・ラガー>」、ファミリーマート、earth music & ecologyなどのCM、BiSH擁するWACKのブランディングなどを手掛けるゴンパのクリエイティブディレクター・権八成裕氏が“総まくり”する。
王者・auに花王が“アタック”
通信・サービス業類で1位(上表)のauが、全業類を対象とした銘柄別好感度ランキングで5年連続1位になりました。
権八成裕氏(以下、権八氏) 三太郎シリーズが定着してますよね。旬の人をうまく取り込みつつ、細かいネタを仕込んだりして飽きさせない。19年は池田エライザちゃんが「親指姫」として登場して、「実は1年以上前からひっそり出ていて、インスタまで動いていた」と話題になりました。
auは、神木隆之介くんの「意識高すぎ! 高杉くん」シリーズも面白いですよね。垣内美香さんという女性ディレクターの力も大きいと思います。僕は10年前の「いい大人の、モバゲー」や、広瀬すずちゃんに出てもらっているearth music & ecologyの「エシカルアクション」のウェブCMでご一緒しているんですが、非常に勘どころが良くて、女性監督の中ではピカイチ。19年度のACC賞(※)でゴールドを受賞した大塚製薬「SOYJOY」の、岸井ゆきのちゃんがベランダで商品を食べているだけのCMも素晴らしかったです。
そのauに迫ったのが、花王「アタックZERO」でした。松坂桃李、菅田将暉、賀来賢人、間宮祥太朗、杉野遥亮と旬のイケメン5人をそろえた「#洗濯愛してる会」で5月度の銘柄別で1位に。年間の銘柄別でも4位に入りました。
権八氏 三太郎もアタックも、クリエイティブディレクターが篠原誠さん(篠原誠事務所)で、監督は浜崎慎治くん(ワンダークラブ)。このコンビが今めっぽう強い。稼いでますね(笑)。
花王のCMは、以前は保守的な印象で、若いクリエイターからすると、とがったことができるクライアントではなかったんですよ。まあ、当然と言えば当然なんですけどね。商品は日用品がメインで、基本的に主婦の方がターゲットだから。でも「#洗濯愛してる会」は人気者をあれだけ使って、三太郎のようなテンションの芝居というか、セリフ劇で見せている。こりゃ思い切ったなと思いました。
自動車業類で1位のトヨタ「カローラ」も篠原誠さんの仕事。菅田将暉さんと中条あやみさんが、ドライブしながらMONGOL800の『あなたに』を歌うCMが人気でした。
権八氏 あれは爽やかでしたよね。ただ全体で見ると、最近、車のCMは少々元気がないように見えます。ゴーン事件で日産が元気ないのも影響してますかね。めちゃくちゃ面白かった玉山鉄二さんのダイハツ「ウェイク」の“あんちゃん”シリーズも終わっちゃったし。
少し前ですが18年のダイハツ「ミラ トコット」の実写版『ちびまる子ちゃん』も良かったですけどね。あれは吉岡里帆さんがかわいらしくて、車に興味のない人でも楽しく見られた。その前にはトヨタの「TOYOTOWN」「ハリアー」(H.H.篇)のように凄く目立つものがありましたけど、最近はそういうCMがなくなっちゃいましたね。
あ、でも、頑張ってるな~と思うのは、香川照之さんの「トヨタイムズ」のシリーズ。豊田章男社長にインタビューしたり、東京モーターショーを取材したり、ジャーナリスティックなアプローチでトヨタの実像に迫っている。あれもクリエイティブディレクターは篠原さんですよね確か。すごいなあ。
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