2019年11月5日、長瀬産業と多摩美術大学にエレコムや花王、カシオ計算機のメーカー3社が参加し、プラスチック樹脂「Tritan(トライタン)」を活用した産学共同研究の成果発表会を開催した。
メーカー3社がそれぞれ異なるテーマを出し、多摩美の学生がトライタンで作品に仕上げるというイベントだ。長瀬産業にとってはトライタンの知名度向上や新需要の発掘につながる。多摩美には教育の一環になり、メーカー3社は学生の視点による気づきを得られる。既に長瀬産業は武蔵野美術大学と同様の取り組みを行っており、ユニークな提案が数多く出された。そうした実績を受け、今回は多摩美と開催。発表されたのはどれも斬新なアイデアばかりだ。
エレコムが掲示したテーマは、「『TRITAN×IoT』(コンピュータ周辺機器以外からの発想)〜素材を生かした切り口で時代性を表現するアイテム提案〜」だ。花王の場合は「『環境配慮をしつつお客様に罪悪感を感じさせない新しいパッケージ提案』〜使用後の使い道やその他デザイン性からくる納得の提案〜」。カシオ計算機は「『NEXT TIMEPIECE』〜トライタンの特性を活かし、テクノロジーとファッションを融合させた『時計』の未来〜」だった。メーカー3社は自社のテーマに応じた優秀な作品を、それぞれ1つずつ選んだ。
エレコムが選んだ優秀作品は、昆虫採集用の装置「INSECTA」だ。トライタンで作った長方形の透明な箱で、内部に餌を置いて野外に仕掛ける。昆虫が入るとセンサーからスマートフォンに通知が飛ぶ仕組みで、箱のまま昆虫を観察できる。虫カゴと異なり、繰り返し使える耐久性や捕らえた昆虫を観察しやすい透明性がトライタンの特徴に合致。昆虫採集を通じたコミュニティーの醸成や新規ビジネスへの可能性も判定につながった。
サステナビリティーを重視
花王はアイシャドーとして提案した「Erz」を選んだ。アイシャドーのカラフルな容器がトライタンになっており、アイシャドーを使用していくと容器が「宝石」のように見えるなど、化粧の過程まで楽しめるようにした。これまでの容器は、多少のアイシャドーが残っていても、捨ててしまう場合が多かった。今回は使用するうちに容器がきれいに見えてくるので、アイシャドーを残さずに使うようになるという。使用後は金具を付けてピアスやイヤリングにしてもよい。サステナビリティーの視点で評価された。
カシオ計算機は“エレクトロニックジュエリー”のコンセプトを掲げるブランドを打ち出した「Veleno.」を選択した。トライタンで作った腕に着けるアクセサリーだが、電子ペーパーを内蔵しており、時刻に応じてアクセサリーの一部が発光し、腕時計代わりにも使える。おしゃれな場所でも、さりげなく時刻を確認できそうだ。使用するユーザーやシーンが明確で、ストーリー性がある点が選択理由になったという。
メーカー3社の担当者は「どの作品も社内からは絶対に出てこないアイデア」と口をそろえる。ここから新規事業につながる可能性もありそうだ。
(写真提供/長瀬産業、多摩美術大学)
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