官民一体で仕掛けるのは安心できる空間の創出

 ところが国内の行政や自治体と同様、スノーリゾートも官僚政治的な組織の縦割り構造の影響を受ける。白馬エリアでは3市村ごとに観光課や観光協会、スキー場の管轄が分かれてしまい、白馬スキー場全体の方向を話し合おうにも機能不全を起こしてしまった。

 そこで今回、地域連携のDMOを作り上げるため、白馬バレー内のスキー場を運営する索道事業者で構成される「HAKUBAVALLEY索道事業者プロモーションボード」を核にHAKUBAVALLEY TOURISMを設立した。3市村の組織を官民共同で機能面から再編して「観光の3市村の統合」を目指す。

 宿泊施設に関しては「グレード」の問題もある。海外で人気のスノーリゾートと比較して四つ星や五つ星クラスの宿泊施設が少ないため、五つ星に泊まりたいような富裕層の選択肢に入らない。

写真左から白馬村観光局の福島洋次郎事務局長、HAKUBAVALLEY TOURISMの高梨光代表理事、長野県観光部山岳高原観光課長の塩原一正氏
写真左から白馬村観光局の福島洋次郎事務局長、HAKUBAVALLEY TOURISMの高梨光代表理事、長野県観光部山岳高原観光課長の塩原一正氏

 エリア内ではグリーンシーズンの楽しみの幅を広げると同時に、ホテル事業や国内スキー場では初となる富裕層向けサービスの拡充も進行している。18年には世界最大のホテルチェーンの米マリオット・インターナショナルが参入。他にも空き家が目立つ白馬岩岳の宿泊街の活性化を図るプロジェクトにより、江戸時代から残存する古民家を改修した「旅籠丸八」や、雑貨販売や空間プロデュースを行うハルタ(上田市)の「haluta hakuba」(19年12月下旬開業予定)などの宿泊施設がオープンした。

 近隣のゲレンデ「白馬岩岳スノーフィールド」では優先チェックインやラウンジ使用、送迎サービスが付帯するVIPプログラムを19年12月21日から開始する。「あまり大きなホテルがない、それをどう直していくか。国や県の支援をなんとか誘導していくことをHAKUBAVALLEY TOURISMでやっていきたい」と高梨氏は述べる。

 官民が一体となって取り組む施策は、旅行客や住民にとってサスティナブルなものに映る。台風19号の影響により長野県全域で施設のキャンセルや予約数の減少などの風評被害も発生する中、1泊最大5000円支援する「ふっこう割」のキャンペーンなども行いながら、豊かな自然に恵まれた地域の復興と再生に向けてプロジェクトは着々と進んでいる。

宿泊施設「旅籠丸八」の内観。和食の創作料理を楽しめるダイニングでは、窓からのぞく四季折々の自然の姿に癒やされる
宿泊施設「旅籠丸八」の内観。和食の創作料理を楽しめるダイニングでは、窓からのぞく四季折々の自然の姿に癒やされる

(写真/丹野加奈子)