190カ国以上、1億5800万人が利用する動画配信サービス、Netflix(米ネットフリックス)。創業から2012年までの14年間、最高人事責任者を務め、創業者兼CEOのリード・ヘイスティングス氏と共に同社の成長を支えてきたのがパティ・マッコード氏だ。同氏へのインタビューからその強さを探る。
著名監督や俳優を起用し、世界の映画賞も受賞するほど高品質なオリジナルコンテンツを武器に、世界最大級の動画配信サービスに上り詰めたNetflix。その成長過程は、変革の連続だ。
1997年に郵送によるDVDレンタルサービスの会社として創業。それまでのレンタルサービスの主要な収入源だった延滞料金を廃止して定額制を導入し、爆発的な成長を遂げた。
ところが2007年にはそのビジネスモデルを転換。主たる事業を動画配信サービスに移行すると、ビッグデータを活用したレコメンド機能などで会員数を増やし、世界中にサービスを拡大していった。
11年にはオリジナル作品の制作も開始。Netflixの中でも中心的なコンテンツになった。このように、Netflixはたった20年強の間に、郵送DVDレンタル、動画配信サービス、コンテンツ制作と、次々に事業分野を転換してきたのである。
そんな同社の基盤とされているのが、独自の人事戦略とそれによって形成された企業文化だ。国内外の企業経営者の関心も高く、Netflixが自社の人事方針をまとめた社内向け資料「カルチャーデック」を09年に一般公開すると、ネット上ですぐさま拡散され、1500万回以上閲覧された。
このカルチャーデックをヘイスティングスCEOらと共に作ったのが当時最高人事責任者だったパティ・マッコード氏だ。この記事では、同氏が在籍した頃のNetflixの様子や現在に至るまでの考え方、急成長を可能にした企業文化について聞いた。
動画配信移行まで7年間の技術研究
あなたがNetflixに加わり12年に退社するまでの14年間は、同社のビジネスが大きく動いた時期と重なります。まずは当時の状況から聞かせてください。
Netflixは郵送のDVDレンタルサービスとして事業を始めましたが、早い段階からいずれは動画配信が主流になると気づいていました。ですから、長期間にわたって技術研究をしていましたね。7年ほどかけたでしょうか。2時間の映画があるとして、それはストリーミングでどれくらい見られるのか、ユーザーインターフェース(UI)はどんなものが適しているのかなど様々です。
例えば、郵送のDVDレンタルは、ユーザーが見たい映画を「キュー」と呼ばれるリストに登録しておくと、上から順番にレンタル可能な作品が送られてくるサービス。当然、サイトもそれを前提に設計されていました。でも、ストリーミングはその時々で見たいものを選ぶので、そんなリストはいりません。
そうこうしているうちに、DVDレンタルサービスは成長曲線(S字カーブ)で言うところの踊り場にさしかかりました。一方でストリーミングを始めてもいい時期だと判断して、核となる事業を移行したんです。それが07年です。
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