「かなでもの」ブランドでデザイン家具のD2Cビジネスなどを手掛けるスタートアップ企業のbydesign(バイデザイン、東京・品川)が、2019年11月11日から、新たなデザイン家具付き賃貸住宅サービス「Furnished」を展開し始めた。CG技術を生かした新たな試みは、多くの入居希望者に受け入れられるだろうか。

bydesignが2019年11月11日にローンチした、新たなデザイン家具付き賃貸住宅サービス「Furnished」の新着情報画面
bydesignが2019年11月11日にローンチした、新たなデザイン家具付き賃貸住宅サービス「Furnished」の新着情報画面

 通常の家具付き賃貸住宅サービスは、実際に家具を配置した賃貸住宅を入居希望者に内覧してもらい、部屋を気に入った希望者に対して、家具付きの分だけ割高となる月額賃貸料で貸し出すというものがほとんどだ。実際に家具を当該の部屋に運び込み、入居希望者に見せる必要があった。

 これに対し、bydesignが始めたFurnishedは、入居者募集中の既存賃貸物件の室内写真などに、インテリアコーディネーターなどのプロの手を借りて、CG(コンピューターグラフィックス)でデザイン家具や観葉植物などを立体的に書き加え、魅力ある空間の画像に仕立てて、既存物件とは別の物件として入居を募るという手法を採る。「デザインされた空間を、気に入った利用者にそのまま賃貸してもらう」(bydesignの音田康一郎社長)のが狙いだ。

 「現在のCG技術は、家具を配置した部屋を、実際に撮影した写真と遜色ないレベルの画像として制作できる」(音田氏)。そのリアルな物件情報を見て気に入った入居希望者がいた場合に、初めてbydesignが実際にデザイン家具を調達して当該の部屋に運び込み、内覧してもらう。契約に至った場合、入居希望者は、賃貸物件は不動産オーナーと、デザイン家具などはbydesignと、個別に賃貸契約する。家具などの月額賃貸料がbydesignの主な収益源となる。入居者から見れば、家具などを配置する分、合計賃貸料が割高になるのは、従来の家具付き賃貸住宅サービスと同じだ。

 従来のやり方と異なるのは、デザイン家具などを実際に部屋に配置せず、リアルなCGで表現するところ。自社内にCG制作を指揮するディレクターを置き、実際の制作は海外のCG制作者やプロダクションに発注する。加えて、「家具メーカーのカタログやECサイトなど、家具を配置した部屋の写真を多用するメディアなどに対して、CGで制作した空間を売り込み、対価を得ることで、トータルの制作コストを引き下げる」(音田氏)。そうしてCG制作の初期コストを抑えてリスクを低下させ、早期に多くの物件を手掛けることを狙う。「今後は毎月30件追加をめどに、できるだけ早い時期に1000~2000の物件数を市場に出していく」(音田氏)計画だ。

左が“素”の賃貸物件情報。右がCGで魅力ある空間に加工した新しい賃貸物件情報
左が“素”の賃貸物件情報。右がCGで魅力ある空間に加工した新しい賃貸物件情報

指定不動産流通機構から物件情報を選択

 肝心の賃貸物件情報については、国土交通大臣が指定した不動産流通機構(通称:レインズ)のシステム上に流通している情報の中から、魅力ある空間に改変できそうな物件を選んだり、賃貸不動産のオーナーから直接情報を得たりして、仕入れる。

 日本では、不動産会社が専任媒介契約などによってオーナーから物件を預かった場合、対象となる賃貸物件や売却物件の情報をレインズに登録する。登録された情報は他のすべての不動産会社に提供され、最適な買い主を探す手助けになるという仕組みだ。

 レインズから選んでbydesignがCG加工した物件情報に借り手がついた場合、実際に家具を運び込んだり、部屋を改変したりする必要があるが、入居者が解約・退去するときにbydesignの負担で原状回復するという。このため「賃貸物件のオーナーに事前には相談しない」(音田氏)方針だ。ただし、家具を配置していない“素”の賃貸物件情報はそのまま市場に流通しているので、こちらに先に入居希望者が決まった場合は、bydesignの物件を取り下げることになる。

「suumo」などにも物件情報を掲載

 まずは自社で展開するかなでものブランドの家具販売や、観葉植物のECサイト「Botanism(ボタニズム)」を利用したユーザーにアプローチ。リクルート住まいカンパニーが運営する不動産情報サイト「suumo(スーモ)」などにも物件情報を掲載する。実際に入居者が決まれば、「入居者のSNSなどを通しての拡散も期待できる」(音田氏)という。

 さらにbydesignでは、企業などとタイアップした空間を物件情報として流通させ、認知度向上を図る計画だ。例えば、靴メーカーとタイアップし、「スニーカーマニアの部屋」をつくったり、トレーニング器具メーカーとタイアップして「パーソナルトレーニングの部屋」をつくったりすることを検討している。

家具賃貸料の値決めが普及の鍵

 実はbydesignは2019年7月から「Moover(ムーバー)」というブランドで、別のデザイン家具付き賃貸住宅サービスを展開していた。こちらは、入居希望者がMoover のWebサイトから賃貸物件を申し込むと、部屋の賃料はそのままで、インテリアのエキスパートがコーディネートした有名ブランドのハイグレード家具が、一式すべて無料で提供されるというもの。ただし、入居者はデポジット(保証金)として、家具代に相当する金額、例えば50万円をいったん納める必要があった(賃貸物件退去時には無利子で返却)。

 ところが、このやり方では、「デポジットを用意できない入居希望者には手が届かないし、私たちも入居希望者を不動産会社に紹介する仲介手数料しか収入源がない」(音田氏)。そこで、入居希望者のニーズを満たしながら、bydesignのビジネスモデルも改善するため、一気に衣替えしたのがFurnishedなのだ。

 この新サービスが多くの入居希望者に受け入れられるかは、物件ごとに設定する家具などの賃貸料に対して、納得感を得られるかどうかに懸かっている。そしてその相場観は、「仮説を立て、試行錯誤しながら検証することで、探っていくことになる」(音田氏)。

 サービス開始後、新着物件は今のところ10件程度でとどまっているが、「既に複数の問い合わせが入り、内見および契約を希望するユーザーも出始めた」(bydesign広報担当の木村冬綺氏)という。相場観の形成が順調に進めば、bydesignの新たな取り組みが、自分好みの空間での暮らしを希望するユーザーに受け入れられ、デザイン家具付き賃貸住宅サービスの新たなスタンダードになるかもしれない。

bydesignの音田康一郎社長
bydesignの音田康一郎社長

(写真/志田彩香)

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