後払い決済のプラットフォームを構築し、ECサイトやリアル店に提供しているネットプロテクションズ(東京・千代田)が2019年11月末、主にECサイト向けに提供する主力サービス「NP後払い」のシステムを全面刷新(大規模アップデート)した。新システムでこれまで踏み込みにくかった市場への浸透とリアル店へのさらなる展開を狙う。

システムの大規模アップデートを発表するネットプロテクションズの柴田紳社長CEO(左)と鈴木史朗CTO(右)
システムの大規模アップデートを発表するネットプロテクションズの柴田紳社長CEO(左)と鈴木史朗CTO(右)
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 ネットプロテクションズの主力サービスであるNP後払いは、楽天市場やユニクロなど大手ECサイトを含めて4万社以上が導入済み。ECサイトで商品を購入したユーザーが決済手段としてNP後払いを選ぶと後日、請求書が届くので、14日以内にコンビニエンスストアか郵便局、銀行などで支払うという仕組みだ。そのユニークユーザー数は年間1350万人、流通総額は2500億円以上に達する(2018年度)。矢野経済研究所の調査によれば、18年度の日本の後払い決済サービス市場は5720億円。ネットプロテクションズのサービスはその43%を占める計算で、後払い決済サービスとしてはシェア1位である。

 最大の特徴は、1%以下(17年度)という驚異的に低い未払い率(後払いサービスを利用しながら、実際に後払いをしない率)だ。これを可能にしているのが、18年度の年間取引件数約4300万件、サービス開始以来の累計件数では1億8000万件を超えるという取引データをAI(人工知能)で分析・活用する与信審査システムだ。

 今回、そのシステムを大規模アップデートという形で刷新した。これによりNP後払いでは、ユーザーの与信審査に要する時間の大幅短縮と、ユーザーに対する請求期限や請求タイミングなどの自動的な個別最適化が可能になった。

 具体的にどこをどう改善したのか見ていこう。

深層学習を利用できるように変えた

 まず、これまでAI(人工知能)を使ったデータ分析には、機械学習技術のうち決定木技術のみを利用してきたが、深層学習(ディープラーニング)を含む最先端の機械学習技術を利用できるようにした。これまで以上にAIを活用して精緻に分析できるようになったわけだ。

 また、システムのアーキテクチャーをより柔軟に構成し、様々な機能やデータベースを追加できるようにした。これにより、データの利用範囲を広げることができた。例えば、これまでは、取引データのうち一部の内容と決済情報しか利用できなかったが、今後は商品明細情報など取引にかかわるデータをフルに利用できるし、外部のデータも組み込みやすくなった。

 さらに、システム全体をクラウドサービス「AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)」の上に移設したため、ニーズの拡大に合わせて柔軟にデータベースを増やしたり、後から機能を加えたりしやすくなった。

最長2時間かかった審査が数秒以内で可能に

 これらの取り組みの結果、ユーザーの与信審査に要する時間が大幅に短縮された。これまでは、95%の審査案件で5~10分、人間が目視で対応していた5%の審査案件に関しては最長2時間という時間が与信審査に必要だった。今後はどの審査案件についても、人間を介さずにすべてシステムで対応可能になり、数秒以内というほぼリアルタイムで、与信審査を完了できる。

NP後払いの与信フローの変化。人間が目視で確かめていた詳細審査をシステムで代替できるようになったため、実質的な即時審査が可能になった(出所:ネットプロテクションズ)
NP後払いの与信フローの変化。人間が目視で確かめていた詳細審査をシステムで代替できるようになったため、実質的な即時審査が可能になった(出所:ネットプロテクションズ)
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 また、これまで「NP後払い」を導入したECサイトがユーザーに示す支払期限は、例えば毎月10日のように一律だった。今後は同じECサイトのユーザーであっても、「延長したほうがスムーズに返済していただける」とAIが判定した一部ユーザーについては、自動的に支払期限を延長することができる。延滞したユーザーに対しての督促タイミングや督促の文面も、これまでは同一時期、定型文面しか対応できなかった。今後はユーザーのこれまでの取引データを分析して、督促のタイミングや文面を、AIの判断で自動的に最適なものに変えられる。

システム刷新(アップデート)後は、取引ごとに最適化された請求が可能になる(出所:ネットプロテクションズ)
システム刷新(アップデート)後は、取引ごとに最適化された請求が可能になる(出所:ネットプロテクションズ)
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即時審査を武器に未開の市場を開拓

 今後は、与信審査に要する時間の大幅短縮と請求関連の自動的な個別最適化を武器に、「これまで、即時審査が必要でNP後払いの導入があまり進まなかった『テレビショッピング』や『家事代行』などの業界に、利用を働きかける」(ネットプロテクションズ社長CEOの柴田紳氏)。

 さらに今後、刷新したNP後払いのシステムのうち、取引データを蓄積・分析するデータベース部分を、掛け売りという商慣行に対応した「NP掛け払い」や、主にリアル店向けの会員制後払いサービス「atone(アトネ)」といった、ネットプロテクションズの他のサービスでも活用できるように共通データベース化していく。

 atoneは加盟店数こそまだ数百だが、「この数カ月、ほぼ何もプロモーションしていないのに、会員数が月6万人ずつ増えている」(柴田氏)という有望サービス。今後は、NP後払いなどを利用したユーザーがポイント付与を目当てに任意で加入する「NPポイントクラブ」の会員約250万人を、「atoneの会員に誘導し、リアル店で後払い決済できる潜在的ユーザーを増やしていく」(柴田氏)という。さらに、JCBが運営する複数のQRコード決済サービスを1つの端末で利用できるサービス「Smart Code(スマートコード)」などに対応し、利用できる店舗数の拡大にも力を入れる。

 そうしてNP後払いやatoneの積極的な普及に努め、「一定のニーズが確実に見込める後払い決済サービスの使い勝手を高め、利用する企業やユーザーに『後払い決済ならネットプロテクションズ』と選んでもらえる存在を目指す」(柴田氏)考えだ。