コーセーがデジタルプラットフォームと体験を融合したコンセプトストア「Maison KOSE(メゾン コーセー)」を東京・銀座にオープンした。パナソニックなどと連携し、最新パーソナライズ機器の実験店舗としての側面も併せ持つ。パナが開発中の肌分析機能を内蔵した鏡など最新機器が体験できる。

2019年12月17日に東京・銀座にオープンした「Maison KOSE(メゾン コーセー)」
2019年12月17日に東京・銀座にオープンした「Maison KOSE(メゾン コーセー)」

パーソナルな提案で双方向コミュニケーションを構築する

 メゾン コーセーでは傘下のアルビオン(東京・中央)以外、すべてのコーセーブランドが店頭に並び、ブランドにとらわれずに自分に合ったアイテムを試せるのが特徴だ。コーセーは2013年から各ブランドのブースが一堂に並び、自由に体験してもらえる「Beautyフェスタ」と題したイベントを全国で開催し、ユーザーとのコミュニケーションを図ってきた。メゾン コーセーはそのコンセプトを常設店として実現した。

 従来はメーカーが宣伝すれば興味を持ってもらえる「一方向のコミュニケーション」だったが、情報ソースの多様化で双方向のコミュニケーションの重要性が高まっている。そこでコーセーはユーザーの生の声をなるべく早くモノづくりに生かし、パーソナルな提案を目指そうとしている。メゾン コーセーは“Find Your Own Beauty"をテーマにチャレンジの場と位置付け、売り上げ目標などは設定しない。店舗ではパナソニックやカシオ計算機と協業し、最新機器によるデジタルと美容との融合を体験できる。新たに立ち上げたオウンドメディアとも連携するなど、デジタル・プラットフォームを構築する狙いもある。

 コーセー デジタルマーケティング事業部長の松原徹氏は、「オンラインショップとの連携やメゾン コーセーでのさまざまな美容体験で、一人ひとりの美容を発見してほしい。オウンドメディアと今回の実証実験で得られたデータも商品づくりに生かす。コンセプトに同意する流通業者とも共有し、顧客、流通との結び付きも強化したい」と話す。

店内にはアルビオン以外のすべてのKOSEブランドがそろう。その場で購入できるほか、リコメンドされた商品をオウンドメディアで買うこともできる
店内にはアルビオン以外のすべてのKOSEブランドがそろう。その場で購入できるほか、リコメンドされた商品をオウンドメディアで買うこともできる
カシオが開発したネイルプリンターも設置される。1本15秒で好きなデザインを選んでプリントできる。将来的には自分が撮影した画像なども転写できるという
カシオが開発したネイルプリンターも設置される。1本15秒で好きなデザインを選んでプリントできる。将来的には自分が撮影した画像なども転写できるという
デジタル・プラットフォームのイメージ図
デジタル・プラットフォームのイメージ図

パナソニックが開発中の最新機器を導入

 メゾン コーセーのデジタル・プラットフォームの核となるのが、パナソニックが開発中の「Snow Beauty Mirror(スノービューティーミラー)」と「メイクアップシート」を活用した「カスタマイズシート(仮称)」だ。スノービューティーミラーは鏡に埋めこまれた非接触センサーが肌表面と表面下の状態を検出し、鏡の前に座るだけで肌状態を分析して瞬時に数値化。シミ・しわ・ほうれい線・毛穴・肌色だけでなく、目に見えない隠れたシミも検出する。その結果を基に、コーセーの複数ブランドを横断して一人ひとりに最適な商品をレコメンドする。

 自分が潜在的になりたいと思っている「理想顔」を導き出すこともできる。コーセーと明治大学が共同で開発した遺伝的アルゴリズムにパナソニックの画像処理技術を掛け合わせ、なりたい顔を見える化するという。スノービューティーミラーの肌分析機能から検出された肌質、肌の色み、明るさをパラメーター調整し、約50万通りの顔画像パターンを作成する。そこから段階的に好みの顔を絞り込み、最終的に「理想顔」を選ぶ。コーセーによると、美容部員とのカウンセリングのみでは双方の認識にギャップが生まれることがある。客観的なデータとして共有することで、目指したいゴールが明確になり、より建設的で満足度の高いカウンセリングになることが期待できるという。

パナソニックが開発中のスノービューティーミラー。ランダムに抽出される顔画像パターンから理想の顔を3つずつ2回選び、最後に1つ選択する。現状と理想の顔とのギャップを埋めるための具体的なカウンセリングが受けられる
パナソニックが開発中のスノービューティーミラー。ランダムに抽出される顔画像パターンから理想の顔を3つずつ2回選び、最後に1つ選択する。現状と理想の顔とのギャップを埋めるための具体的なカウンセリングが受けられる

 スノービューティーミラーで分析した肌色に合わせて、独自の印刷技術で一人ひとりの肌に合った色みを印刷した「メイクアップシート」という超極薄シートを用いた実証実験も行う。メイクアップシートは、貼るだけで頬やこめかみなど、シミが気になる部位をカバーできる。今回の実験ではメイクアップシートの技術を応用し、色みや安全性などコーセーの化粧品開発知見を連携させて「カスタマイズシート(仮称)」として導入する。

スノービューティーミラーでシミを検出し、隠したいシミに合わせて色みを調整する。2回目の来店でシートを受け取ることができる
スノービューティーミラーでシミを検出し、隠したいシミに合わせて色みを調整する。2回目の来店でシートを受け取ることができる
向かって右の頬にカスタマイズシート(仮称)を装着しているが、見た目では分からない
向かって右の頬にカスタマイズシート(仮称)を装着しているが、見た目では分からない
水でぬらして貼ったシートに、水をかけると簡単にめくって取れる。手術に用いる糸に使われる繊維を使っているため、肌に負担はほとんどない
水でぬらして貼ったシートに、水をかけると簡単にめくって取れる。手術に用いる糸に使われる繊維を使っているため、肌に負担はほとんどない

 パナソニックと連携した意義についてコーセー経営企画部マーケティング政策室長の柴田昭伸氏は、「ニーズが多様化するなかにあって、高度な美容提案をするためパーソナライズに着手すべきだと判断した。普通に考えるとファンデーションは塗る、たたき込むなどの方法しか考えられず、色も多くて30色ほどに限られる。しかし、カスタマイズシートは色を無限に出せてファンデを貼るという新発想で、ユーザーのQOL(生活の質)を向上させる可能性を秘めている。スノービューティーミラーは、感覚的に判断していた商品選びを、非接触で顔全体を診断でき、カウンセリングの質を向上させる武器になり得る。美容業界において買う前、買う時、買った後までも経験の価値を向上させていきたい」と述べる。

 今回スノービューティーミラーとカスタマイズシート(仮称)の導入はあくまで実験で、本格展開は実験データを基に判断していくという。直感的で誰にでも操作できるユーザビリティーは、言葉の壁を越えたパーソナライズ提案に大きな一助となるだろう。

(写真/北川聖恵、写真提供/コーセー)

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