2019年12月、フランス国会で11月に可決された世界初の「MaaS法」の詳細が公開された。22年までに約1兆6200億円(134億ユーロ)の大型投資が実行される注目の政策転換だが、いまだ日本ではほとんど報道されていない。この知られざるフランスMaaS法の中身を、計量計画研究所理事の牧村和彦氏がいち早く読み解いた。
フランスでは、2018年からモビリティ法(フランス語でLOM、loi d’orientation des mobilités)、通称MaaS法が国会で議論されてきた。国家を挙げて地球温暖化への対応、新しい交通産業の育成、競争力の確保の観点から地域の交通サービス向上策の検討を進めるものだ。既存の公共交通機関に加えて新しい移動サービスのオープンデータを義務化し、マルチモーダルな経路検索サービスに決済機能を組み込んだMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)の全国展開を推進する内容が盛り込まれている。フランスでは既存の交通分野のオープンデータ化が進んでおり、すでに都市圏ごとに様々な経路検索サービスが存在する。そこから発展し、スマートフォンで決済までを一括でできる移動サービス、MaaSの実現を促進することにより、イノベーションを起こすことが狙いだ。
モビリティ法(LOM)は、19年春に一度国会で議論され、19年11月18日に国民議会で最終的に可決。そして、12月26日、注目のMaaS法の詳細が公式ジャーナルに掲載された。その中身は、18年~22年の期間(5年)で約1兆6200億円(134億ユーロ)という大規模な予算であり、交通投資の4分の3を地域の公共交通や新たな移動サービスの推進事業が占めるという政策の大転換が示されている。では、その具体的な中身は、どんなものか。
国家を挙げて「移動権」を保証
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