1億総活躍社会時代の日本、共働き世帯は増加する一方だ。そうした中、注目されているのが、育児負担を軽減する玩具だ。セガトイズ(東京・台東)の動く絵本プロジェクター「ドリームスイッチ」シリーズが親世代のみならず、祖父母世代が4割を占める驚異的な購入率を記録している。

ドリームスイッチ本体。付属のリモコンでも操作できる
ドリームスイッチ本体。付属のリモコンでも操作できる

子供とのスキンシップが図れる

 セガトイズの「ドリームスイッチ」は天井にさまざまな物語を投影する装置だ。キャッチフレーズは「動く絵本プロジェクター」。これが「読み聞かせ」と「寝かしつけ」、双方のニーズを満たせるとあって、親だけでなく孫へのプレゼントとして祖父母にも大人気となっている。

 絵本を手に持つ必要がないため親も子供と一緒に並んで横になれる。布団やベッドの中で子供の頭をなでたり手をつなぐなど、スキンシップを取りながら物語を楽しめるのがポイントだ。対象年齢は3歳以上だが、0~3歳児を寝かしつけるために購入するケースも多いという。

 現在、2種類の機種を販売している。「ディズニー&ディズニー/ピクサーキャラクターズ ドリームスイッチ」(税別14800円)には『ダンボ』『アナと雪の女王』『トイ・ストーリー』などの作品や言葉遊びができるコンテンツが50種類収められ、「ドリームスイッチ」(オープン価格)では日本と世界の昔話、星座の話、童謡など62種類が楽しめる。どちらも実売価格は1万5000円(税込み)を超えるにもかかわらず、2017年11月のディズニー版の発売から1年半で10万台、約2年たった現在15万台を突破した。玩具業界では10万台がヒットの目安とされるが、ドリームスイッチのような高価格帯商品でこの数字は異例とのこと。

 「コンテンツが豊富なので飽きずに子供が見てくれる。童話以外にも搭載コンテンツには『ABC』や『あいうえお』が学べる知育要素が入っているので、『1万5000円は気持ち高いな、でもこれだけあるなら買おうか』という流れ」とセガトイズ企画本部プロダクト企画部ディレクターの芦久保健一氏は話す。さらに同社企画本部プロダクト企画部プロデューサーの手塚雅史氏は「寝かしつけが楽になったうえに、子供が言葉や数に興味を持つようになったという声をもらった」と胸を張る。

「ドリームスイッチ」の使用例。(C)Marcus Pfister/KODANSHA
「ドリームスイッチ」の使用例。(C)Marcus Pfister/KODANSHA
ドリームスイッチを手にしたセガトイズ企画本部プロダクト企画部のプロデューサーの手塚雅史氏(左)と、同ディレクターの芦久保健一氏(右)
ドリームスイッチを手にしたセガトイズ企画本部プロダクト企画部のプロデューサーの手塚雅史氏(左)と、同ディレクターの芦久保健一氏(右)

ヒットの背景に祖父母世代の高い購入率

 ドリームスイッチ開発の背景にあるのは共働き子育て世帯の増加だ。仕事と家庭の両立で時間が足りない。しかしドリームスイッチがあれば、寝かしつけにかかる時間を短縮できる上、不足しがちな親子間のコミュニケーションも図れる。「なかなか寝ようとしなかった子供が、自分から就寝の準備を始めるようになった」との声もあるという。

 一部英語のナレーションにも対応している。英語を話せない親が多いので、小さなうちからネーティブの発音を聞かせたいという親からの要望に応えたそうだ。さらに2種類用意された「ディズニー&ディズニー/ピクサーキャラクターズ ドリームスイッチ 専用ソフト」(税別3800円)を購入すれば、新たに33のコンテンツを楽しめるようになる。

 子育ての大変さを分かっている祖父母世代が、孫の親である自分の子供たちに買い与えたことも、高価格にもかかわらずヒットした要因だ。玩具業界では祖父母世代の購入率は2割で十分高いとされるが、ドリームスイッチは4割に達する。親が祖父母にねだるケースや、孫が遊びに来たときのため祖父母が自身の家に置いたりするケースもあるという。

芦久保氏は「お母さんも働くようになって、時間が限られている中で活躍する商品、というイメージはある」と語る
芦久保氏は「お母さんも働くようになって、時間が限られている中で活躍する商品、というイメージはある」と語る
「子供目線でも、親が子供をサポートする目線でも考えた知育商品でやっていきたい」と手塚氏
「子供目線でも、親が子供をサポートする目線でも考えた知育商品でやっていきたい」と手塚氏

 祖父母世代の認知度向上には新聞広告と通販番組を活用した。セガトイズは毎年11月、12月に新聞広告を打っているほか、テレビ通販大手「ジャパネットたかた」の番組でも取り上げてもらった。実はジャパネットたかたとは発売前から共同で戦略を練っていたという。

 親世代の認知度向上にはリスティング広告を活用している。この世代はスマートフォンなどで口コミの評価を見て購入するケースが少なくない。「寝かしつけに困った人が駆け込むように購入に至るケースが一定数ある」と芦久保氏。「子供 寝かしつけ」などを検索ワードに設定した結果、クリック後の購入率も同社の通常の玩具と比べて約7倍となったという。

 ドリームスイッチのヒットを受け、セガトイズでは今後も親と子供が一緒になって楽しく学べる知育玩具のラインアップを拡大する予定だ。

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