温泉施設の改修工事のさなか、集客を落とさないためにはどうすればいいか――こんな難題をエンターテインメントで解決するプロジェクトに映像・音楽ソフトメーカーのポニーキャニオン(東京・港)が取り組んでいる。

火の鳥道後温泉編 (C)TEZUKA_PRODUCTIONS
火の鳥道後温泉編 (C)TEZUKA_PRODUCTIONS

 その一環として2020年2月、手塚プロダクションが制作する「火の鳥“道後温泉編”」の第2話となるアニメーションを公開する。19年に公開した第1話の続編だ。愛媛県松山市と組み、道後温泉のPRのために仕掛ける「道後REBORNプロジェクト」の目玉企画の一つ。エンターテインメントの会社として持つ映像制作やプロモーションなどのノウハウを、自治体PRなどでも生かそうという取り組みだ。

 同社は19年4~9月末までの上期、CDやDVDなどのパッケージ売り上げを、ライブ事業やグッズ販売などのノンパッケージが初めて上回った。そのノンパッケージでも異色の事業が道後温泉のPR事業。数年前から新事業として取り組み、これまでに約200件の自治体案件を手掛けてきたという。音楽ソフトメーカーがなぜ? その狙いなどを同社経営戦略本部で副本部長(兼)経営企画部部長の石川和雄氏に聞いた。

――19年の上期(4~9月)、ノンパッケージの売り上げがパッケージの売り上げを初めて上回りました。

石川和雄氏(以下、石川氏) 上期の全社の売り上げが198億円で、CDやDVD、ブルーレイなどの「パッケージ」が93億円、「その他」のノンパッケージ事業が105億とパッケージを上回りました。インターネット配信やライブ事業、グッズ収入などが入っています。パッケージの売り上げはそんなに落ちていないのですが、その他のビジネスが拡大しました。松山市・道後REBORNプロジェクト事業も「その他」に含まれます。

――道後温泉などの地方プロモーションを請け負ったきっかけは?

石川氏 我々はもともとレコードメーカーです。レコードって要は記録という意味ですよね。以前はアナログ盤であり、ミュージックテープが出て、CDが出てと変わっていく中で、現在の配信が出てきました。ただ、エンターテインメントは、そういう媒体を介さなくてもいろいろ楽しめます。我々は物をつくったり、プロデュースしたりするスキルがあるので、これをどう生かせるかと考えたのがそもそもの始まりです。道後REBORNプロジェクトでは、手塚プロダクションさんの力を借りて自治体をプロデュースしています。

ポニーキャニオン経営戦略本部で副本部長 (兼)経営企画部部長の石川和雄氏
ポニーキャニオン経営戦略本部で副本部長 (兼)経営企画部部長の石川和雄氏

――松山市からはどういう依頼があったのですか?

石川氏 改修工事はするけれども集客を落とさない、というのがテーマでした。道後温泉が抱えている問題を我々のエンターテインメントでどう解決できるか。思いついたのが『火の鳥』です。『火の鳥』の不死鳥というイメージは生まれ変わるというテーマにぴったりですから。KPI(重要業績評価指標)は集客。普通、改修するときはその施設を閉めるのですが、営業しながら改修するわけです。

――プロジェクションマッピングも活用していますね。

石川氏 改修中の道後温泉本館ではプロジェクションマッピングで火の鳥のアニメーションを投映しています。19年4月に(映像制作会社の)ネイキッドと始めました。道後温泉自体を劇場にしてしまったわけです。エンターテインメント性を持たせて面白いと思ってもらわないと、現地に行ってもらえませんから。道後温泉の宿泊者数は5%程度の落ち込みで抑えられました。許容範囲をはるかに超える(下回る)数字だったのです。

――自治体プロモーションを始めたのは?

石川氏 ワーキングチームが立ち上がったのが15年です。我々が培ってきたゼロイチで作れる力を何かに生かしてビジネスなどの問題解決をできないかと始めました。自治体の公募をみて、これをエンターテインメントに変えたらいいのではないかという発想です。

 17年に現在のエリアアライアンス部を設置して、これまでに約200件の自治体案件を手掛けてきました。エリアアライアンス部は今9人です。1人2個ぐらい案件を抱えているので14~15案件が動いていると思います。

――『火の鳥』のようなPR映像が中心なのですか?

石川氏 最初はPR映像を作るのがベースでしたが、面白い例でいうと三重県桑名市、それから静岡県沼津市の東京PR事務局などもやっています。名刺を持って広報活動のお手伝いをしているのです。PR課の方と月1でミーティングをしながら、やることを決めています。桑名市は3カ年計画なのですが、1年目が「食」、2年目が「歴史」、3年目が「祭」をテーマに、PR大使のような「魅力みつけびと」を立てています。桑名市の魅力を取材していただきながら、SNSや映像で発信をしているのです。19年度は、ヒップホップグループRHYMESTER(ライムスター)のMummy-Dさんを「歴史」の「魅力みつけびと」として起用しています。Mummy-Dさんはすごく桑名を気に入って、「くわなにさくはな」という桑名の歌を作って公開しました。これは最初の仕様書にはなかった(笑)。

2019年11月に「道後REBORNプロジェクト」の「火の鳥“道後温泉編”」の発表会に登壇する吉村隆ポニーキャニオン社長(左)、第3話に声優として出演の板尾創路さん(中央)、上の写真で本プロジェクトについて説明している野志克仁松山市長(右)
2019年11月に「道後REBORNプロジェクト」の「火の鳥“道後温泉編”」の発表会に登壇する吉村隆ポニーキャニオン社長(左)、第3話に声優として出演の板尾創路さん(中央)、上の写真で本プロジェクトについて説明している野志克仁松山市長(右)
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