近畿日本ツーリストとクラブツーリズムが傘下に入る旅行会社KNT-CTホールディングスは2019年12月1日、パナソニックの子会社が開発した歩行支援機器を業界で初めて使用したハイキング体験ツアーを実施した。歩くことを敬遠しがちな高齢者などにアピールしたい考えだ。

歩行支援機器を使うことで、歩くことが苦手な高齢者が旅行に参加しやすくなる
歩行支援機器を使うことで、歩くことが苦手な高齢者が旅行に参加しやすくなる

坂道や階段で約2割の歩行支援

 今回使用した歩行支援機器は、パナソニックの子会社でロボットベンチャーのATOUN(アトウン、奈良市)が開発したパワードウェア「プロトタイプHIMICO」(以下、HIMICO)。腰に取り付けた本体と両膝を結んだワイヤを電子制御で伸縮することで、坂道で最大19%、階段の上りで最大17.8%、砂地の歩行で最大30.7%の支援効果が得られるという“着るロボット”だ。ツアーはこの機器を装着した参加者がスタッフのサポートを受けながら、一般参加者に交じって京都の紅葉を見学するハイキングコースを歩くというもの。

 2019年10月にツアーの募集を定員10人で開始したところ程なく満席となり、ツアー当日はキャンセルを除く8人が参加した。ツアー後のアンケートでは下りでの支援効果や調節機能に改善を求める声があったものの、ほとんどの参加者が歩くのが楽になったと述べるなどおおむね好評だった。これを受け、KNT-CTホールディングスではHIMICOを使ったツアーを今後も企画していくという。支援機器についてはATOUNと共同開発を行っており、レンタル事業や販売なども視野に入れている。

ATOUNの着るロボット「HIMICO」。腰のユニットと両膝のプロテクターを結んだワイヤを伸縮させることで歩行を補助する
ATOUNの着るロボット「HIMICO」。腰のユニットと両膝のプロテクターを結んだワイヤを伸縮させることで歩行を補助する

会員の高齢化に対応

 着るロボットを導入した目的は、ターゲット層の高齢化対策だ。KNT-CTホールディングスで個人旅行事業を行うクラブツーリズムは会員制。会員情報誌などで旅行商品を提案し、電話やWebで申し込みを受け付けるダイレクトマーケティングが特徴だ。現在の会員数は770万人以上で、その約86%を50歳以上のシニア層が占めている。

 KNT-CTホールディングス グループ事業推進本部 マーケティング部 未来創造室の波多野貞之部長は「人口減少や会員の多くを占めるシニア層の高齢化が課題であり、バリアフリーなユニバーサルツーリズムが必要になっている。そこに新技術を使った、これまでにない顧客体験を取り入れられないかという観点から企画した」と語る。

 クラブツーリズムでは写真や歴史といったテーマのある旅が人気で、ハイキングや山登りといった“歩く”ことがテーマの旅も人気が高い。

 「高齢化によって、長時間歩いたり坂道を上ったりするのはつらいと旅を諦めてしまう人が増えてくる。着るロボットによるアシストで、そうした人が安心してツアーに参加できるようにしたい。これまで歩けなかった場所を歩いて知らない風景に出合えるという体験を提供できるのではないか」(波多野氏)

KNT-CTホールディングス グループ事業推進本部 マーケティング部 未来創造室の波多野貞之部長
KNT-CTホールディングス グループ事業推進本部 マーケティング部 未来創造室の波多野貞之部長

 将来的には車椅子でツアーに参加する人がいるのと同じように、歩行が苦手になった人がこのロボットを装着することで一般のツアーに参加できるようにしたい考えだ。旅好きが多い高齢者。テクノロジーの進化で体力の不安を解消し、より多くの国民が人生を謳歌できるようにするのも“高齢化ニッポン”の歩むべき道と言えるだろう。

(写真/湯浅英夫、写真提供/KNT-CTホールディングス)