ネット広告会社のローカルフォリオ(東京・港)が提供する広告運用代行サービス「LocalFolio」が、想定顧客である中小企業の間に徐々に浸透し始めている。入札単価の調整やメディアごとの予算配分などをAI(人工知能)で自動化しつつ、スタッフの目も加えて最適化するのが特徴。一定の手数料を払うだけで高い成果を得られるのが、普及の秘密だ。
ローカルフォリオが2019年9月から提供し始めた広告運用代行サービス「LocalFolio」は、潤沢な広告予算を持たない中小企業から一定の広告予算を預かった同社が、一定の手数料を得る代わりに、顧客である中小企業のニーズに基づき、ネット広告の運用を代行し、成果を報告するというサービスだ。顧客である中小企業は、ネット広告に投じる予算額を決めてローカルフォリオに預けるだけで、あらかじめ定めておいたCVR(成約率)などの指標で一定の成果を得られる。
ローカルフォリオは、新たに開発したシステムを活用して、FacebookやInstagramなどのメディアや、リスティング広告やディスプレー広告といったカテゴリーをまたぐ形で、ネット広告の運用を代行する。「主に新規顧客の獲得に強みを発揮できる」(ローカルフォリオの小林治郎社長)という。
複数のメディアやカテゴリーをまたいでネット広告の配信を自動化するサービスやツールは、デジタルマーケティング支援会社Shirofune(東京・中央)が提供する広告運用ツール「Shirofune」などがあるが、中小企業を主なターゲットに定めたサービスは事実上、初めてだ。
新たに開発したシステムが、各メディアに出稿した広告の「結果」を、AIを使った機械学習で学習する。広告から自社サイトやキャンペーンページなどに流入した見込み顧客が実際にサイトなどを閲覧したかどうかという状況も分析し、新規に開発したアルゴリズムによって最適なキーワードとその入札単価を調整。どのメディアやカテゴリーにどれだけの広告を出稿するかという予算配分を、必要ならスタッフの目を加えて調整しながら、自動的に最適化していく。
中小企業のニーズに応えたサービス
ローカルフォリオが主な顧客と想定している中小企業の多くは、人員や予算が限られ、デジタルマーケティングに詳しい人材が必ずしも社内にいるわけではない。こうした中小企業はこれまで、「リスティング広告なら広告代理店A、Facebook向け広告なら広告代理店Bのように、それぞれが得意な出入りの広告代理店に、別々に広告出稿を発注することが多かった」(小林氏)。
また1つの広告代理店に複数のメディアやカテゴリーを任せた場合でも、リスティング広告に10万円、Facebook広告に10万円、ディスプレー広告に10万円といったように、それぞれに予算を定め、その範囲内で運用するような取り組みが多かった。
この手法では、例えばターゲットと定めた消費者に広告がうまくリーチしていないような場合、メディアやカテゴリーをまたいで広告の出稿先や出稿量を臨機応変に見直すことが難しい。メディアやカテゴリーごとにあらかじめ投入すべき広告費の予算が決まっているため、その中でやりくりすることが優先されてしまうからだ。
このため最近は、「『広告代理店の取り分を含めて20万円という定額を渡すから、その予算の中でネット広告を展開し、最大の成果を上げてほしい』という中小企業からの要望が増えてきていた」(小林氏)という。
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