アミューズメント施設向けのアーケードゲームで「音楽ゲーム」という分野を開拓したKONAMIが、音楽ゲームのeスポーツプロリーグ「BEMANI PRO LEAGUE(ビーマニ プロ リーグ)」を発足させた。同社の「BEMANI」シリーズを用いた新リーグが2020年5月に開幕する。

「BEMANI PRO LEAGUE」への意気込みを語る、チェアマンを務めるコナミアミューズメント社長の沖田勝典氏
「BEMANI PRO LEAGUE」への意気込みを語る、チェアマンを務めるコナミアミューズメント社長の沖田勝典氏

「新たなエンターテインメントを創出する」

 音楽ゲームとは流れてくる音楽と画面に合わせ、タイミングよくボタンなどを操作して得点を競い合うゲームジャンルで、「リズムゲーム」とも呼ばれる。KONAMIのBEMANIシリーズは同ジャンルを開拓したと言われるヒット作の1つで、1997年にリリースされた音楽ゲーム「beatmania(ビートマニア)」に端を発する。

 2019年6月13日に開催された発表会の冒頭、同リーグのチェアマンを務めるコナミアミューズメント社長の沖田勝典氏が登壇し、リーグ発足の経緯を説明した。

 KONAMIは11年より「KONAMI Arcade Championship(KAC)」というアーケードゲームを用いたeスポーツ大会を主催している。プレーヤーとして参加するだけでなく、会場で選手を応援したり、動画を視聴したりといった幅広い楽しさを有するeスポーツというエンターテインメントに関し、同社はこの大会を通じて主催者視点で経験を重ねてきたという。沖田社長はBEMANIシリーズで音楽ゲームというジャンルを切り開いた自負をのぞかせるとともに、「この経験を生かし、音楽と競技を軸としたBEMANIならではの新しいエンターテインメントを創出し、新たな時代をけん引する取り組みを行っていければ」と新リーグに対する意気込みを述べた。

企業がチームを運営、ドラフト会議も開催

 BEMANI PRO LEAGUEの開幕は20年5月、賞金総額は2000万円を予定している。初年度は「BEMANI」シリーズ中、最も難度が高く競技性も高いと言われる「beatmania IIDX」で競うという。

 BEMANI PRO LEAGUEが他のプロリーグと大きく違うのはその運営方式だ。同リーグでは企業がチームオーナーとなり、参加する6社がそれぞれチームを運営。KONAMIはプロテストを実施し、各チームは合格した選手をドラフト会議によって獲得する。チーム編成は4人で、そのうち3人が試合に出場してシーズンを戦っていく。シーズン開幕後は全6チームが参戦するレギュラーシーズンの後、上位3チームがセミファイナルへと進出、そこから上位2チームがファイナルへ進出し、年間優勝チームが決まる。

BEMANI PRO LEAGUEへ出場するにはKONAMIが実施するプロテストに合格しなければならない。プロテストでは、書類審査や実技試験、面接などが行われる
BEMANI PRO LEAGUEへ出場するにはKONAMIが実施するプロテストに合格しなければならない。プロテストでは、書類審査や実技試験、面接などが行われる
レギュラーシーズン、セミファイナル、ファイナルと3段階で戦いが繰り広げられていく
レギュラーシーズン、セミファイナル、ファイナルと3段階で戦いが繰り広げられていく
20年1月からプロテストのエントリーが開始され、同年3月中にプロ合格者が決定。3月下旬のドラフト会議を経て各チームとのプロ契約を締結。リーグは5月に開幕
20年1月からプロテストのエントリーが開始され、同年3月中にプロ合格者が決定。3月下旬のドラフト会議を経て各チームとのプロ契約を締結。リーグは5月に開幕

 企業がプロチームを保有してリーグに挑むというのはプロ野球に近い。初年度の参加企業は、共和コーポレーション、マタハリーエンターテイメント(川崎市)、山崎屋(金沢市)、ラウンドワン、レジャラン(埼玉県三郷市)、ワイ・ケーコーポレーション(福島県会津若松市)と、各地でアミューズメント施設を運営する企業が名を連ねている。アーケードゲームを主体としたプロリーグとあって、機器が設置されるアミューズメント施設の振興も兼ねると同時に、選手たちへの報酬といったマネタイズも両立させているのがポイントだ。

 BEMANI PRO LEAGUEの会場は、現在建設中の「コナミクリエイティブセンター銀座」内に開設を予定しているeスポーツの複合施設「esports 銀座 studio」になるとのこと。新リーグの責任者を務めるコナミアミューズメント執行役員の西村宜隆氏は、「音楽とゲームが融合したハイブリッドのエンターテインメントであるBEMANIシリーズの魅力を最大限に伝え、eスポーツの発展に貢献すべく、最新の機材を取りそろえて準備を進めている」と意気込みを語る。

BEMANI PRO LEAGUEの責任者を務めるコナミアミューズメント執行役員の西村氏。プロテストの内容やリーグにおける試合の流れなどを説明した
BEMANI PRO LEAGUEの責任者を務めるコナミアミューズメント執行役員の西村氏。プロテストの内容やリーグにおける試合の流れなどを説明した

