ライブ配信プラットフォーム「SHOWROOM」を運営するSHOWROOM(東京・渋谷)は2019年12月17日、新サービスの構想を発表した。「動画」「音声」「ライブ」の3つの領域で新サービスを開始し、“第二創業期”として「エンタメテックカンパニー」への進化を目指す。
「SHOWROOM」は動画のライブ配信と視聴ができるサービス。配信者はバーチャル空間で動画配信を行い、視聴者はそれを見ながらコメントしたり、有料・無料のギフトアイテムを仮想ステージに投げ入れる「ギフティング」で応援したりする。2018年時点で会員登録者数330万人以上、配信者は27万人を超える。
SHOWROOMの前田裕二社長は新サービスを積極投入するこれからを“第二創業期”と位置付け、「ライブ配信プラットフォーマーから、エンタメテックカンパニーへの変化を目指す」と意気込む。エンタメテックとはテレビや映画、ラジオといったエンターテインメントと、5GやAR(拡張現実)/VR(仮想現実)などのテクノロジーを合わせた造語だ。
「スマホ登場前は自宅での夕食時などまとまった時間に、プロが作ったテレビなどのエンタメに触れていた(メディア1.0)。スマホ登場後は通勤通学や仕事の休憩時間など細切れの時間でエンタメに触れるようになり、この領域はアマチュアが作った短い動画などのコンテンツが中心だった(メディア2.0)。これからは低遅延や高速・大容量が特徴の5Gによってプロが表現したい作品作りが可能になり、プロが作ったコンテンツに回帰していく(メディア3.0)」と前田社長。
そこで同社はプロコンテンツの強化を図る。これまでテレビや映画向けにコンテンツを作ってきた企業やプロのアーティストが、縦長スクリーンのスマホでの視聴に適した“短時間でも刺さる動画”を「SHOWROOM」向けに作り、20年3月ごろに提供を始める。
SHOWROOMは19年11月21日に、電通、ニッポン放送など7社からの資金調達およびDeNA保有株式の一部譲渡(総額31億円)を発表した。新規事業には調達した資金を充てる。19年12月5日にはジェイ・ストームと資本業務提携を発表した。両社で19年2月にジャニーズ初のバーチャルアイドルを共同開発して動画配信を開始するなど、すでにプロが作ったコンテンツの配信にも取り組んでいる。
同様に、音声メディアもプロがスマホ向けに作ったコンテンツを投入する。電車に乗っているときや、歩行中、家事をしているときなどに楽しめる、集中して聴きたくなるような“耳密度の高い音声コンテンツ”を提供する考えだ。すでにニッポン放送と提携し、コンテンツ制作を進めているという。
ライブ領域ではAR/VRの技術を活用して、どこでもライブを体験できるサービス「SHOWSTAGE」を提供する。現在VRを使ったベータ版サービスを提供中で、これにAR機能を追加して正式リリースする。スマホやタブレットを床や机にかざすと、そこに3Dキャラクターやアーティストのライブ映像が重ねて表示される。第1弾のライブは20年1月26日を予定している。
動画、音声、ライブの領域でプロコンテンツの新サービスを投入するとともに、SHOWROOMの配信者がそれらの場で活躍できるようにするプロデュース活動にも力を入れていく。
「6年間SHOWROOMをやってきて、演者(配信者)の夢はTVや映画に出て活躍するスターのような存在になることだと分かった。そうした夢を受け止められる場を、TVや映画よりも身近なスマートフォンの上に作りたい。それが今回発表した新サービスだ。しかし人気を得るための努力と、タレントやミュージシャンとしての実力を高めるための努力は違う。実力を高めるには客観的な視点が必要であり、それをパートナー企業とともにプロデュース機能として提供していく」(前田社長)
既存のライブ配信事業と新サービスをプロデュースによって結び付け、夢を追う配信者とそれを応援する視聴者という形を作ることで事業拡大を狙う。
(写真/酒井康治)