スマートフォンの販売台数シェアで世界第4位の中国・Xiaomi(シャオミ)が2019年12月9日、日本市場への本格参入を発表した。19年12月中にAmazonで販売を始めるのは、スマートフォンやその関連商品だけではない。炊飯器やスーツケースもそろえ、ライフスタイルブランドとしての打ち出しを鮮明にしている。

スマートフォンやIH炊飯器などで日本市場への参入を発表したシャオミのSteven Wang東アジア担当ゼネラルマネージャー
スマートフォンやIH炊飯器などで日本市場への参入を発表したシャオミのSteven Wang東アジア担当ゼネラルマネージャー

 シャオミは10年に中国で設立された新興のスマホメーカー。わずか9年で、世界の90以上の国と地域に広がり、スマホの販売台数シェアで世界第4位へと急成長を遂げた。その原動力となったのが、高いコストパフォーマンスとiPhoneを意識したブランド戦略だ。同社はハードウエア部門の純利益率を5%以上にはしないと宣言。東アジア担当ゼネラルマネージャーを務めるSteven Wang氏によると、「原価とほぼ同じ価格で提供している」という。ブランド戦略では、製品からパッケージまで一貫してシンプルなデザインを採用。スマホのトップブランドである米アップルのiPhoneにも似たコンセプトで、「かっこいいのに圧倒的に安い」というブランドイメージを確立し、インドなど新興国市場を席巻した。

 日本でもスマホ好きを中心に知名度は高く、19年9月に行われた新モデル発表会のライブ中継では、日本からの視聴数がトップ5に入るほど。日本市場参入は遅すぎたくらいといってもいいだろう。

 日本進出に際してメインに据えるのは、世界初のカメラ技術を搭載したスマホ「Mi Note 10」。画素数は最大で1億800万画素と世界一で、レンズの数も広角、2倍望遠、5倍望遠、超広角、マクロの5つとこちらも世界一となっている。価格は税別5万2800円からと、カメラ性能を売りにする競合製品と比較すると「半値」(Wang氏)という。併せて、ウエアラブルウオッチの「Miスマートバンド4」や、モバイルバッテリー「パワーバンク3」といったスマホ関連アイテムも発売する。

「Mi Note 10」は5つのレンズを搭載するのが最大の売り
「Mi Note 10」は5つのレンズを搭載するのが最大の売り

 ただWang氏は、発表会で「シャオミは単なるスマホメーカーではない」と強調。2000アイテム以上のIoT家電製品を展開していることを紹介した。これはシャオミ単体でできているのではない。280社以上のパートナー企業に投資し、「シャオミエコシステム」を構築してさまざまな商品をそろえている。そして、日本でもスマホ以外のアイテムの発売を発表した。「Mi IH炊飯器」だ。

 シャオミは旧三洋電機でヒット商品「おどり炊き」を開発した内藤毅氏を招き入れ、16年に初代のMi IH炊飯器を発売した。今回、日本に投入されるモデルにはWi-Fiが搭載されており、シャオミのIoTプラットフォームである「Mi Homeアプリ」を使い、ご飯の硬さを細かく調整したり、外出先から炊飯予約をしたりできるという。5.5合炊きモデルで税別9999円と、国内メーカーと比べてかなり安い。

1万円を切る価格のMi IH炊飯器
1万円を切る価格のMi IH炊飯器
外出先から遠隔操作できるIoT機能を売りにする
外出先から遠隔操作できるIoT機能を売りにする

 さらにWang氏は「シャオミはテクノロジーだけでなく、ライフスタイルブランドでもある」と話し、家電だけでなくスーツケースも発売することを紹介。アルミニウム製のモデルは、有名ブランド品が5~10万円するのに対して、税別1万7900円という戦略的な値付けにしたという。

欧米の有名ブランドと比較して圧倒的に安いことをアピール
欧米の有名ブランドと比較して圧倒的に安いことをアピール

ブランドイメージ定着のカギを握る単独店の展開

 日本市場参入にあたり、スマホだけでなく幅広いアイテムを取りそろえてきたシャオミ。中国では、スマートテレビに洗濯機、冷蔵庫、掃除機、小物家電に日用雑貨まで、さらに多種多様な商品がラインアップされている。今回は第1弾として、日本市場に通用しそうなものを持ってきたもよう。Wang氏は「日本は他の市場と異なり、特別なカスタム化が必要。ゆっくりとアイテムを広げていく」と今後、中国市場並みにラインアップを増加することを示唆した。

Wang氏はシャオミは単なるスマホメーカーではないことを強調していた
Wang氏はシャオミは単なるスマホメーカーではないことを強調していた

 単なるスマホメーカーではなく、ライフスタイルブランドになる。中国でシャオミが成功を収めた路線を日本でも展開するうえで、今後重要となりそうなのが販路だ。19年12月時点で、シャオミ製品が販売されるのはAmazonだけ。ただ、ネット通販でブランドイメージを高めるのには限界がある。中国では「Mi Store(小米之家)」というリアル店舗を各都市に出店し、スマホから家電、日用雑貨までを販売(参考記事「スマホメーカーからライフスタイルブランドへ変身する中国シャオミ」)。統一したブランド感を打ち出している。

上海にあるMi Store旗艦店。一見、Apple Storeのような雰囲気ながら、取り扱う商品はスマホから日用雑貨までと幅広い
上海にあるMi Store旗艦店。一見、Apple Storeのような雰囲気ながら、取り扱う商品はスマホから日用雑貨までと幅広い

 Wang氏は、リアル店舗の展開について問われると「Mi Storeはシャオミの重要な戦略の一つだが、日本でコメントできることはない」と明言を避けた。Amazonでの消費者の反応を見たうえで展開アイテム数を増やし、日本でもゆくゆくは独自のECサイト、家電量販店内でのポップアップストア、中国同様の統一したブランド感を打ち出す単独店舗などを展開する方向と見られる。仮に大手ECサイトや家電量販店での単品販売にとどまってしまえば、商品カテゴリーをまたいだブランド訴求が難しく、数ある低価格ブランドの一つとして埋没する危険性もはらんでいる。その意味で、日本でいつリアル店舗を出店するのかが、シャオミの日本での成功を測る指標になりそうだ。

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