カプセル式コーヒーマシン「ネスプレッソ」を日本で展開するネスレネスプレッソ(東京・品川)は、2020年1月30日から新コーヒーシステム「VERTUO(ヴァーチュオ)」を発売する。これまでの抽出システムとは異なる、新テクノロジーを採用したマシンで若者など顧客層の拡大を目指す。
圧力ではなく「遠心力」で抽出する
「ヴァーチュオ」は独自に開発した新摘出テクノロジー・遠心力摘出法を搭載。高圧力抽出を採用するネスプレッソ従来のコーヒーメーカーとは異なり、カプセルを回転させながら遠心力を使ってお湯を注入し、カプセル内のひいたコーヒー豆全体にお湯を行き渡らせていく。
カプセルの縁に印刷したバーコードには、各カプセルに最適な抽出設定が記録されている。バーコードを機械が自動で読み取ることにより、カップサイズ、回転数、注入湯量、湯温、蒸らし時間など各ブレンドに最適な抽出がボタン1つで可能となる。
ネスレネスプレッソのパスカル・ルバイー社長はヴァーチュオについて「2014年に米国とカナダで発売した先行モデルのデザインを新しくしたもの。世界に先駆け日本で初めてお目見えとなる」と説明。その上で「これは全く新しいコーヒーシステム。開発に5年間を要した革命的なテクノロジーを搭載している」と既存のコーヒーメーカーとは異なる点を強調した。
ヴァーチュオでは、ラージサイズのマグ(約230ミリリットル)をはじめ5つのカップサイズ(マグの他にはアルト約414ミリリットル、グランルンゴ約150ミリリットル、ダブルエスプレッソ約80ミリリットル、エスプレッソ約40ミリリットル)でコーヒーを味わうことができる。「主にラージサイズで楽しんでいる方々に適したマシンだと自負している。コーヒー愛飲者の86%がラージサイズで楽しんでいるという(※ネスプレッソ調べ)日本では、きっと受け入れてもらえる。日本は米国に次いで大きなコーヒー市場。この巨大なマーケットの中で『ヴァーチュオ』を提供することにより、我々はさらに飛躍できると考えている」(パスカル社長)と自信をのぞかせた。
抽出された一杯で目を引くのは、ヘーゼルナッツ色のきめ細かなクレマ(泡)だ。同社の甲斐太平衛マーケティングディレクターは「今までにない厚みのある豊かなクレマを実現できた。まずは一口そのまま飲んでもらい、その後これをスプーンで混ぜ込み、コーヒーと一緒に楽しんでもらう。我々はこれを“新作法”と定義する。これまで家庭では味わえなかった柔らかな口当たりを簡単に体験してもらえる」と胸を張る。
ネスプレッソが培ってきた専門性と職人たちの技の結集
報道陣向けの試飲会にはRestaurant TOYO Tokyo シェフソムリエの成澤亨太氏が登壇。まず「ジョルニオ(※カプセルの種類)」を一口飲み、「クレマを混ぜ込む前と後では別物のような香りがする。一杯のコーヒーで何度も新しい発見を楽しめる」とコメントした。続けてミルクと合わせた「コロンビア」については、「クレマがミルクと合わさったことにより、すごくきめ細かになった印象がある」と評した。
特徴的なドーム形状のヴァーチュオ専用カプセルは、単一生産国のみのコーヒー豆を使用し、その土地ならではの精製方法を施している。同社コーヒーアンバサダーの上野里佳氏は開発に際し、「たくさんの量のコーヒーを抽出するには相応の粉が必要。そのためカプセルが大きくなってしまうという困難にも直面した。焙煎したコーヒーは二酸化炭素といったガスを放出する。このカプセルの中でガスの量をコントロールするのが難しかった」と振り返る。
そうした問題をクリアするため、使う豆の生産国や粉砕する粒度、充填量など全ての項目を一から見直したという。「ヴァーチュオから作り出されるものは、ネスプレッソが培ってきた専門性と職人たちの技の結集ともいえる一杯」と上野氏。
若い世代の方にも新しいコーヒー体験を
ネスレネスプレッソはクレマがたっぷりのったコーヒーを大きなマグカップで楽しんでもらいたいという思いから「#クレマグ」と名付けたキャンペーンをTwitterで展開する。これまで30代後半~40代をターゲットとしてきたが、ヴァーチュオではさらに幅広い層にアプローチするためSNS運用にも力を入れていく方針だ。「既存のユーザーはもちろん、若い世代にも新しいコーヒー体験を楽しんでほしい」と同社マーケティングチームデジタル&ソーシャルコミュニケーションスペシャリストの塚田彩香氏は語る。
実際に試飲できるイベントも20年1月30日から2月2日まで、東京・六本木のヒルズカフェ/スペースで開催する。「“#クレマグ”はクレマとマグカップを掛けた造語。この言葉を自然とユーザーから発信してもらえるようになることを期待している。このイベントを皮切りに今後も実際に体験できる場所を積極的につくっていき、クチコミでの拡散を狙う」(甲斐マーケティングディレクター)考えだ。
(写真/中山 洋平)