不安定な“自転車操業”の解決を目指す
HAKUBAVALLEY TOURISM代表理事の高梨光氏は、白馬エリア最大の観光資源であるスキー場経営以外にも視野を広げ、通年で観光客が訪れる「オールシーズンのマウンテンリゾート化」を目標に掲げる。その実現には春から秋にかけてのグリーンシーズンの稼働率上昇と、年間を通した収益の安定が課題だ。
カナダのウィスラーが世界的に有名なマウンテンバイクパークを開場するなど、通年で観光事業の態勢を整えている海外のスノーリゾートは多い。それらに倣い、白馬でもグリーンシーズンも満喫できるグランピングを活用した宿泊施設や若年層向けの集客施設を次々新設している(関連記事「スノーピークがグランピングの最高峰ブランド 第1弾は八方尾根」、「異色の社長と著名Pが仕掛ける、標高1400mのビーチリゾート」)。
18年から19年にかけてのウィンターシーズンの訪日外国人旅行者数は36万7000人を記録し、前年度比11%の上昇となった。12年以降は年平均25%で順調に成長している。しかし月ごとの集計を見ると、特定の月に極端に偏っていることが分かる。トレッキングなどでにぎわう8月とウィンターシーズン頼みという“需要の偏り”が地域経済全体に悪影響を与えているという。
繁忙期の短期雇用を中心とした労働力に支えられているため、生産性やサービス水準の向上につながらず、定住人口も伸びないことから街の機能が充実しない。収入面が不安定なことからスキー場、宿、商業施設等の設備投資も進めにくいのだ。
特にリフトの老朽化は著しく、直近15年間は新設リフトが全くない。平均30年以上も使用されており、早急なリニューアルが求められている。老朽化や後継者不足の波は宿泊施設の減少にも波及し、スキー場利用者の減少にも直結する。このように積み重なった問題解決の鍵が、地域の観光資源の通年での有効活用というわけだ。