開発期間は約1年、ヘッドにもこだわり満載

 カップ麺を食べるフォーク。その開発には1年近くを要したそうだ。佐藤氏が特にこだわったのは「ヘッドの角度と形状」だという。

 カップヌードルを食べるときの腕の角度や動きを考察すると、通常のフォークでは角度が急すぎて麺や具材が滑り落ちやすい。そのことに気づき、よりすくい上げやすく、そのまま口に運びやすいように、ヘッドを128度横に折り曲げ、さらに128度立ち上げ、ねじれたような形状にデザイン。最終的に「手首を返さずにそのまま口元へ運べる」(佐藤氏)フォークを実現した。

2方向に128度の角度を付けたヘッド部分。爪の間の小さな出っ張りがあるため、麺が引っかかりやすい。くぼみは具が乗せやすく、深い隙間からスープを適度に落とせるようにした
2方向に128度の角度を付けたヘッド部分。爪の間の小さな出っ張りがあるため、麺が引っかかりやすい。くぼみは具が乗せやすく、深い隙間からスープを適度に落とせるようにした

 爪の部分は、縮れた麺が引っかかりやすいように幅と形状を工夫した。爪の小さな出っ張りの間で麺を挟み込む。さらに中央付近にくぼみと深い隙間を設けたことで、スープを適度に落としつつ、具材が乗せやすくなった。

爪の幅と形状の工夫で、麺がうまい具合に引っかかり、ズルッと落ちない。しかも手首の向きを変えずに、楽にすくい上げられる
爪の幅と形状の工夫で、麺がうまい具合に引っかかり、ズルッと落ちない。しかも手首の向きを変えずに、楽にすくい上げられる

 ヘッドが小ぶりなのも、一度にすくい上げる麺の量から逆算した結果だという。さらにフォーク外周部のカーブと容器内側のカーブをそろえたことで、容器に沿わせながら(底の方から)具材をかき出す動作がこれまで以上に楽になった。カップヌードルの食べ終わりに近づくと「せっかくのエビが容器の底にたまっていたりする。このフォークなら全部集められる」と日清食品マーケティング部 第1グループ ブランドマネージャーの白澤勉氏も太鼓判を押す。

容器の縁とフォーク側面のカーブがぴったり
容器の縁とフォーク側面のカーブがぴったり
フォークの側面どちらの側でも容器の縁に沿わせて具材をかき出せる
フォークの側面どちらの側でも容器の縁に沿わせて具材をかき出せる
フォークの先端も容器のカーブに合わせてデザイン
フォークの先端も容器のカーブに合わせてデザイン
この通り、具材だけ簡単に寄せ集められる
この通り、具材だけ簡単に寄せ集められる
THE FORKは使って初めてすごさが分かるこだわりが満載(画像提供:日清食品)
THE FORKは使って初めてすごさが分かるこだわりが満載(画像提供:日清食品)

製品開発で「こだわり」を積み上げていく

 カップヌードルにおいて「フォークで麺を食べる」という発想はブランドの原点に通じる。日清食品創業者の安藤百福氏は、視察で訪れた米国で現地の担当者たちが「丼と箸」の代わりに「紙コップとフォーク」を使って「チキンラーメン」を食べる姿を目にする。それがカップヌードル開発のきっかけとなった。1971年の発売時から手で持って自由に食べるスタイルを掲げ、海外展開も視野に「フォークで食べるカップ麺」という世界初の斬新なイメージを打ち出すことに成功した。

 これほどフォークとの関係が密接なブランドだけに、佐藤氏から「カップヌードルの容器でカップヌードルを食べる動作に特化した道具を設計する」という、突拍子もないような専用フォークの提案を受けても、日清食品側には「何だそれは、という感覚は全くなかった」と白澤氏は振り返る。それどころか「そもそも“無駄にこだわる”のは日清食品らしい企業文化」とまで言い切る。

日清食品マーケティング部 第1グループ ブランドマネージャーの白澤勉氏
日清食品マーケティング部 第1グループ ブランドマネージャーの白澤勉氏

 「製品開発において細部まで徹底的にこだわる精神が、企業文化の血として脈々と流れている」と白澤氏。“無駄なこだわり”を詰め込んだ専用フォークも、「日清食品らしさ、カップヌードルらしさという本質を浮き彫りにするもの」と高く評価する。

フタに印刷されたロゴや文字と、カップ本体正面のロゴなどの向きがそろっている。これも日清食品のこだわりの1つだ
フタに印刷されたロゴや文字と、カップ本体正面のロゴなどの向きがそろっている。これも日清食品のこだわりの1つだ

 日清食品の細部にまでこだわる精神は、例えばフタとカップ本体正面のマークをきれいにそろえる配慮や、触れたときの繊細な触感の追求などにも表れている。08年に容器を発泡スチロール製から紙製に変更した際、重視したのは親しまれたカップの手触りと口触りだった。

 「新しい素材にすると味わいも変わるのでは」と、わざと紙の上にざらっとした触感のコーティングを施し、カップの縁に当たる飲み口部分には「四角い角」を作って、それまでの口触りの“なじみ感”を損ねないようにした。縁が丸くロールしている一般の紙コップとは、口に残る感覚は確かに違う。1食百数十円のカップヌードルの容器にそこまで神経が行き届いているとは驚きだ。

 「変えていきながらも、変えてはいけないところは守る。コストも手間もかかるが、我々はこだわりを積み上げていく。変わらない手触り、口触りだからこそ、発売から49年間もの長きにわたって愛され続けている」と白澤氏はカップヌードルブランドに対する自負をのぞかせた。

2008年に紙製エコカップに変更した際、それまで親しまれた発泡スチロール製の手触りと口触りが感じられるように加工で工夫した。飲み口の部分はわざと角を立てて四角くした
2008年に紙製エコカップに変更した際、それまで親しまれた発泡スチロール製の手触りと口触りが感じられるように加工で工夫した。飲み口の部分はわざと角を立てて四角くした