PayPayやLINE PayなどQRコード決済の急速な浸透で、世のキャッシュレス化が大きく進んでいる。一方、こうしたQRコード決済の“受け手”となる市場も拡大している。20種類以上のQRコード決済に対応するネットスターズ(東京・中央)は、資本増強を契機にアジアや中東など海外販売を一気に強化している。

 「これまで日本でのQRコード需要に対応してきたことで会社も急成長した。2020年は東京五輪もあるのでインバウンド需要にも応えていきながら、アウトバウンドというか、当社事業をアジアや中東など海外へ展開していく。そのための資本業務提携である」

 QRコードの読み取りシステムを手掛けるネットスターズのCOO(最高執行責任者)の山口康樹氏はこう語る。

スターペイは、20種類以上のQRコードに対応している(写真提供/ネットスターズ)
スターペイは、20種類以上のQRコードに対応している(写真提供/ネットスターズ)

 同社の決済システム「スターペイ」はQRコードを読み取る装置で、店舗側へ設置するものだ。19年11月末に伊藤忠商事や、SCSKとティーガイアという住友商事グループ企業からの出資を受け、商社などの海外ネットワークを使って、アジアや中東、欧州、南米など海外を一気に攻め込む考えだ。

ウィーチャットペイに日本で最初に対応

 中国からのインバウンド需要に早くから目を付け、15年には騰訊控股(テンセント)のスマホ決済「微信支付(ウィーチャットペイ)」に日本でいち早く対応したことで知られるネットスターズ。アントフィナンシャルの「支付宝(アリペイ)」にも対応。アジアの他のエリアの決済が日本でも使えるよう注力してきた。

 19年7月、シンガポールの通信大手であるシンガポール・テレコミュニケーションズ(シングテル)が日本でスマホ決済サービスを始めると発表したとき、対応する機器として公表したのがスターペイだった。シングテルは東南アジアやオーストラリア、アフリカ各国が参加するスマホ決済サービスの国際アライアンス「VIA(ヴィア)」を主導している。まず羽田空港と成田空港でVIAに参加するタイとシンガポールの決済サービスをスターペイで使えるようにするなど、ネットスターズはインバウンド需要に積極的に対応してきた。

 国内でもPayPayやLINE Pay、メルペイなど20種類以上のQRコード決済に対応している。対応する数では国内最多だという。1台の端末があれば、多くのQRコードを自動で読み込んで決済できる。こうした手軽さがウケて、ドラッグストアなど小売店舗での導入が進んだ。国内でスターペイを採用する拠点数は急速に伸びており、現在では10万拠点に達している。

 11月末には、伊藤忠が株式と転換社債を合わせて数十億円分を出資した。同社の情報産業ビジネス部の竹上貴之氏によれば、「QRコード決済がグローバルに広がる中で、伊藤忠の海外ネットワークを使ってネットスターズのサービスを売り込んでいるところ」。伊藤忠はこのところグループでデータ活用に積極的な姿勢を見せている。ネットスターズへの出資も、単なる投資というよりは、QRコード決済にまつわる様々なデータを、可能な範囲で積極的に活用していきたい考えだ。

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