三井住友信託銀行が単身者向けの遺言信託の取り扱いを開始した。契約者の死後の遺品整理や役所への届け出などを一括して請け負うもので、通常の遺言信託よりも手軽な商品としてアピール。40代など若い層の取り込みを狙う。

「おひとりさま信託」の発表会に登壇した三井住友信託銀行 人生100年応援部の谷口佳充部長
「おひとりさま信託」の発表会に登壇した三井住友信託銀行 人生100年応援部の谷口佳充部長

ペットの委託先まで依頼可能

 「人生100年時代」といわれるようになって健康や長寿に関心が高まる一方、生前に死後の整理について考える「終活」という言葉も一般的になった。葬儀に関する希望などを自分でまとめた「エンディングノート」を書く人も増えている。

 終活が浸透する一方で、少子高齢化や核家族化で単身世帯が増えたことで、「希望を書き残してもその通りに死を迎えられるか」という不安を抱えている人も少なくないだろう。そんな人に向けて、三井住友信託銀行が2019年12月17日に発売したのが「おひとりさま信託」だ。

 同商品は遺言(いごん)信託と呼ばれる金融商品の一種。契約時に現金とともに同社が独自に作成した「エンディングノート」に必要な情報を記載して預ける。エンディングノートでは葬儀や埋葬方法の希望、契約者のパソコンやスマホ、SNSのパスワードやクレジットカード情報、公共サービスの情報を管理。同社が立ち上げた社団法人が契約者の死亡後に葬儀の手配や情報の削除、サービス解約などの「死後事務」を代行する。事務的な作業だけでなく、亡くなったことを連絡してほしい人やペットを誰に託したいかなど、心理的な面もカバーする。

「おひとりさま信託」のサービスの流れ。死後事務は三井住友信託銀行が2018年11月に立ち上げた社団法人「安心サポート」が行う。申し込みは300万円から受け付ける。新規設定時に税込み3万3000円、終了時(死亡時)に所定の信託報酬を支払う必要がある
「おひとりさま信託」のサービスの流れ。死後事務は三井住友信託銀行が2018年11月に立ち上げた社団法人「安心サポート」が行う。申し込みは300万円から受け付ける。新規設定時に税込み3万3000円、終了時(死亡時)に所定の信託報酬を支払う必要がある

 一般的に、葬儀や埋葬、家財整理などの死後に必要な作業を生前に手配する際はそれぞれの業者に個別に依頼しなければならない。また、単身者の場合、これらの費用は原則的には前払い。おひとりさま信託は契約時に現金をまとめて預け入れ、死後事務で発生した費用はそこから支払う仕組みにした。

 入金金額は300万円から。「死後事務にかかる費用は平均150万円ほど。そこに死後事務を代行する社団法人への報酬と信託報酬を足すと、残る金額は100万円ほど。これならば一般的に無理のない金額ではないかと考えた」(三井住友信託銀行)

「富裕層」でなくても使える遺言信託が必要

 おひとりさま信託は社内公募から生まれた商品。三井住友信託銀行の社員が顧客から「死後事務を誰に頼んだらいいのか分からない」と相談されたことをきっかけに考案した。

 同社の遺言信託の加入者数(保管件数)は3.2万件。10年前の同期比で1.3万件増加している(2019年9月末時点)。だが、契約者の多くは富裕層で、中心となる世代は70代だ。一方、未婚率の増加や核家族化で単身世帯は増え続けている。20年には単身世帯が1934万世帯となる見込みで、これは日本の総世帯数の3分の1だ。さらに「そのなかの1200万世帯が65歳以下」と同社人生100年応援部の谷口佳充部長は話す。

 この層に合った商品をつくれば、加入者数は増やせる。そこで考えたのが、比較的少ない金額で申し込める上にやり取りの手間を軽減したおひとりさま信託だった。

 契約時は対面してコンサルティングを行うが、20年3月にエンディングノートをデジタル化して契約者が手軽に書き換えられるようにする。また、現時点では申込時に一括して現金を支払う仕組みだが、20年4月には積み立て型の商品を追加予定。手元にまとまった資金がない人にも使いやすくする狙いだ。

単身世帯は年々増加している
単身世帯は年々増加している

終活に不安を抱く「おひとりさま40代女性」を狙う

 第1のターゲットは50~60代。この世代は退職金の預け入れなどで比較的接点を持ちやすい。だが、同社がその次に狙うのが40代の女性だ。

 契約終了時(死亡時)に発生する終了時信託報酬は一律で決定している額に加えて契約年数に応じた額契約期間(年数×税込み6600円)を支払う。比較的若い世代に契約をしてもらえれば、契約期間が長くなる可能性が高い。つまり、同社に入る報酬も増加するということだ。また、同社が調査したところ、男性よりも女性のほうが終活に関心が高いことが分かった。「今後はSNSなどを使って40代女性にアプローチしていく」(谷口部長)

男性よりも女性のほうが「死後事務」への関心が高いことが分かった
男性よりも女性のほうが「死後事務」への関心が高いことが分かった

 40代はまだ終活を考えるには早いように思える。だが「19年10月にウェブ上で遺言信託などに関わる遺言作成相談ができる『WEB遺言信託サービス』を開始したところ、30~40代の申し込みが増加した。勝算はある」と谷口部長。「おひとりさま信託はエントリーモデル。遺言信託とは縁遠いと思っていた人たちにも使ってもらいたい」と言う。

(資料提供/三井住友信託銀行)