BEMANIにハマった速水もこみち

 発表会では17年よりKONAMI公認プロゲーマーとして活動するDOLCE.選手と、「青春時代は料理に負けないくらいBEMANIが大好きだった」という俳優の速水もこみちによるトークセッションも開催された。

DOLCE.選手(左)と速水もこみちによるトークセッション。好きな曲で納得のいくプレーができたときが「最もアガる」としたDOLCE.選手に対し、速水は「以前から動画などでDOLCE.選手のプレーに感動していた」と述べた
DOLCE.選手(左)と速水もこみちによるトークセッション。好きな曲で納得のいくプレーができたときが「最もアガる」としたDOLCE.選手に対し、速水は「以前から動画などでDOLCE.選手のプレーに感動していた」と述べた

 小学校から高校までアミューズメント施設でアーケードゲームを楽しんでいたという速水は、音楽を楽しみながらそれを体感するbeatmaniaの斬新さに「味わったことのない興奮」を覚え、ハマっていったとのこと。しかし速水がbeatmaniaを熱心にプレーしていたのは主に初期の作品だった。しばらくの中断期間を経て再び遊んだ際、5つから7つにボタンが増えていたことについていけず、それが悔しくて熱い思いが再燃しているそうだ。

 DOLCE.選手はbeatmaniaシリーズの魅力を、「ボタンを押して音が鳴る、音楽を直感的に楽しめる部分。演奏感が味わえる」と語った。公認プロのDOLCE.選手から見ても、今回プロリーグで採用されるbeatmania IIDXは完璧にクリアするのが難しく、一生遊べるほどの奥の深さを備えているという。

 一方、速水は「楽しみ方は人それぞれ」としたうえで、「うまい人のプレーを見るのが好き」と語った。うまい人がプレーしているとギャラリーが集まり、「自然と応援したくなる」と速水。ギャラリーも含めてみんなでゲームを楽しめるbeatmaniaのエンターテインメント性を魅力として挙げた。

最近は手首に痛みを感じ、晩ご飯が作れなくなってしまうほど「beatmania」を長時間にわたってプレーすることもあるという速水
最近は手首に痛みを感じ、晩ご飯が作れなくなってしまうほど「beatmania」を長時間にわたってプレーすることもあるという速水

新型機器登場、デモプレーに会場が沸く

 発表会ではBEMANI PRO LEAGUEで使用するbeatmaniaの新型専用機「beatmania IIDX LIGHTNING MODEL」も公開された。アミューズメント施設に置かれる音楽ゲーム機器としては最高峰となるリフレッシュレート120Hzの液晶モニターを搭載し、滑らかで高精細な譜面表示を可能にしている他、イコライジングを含めたエフェクターの設定も可能なヘッドホンジャックを標準搭載している。さらにターンテーブルの回転の重さをプレーヤーが設定できるなど、プレー環境が進化しているとのこと。

DOLCE.選手と速水によって覆っていたベールが取り払われ、姿を現した新型の「beatmania IIDX LIGHTNING MODEL」。プレー環境向上のための工夫が随所に施されている
DOLCE.選手と速水によって覆っていたベールが取り払われ、姿を現した新型の「beatmania IIDX LIGHTNING MODEL」。プレー環境向上のための工夫が随所に施されている

 DOLCE.選手と速水によるデモンストレーションプレーも披露された。1カ所だけミスをしてしまったものの、難度の高い曲をほぼ完璧にクリアして見せたDOLCE.選手の腕前には報道陣からも驚きの声が上がっていた。

 eスポーツ元年を経て、さまざまなゲームで熟練者のプレーが各種メディアで紹介される機会が増え、プロといわれるレベルに達した人のプレーがいかに超絶的かが、広く知られるようになってきた。beatmaniaに代表されるBEMANIシリーズも、プレー内容は「音楽に合わせて操作する」というシンプルなものだが、難度の高い曲で必要となる手数の多さと求められる正確性は、一般人から見ると「何をやっているのかも分からない」ほどだ。使われている楽曲のクオリティーも高く、熟練者たちがプレーする姿は速水が語るようにエンターテインメント性に満ちている。

 観客として見る楽しみも重視されるeスポーツにおいて、BEMANIシリーズはプロがその妙技を競う格好の素材といえるだろう。しかも今回はアミューズメント施設を経営する企業がチームオーナーとなって戦うというリーグ自体の構造もユニーク。eスポーツのプロリーグの運営という意味でも、KONAMIは新たな道を切り開こうとしている。

お披露目されたbeatmania IIDX LIGHTNING MODELで速水がデモプレーを披露
お披露目されたbeatmania IIDX LIGHTNING MODELで速水がデモプレーを披露
DOLCE.選手の妙技にはメディア陣からも驚きの声が聞かれた
DOLCE.選手の妙技にはメディア陣からも驚きの声が聞かれた

(写真/稲垣宗彦)

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