森永製菓は2019年12月6日、ゼリー飲料「inゼリー」にゲーマー向けの「inゼリー
inゼリーは森永製菓が1994年に「ウイダーinゼリー」として発売したパウチ容器入りのゼリー飲料。2018年に「inゼリー」と名称を変更した。キャップを外せば片手で飲める手軽さが特徴で、忙しい朝の朝食代わりや運動前後のエネルギー補給などに利用されてきた。
今回発売したinゼリー<GAME BOOSTER>は、ゲーム中の飲用を想定した商品だ。ゲームに目を付けた理由を森永製菓マーケティング本部健康マーケティング部の針ヶ谷仁氏は、「片手で飲める、手が汚れない、小腹を満たせるという持ち味がゲームと相性がいいと考えた」と話す。
開発の過程では、同社がオフィシャルパートナーを務める横浜F・マリノスのeスポーツチームに所属するプロ選手たちから意見を収集。商品に反映したという。
成分は吸収速度の異なる3種類の糖類に加え、目の健康に必要なビタミンA、ストレスを低減する機能があるとされるGABAを配合。風味は同シリーズの従来商品より強めに設定した。「eスポーツ選手にはエナジードリンクのパンチがある味になじんでいる人が多い。従来の味付けだと頼りなく感じてしまうこともある」(針ヶ谷氏)。
分量は検討の末、従来商品の多くと同じ180gとした。「eスポーツの大会は試合の時間もその合間の待ち時間も長い。その間、集中力を維持するには空腹も満腹もダメ。選手の話から適量を探った結果、180gに落ち着いた」(針ヶ谷氏)。
EC専用商品としてチャネル拡大を狙う
森永製菓がinゼリー<GAME BOOSTER>を発売した背景には2つの狙いがある。1つはECという新たな販売チャネルの開拓だ。inゼリーシリーズの既存商品が強いのはコンビニやスーパー、ドラッグストア。一方で、値崩れしやすいECサイトには卸していない。しかし「今後ECへの対応は必須。そこで既存商品とは別のEC専用商品として、inゼリー<GAME BOOSTER>、同時発売のinゼリー<SPORTS BOOSTER>の2商品を開発した」(針ヶ谷氏)。
もう1つの狙いが、定番になったinゼリーに新たな切り口を加えることだ。従来は「マルチビタミン」「マルチミネラル」「プロテイン」など、栄養素別に商品を展開してきたのに対し、inゼリー<GAME BOOSTER>は「ゲーム中」というように利用シーンを前面に押し出している。
利用シーンを明示することはターゲットを狭くする可能性もあり、商品によっては避けたいところ。だが、「ECでは欲しいものを探して購入する人が多い。マスには届かなくても、その商品を真に欲する顧客は見つけてくれる」と針ヶ谷氏は見る。
販売をアマゾンに限定したのも、ゲームユーザーに最も身近な販売チャネルだからだ。アマゾンは、EC市場でも圧倒的な存在感があるうえ、キーボードやマウスといったゲーム関連商品も販売している。ユーザーがPCやスマートフォンでゲームを楽しむ合間にアマゾンで買い物をするのは自然な流れだ。針ヶ谷氏は、「inゼリーを知っていても、買ったことはない、食べたことはないという人はまだまだ多い。これを機に自分たちに身近な商品と感じて手に取ってもらえたら」と話す。
ラボでeスポーツ選手をサポート
今後は横浜F・マリノスのeスポーツ選手らの力も借りて、inゼリー<GAME BOOSTER>をゲームユーザーにアピールしていく考えだ。とはいえ、「選手たちが『飲んでいます』『サポートしてもらってます』とただ言ってくれるだけでは浅い」と針ヶ谷氏。ゲームユーザーが、inゼリー<GAME BOOSTER>はゲームシーンに適した商品だと納得してくれないと購入まではつながらない。
その納得感の裏付けとなるのが同社のeスポーツへの取り組みだ。
同社では1986年に「トレーニングラボ」という組織を設け、トレーナーや栄養士といった専門スタッフが身体面、栄養面、メンタル面でアスリートをサポートする活動を続けてきた。現在、サポート対象にはテニスの錦織圭選手や卓球の平野美宇選手、柔道の高藤直寿選手らが名を連ねる。ここに2019年10月から横浜F・マリノス、Burning Core、JUPITERといったeスポーツチームの選手たちも加えたのだ。「長時間、ゲームに集中しなければならないeスポーツ選手ならではの不調やトラブルは多い。コンディションの維持やパフォーマンスの向上に役立つメニューを提供していく」(針ヶ谷氏)という。
同時に、トレーニングラボで得た知見を森永製菓の商品作りにも取り入れていく方針だ。「inゼリー<GAME BOOSTER>にはきちんとした根拠があることを知ってもらえれば、納得して手に取ってもらえるはず」(針ヶ谷氏)。スポーツ分野で積み重ねた経験をeスポーツに生かし、新たな定番商品になることを目指す。
(写真提供/森永製菓)