ウィーンで2019年11月に開催された第11回「グローバル・ドラッカーフォーラム」。イノベーションマネジメントを推進する一般社団法人Japan Innovation Networkの代表として筆者は参加した。毎年恒例のイベントで今回のテーマは「エコシステム(生態系)の力」。なぜエコシステムなのか。

ウィーンの王宮で開催された「グローバル・ドラッカーフォーラム」(写真提供/ウィーンのピータードラッカー協会)
ウィーンの王宮で開催された「グローバル・ドラッカーフォーラム」(写真提供/ウィーンのピータードラッカー協会)
 グローバル・ドラッカーフォーラムは、ウィーンのピータードラッカー協会による例年のイベントで、19年は11月20~22日に開催された。世界から多くのスピーカーが参加しており、マーケティングの大家フィリップ・コトラー氏、「競争優位の終焉」をうたうリタ・マグラス氏などの経営学者、企業のリーダーや実務家(グーグル、ピクサー、スティールケースなどの米国企業、欧州企業、ハイアールなどアジア企業、日本からは富士通)が登壇。約900人の参加者を巻き込んだ議論を交わした。今回は「ビジネスモデル・ジェネレーション」著者のアレクサンダー・オスターワルダー氏が会議議長を務めた。

 毎年テーマを掲げ、世界の経営の方向を見据える場になっている。18年のテーマは「経営における人間の次元(の回復)」だが、19年は経営や事業における「エコシステムの力(The Power of Ecosystem)」だった。これが出てきた背景には、従来の製造業のように、自社のバリューチェーンや閉じられたビジネスモデルだけでは企業の持続性が不可能になっている、という認識がある。エコシステムというキーワード自体は新しくはないが、グローバルな経営における思考のパラダイムシフトを、より強調した格好だ。

アレックス・オスターワルダー氏によるイントロダクション(筆者撮影)
アレックス・オスターワルダー氏によるイントロダクション(筆者撮影)

 スイスのビジネススクールIMD(International Institute for Management Development)のビル・フィッシャー教授は、エコシステムのことを「目に見えないもの」(いわば隠れている現実)とした。だがエコシステムで生きる術(すべ)を身につけた組織は、そのエコシステムをうまく維持するような行動を取ると示唆している。重要な点は、オープンであって支配するものではないということだ。そこを間違えると企業の価値が破壊される可能性があると言う。

 エコシステムは多様な次元を持つ。事業レベルから地域、国家レベル、またエコシステムのつながりによる、より大きなエコシステムもあり得る。基本的な要素は、プラットホームとその提供者、価値の提供者、享受者、ユーザーなどである。プラットホームと、結果的に生まれるエコシステムは必ずしも同一のものではない場合もある。

紺野登・野中郁次郎著『構想力の方法論』(2018、日経BP)より
紺野登・野中郁次郎著『構想力の方法論』(2018、日経BP)より

エコシステムを自ら作り出すか、他社に組み込まれるか

 熱心に議論されたことは、エコシステムを「自ら作り出すか、あるいは自社が他社のエコシステムに組み込まれるか」だった。これを構想することは、グローバルな企業経営では不可避の課題といえる。登壇したフューチャリストのエイミー・ウェッブ氏は「もしあなたが自社の未来について考えなければ、あるとき誰かの作ったエコシステムに取り込まれているでしょう」と言う。ハイアールの張瑞敏(チャン・ルエミン)CEO(最高経営責任者)は「組織にとっての最大のリスクは、製品(モノ)に集中すること。モノよりも顧客経験(カスタマー・ジャーニー)を提供し、それの価値を高めるためのエコシステムを構想しなければ、世界から取り残される」と話していた。

ハイアールのチャン・ルエミンCEOによるプレゼンテーション(筆者撮影)
ハイアールのチャン・ルエミンCEOによるプレゼンテーション(筆者撮影)
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