東京・渋谷駅西口に2019年12月5日、複合商業施設「東急プラザ渋谷」が開業した。近隣住民と40代以上を狙う戦略で集められたテナントの詳細を紹介する。

「東急プラザ渋谷」は複合商業施設「渋谷フクラス」の商業施設ゾーンという位置付け
「東急プラザ渋谷」は複合商業施設「渋谷フクラス」の商業施設ゾーンという位置付け

ターゲットは40代以上の男女と近隣住民

 東急プラザ渋谷は1965年から2015年まで約50年にわたって営業。再開発のため閉店し、同地に建て替えられた複合商業施設「渋谷フクラス」の商業施設ゾーンという位置付けで再び開業した。施設の2~8階と、17、18階に全69店舗を構え、年間500万~600万人の来店を目指す。

「渋谷フクラス」は渋谷駅西口バスターミナルの目の前という好立地
「渋谷フクラス」は渋谷駅西口バスターミナルの目の前という好立地

 ターゲットは40代以上の男女と、閉店前の顧客だった近隣住民(関連記事「12月開業『東急プラザ渋谷』 訪日客より“近隣住民”に期待」)。そのため19年11月1日に開業した渋谷駅直結の複合商業施設「渋谷スクランブルスクエア」に比べ、テナントは落ち着いたテイストのブランドが並んでいる(関連記事「渋谷の新名所『スクランブルスクエア』詳報 来場者100万人目指す」)。

 施設の2~4階は物販フロアとなっている。刃物やライフスタイル雑貨を扱う「日本橋木屋」や絞り染めのファッション小物などを手掛ける「片山文三郎商店」など、日本橋や京都、銀座に店舗を構える雑貨店が入居。他にも補聴器の専門店「東京ヒアリングケアセンター」や老眼鏡やサングラスを扱う「ペーパーグラス東京」、漢方の調剤を行う「NIHONDO KAMPO BOUTIQUE(ニホンドウ漢方ブティック)」など、中高年以上をターゲットにした店が目立つ。

「ニホンドウ漢方ブティック」には中医師や薬剤師が常駐し、漢方診断などを行う
「ニホンドウ漢方ブティック」には中医師や薬剤師が常駐し、漢方診断などを行う
アロマオイルや雑貨を扱う「アットアロマ」
アロマオイルや雑貨を扱う「アットアロマ」
自然光を生かした明るい内装。フロアは広々としていて、ゆったり買い物ができる
自然光を生かした明るい内装。フロアは広々としていて、ゆったり買い物ができる

 同施設の長尾康宏総支配人が「目玉となるフロア」と話す5階の「シブヤライフラウンジ」は、信託銀行や不用品買い取りサービス、葬祭を取り扱う企業の新業態など「終活」を意識した店舗がそろう。

冠婚葬祭サービス業のメモリードの新業態「ライフストーリーズサロン」は5階に入る。50~80代のアクティブシニアを対象に、家系図や自分史の作成、生前整理などの相談に乗る
冠婚葬祭サービス業のメモリードの新業態「ライフストーリーズサロン」は5階に入る。50~80代のアクティブシニアを対象に、家系図や自分史の作成、生前整理などの相談に乗る
「アトリエ・クチュリエール」では洋服やバッグのオーダーやリメイクを行う
「アトリエ・クチュリエール」では洋服やバッグのオーダーやリメイクを行う

 フロアの中心にはソフトバンクロボティクスによる初の飲食店「Pepper PARLOR(ペッパー パーラー)」。その名の通り、同社が開発したロボット「Pepper(ペッパー)」をはじめとした最新のロボットが接客を手掛けるカフェだ。ロボットによる接客を目当てに若年層や訪日客などの来店も予想される。落ち着いた内装の店内を陽気に動き回るロボットたちは、終活フロアでひときわ異彩を放っていた。

5階フロア中央の「ペッパー パーラー」
5階フロア中央の「ペッパー パーラー」

無料の屋上テラスと和食店の充実度に注目

 注目は17階だ。フロアの約半分を屋上テラス「SHIBU NIWA(シブニワ)」として無料で開放している。向かい側の渋谷スクランブルスクエアには有料展望施設「SHIBUYA SKY(シブヤ スカイ)」があり、360度のパノラマビューを売りにしている。それに比べると、シブニワは同じ階にシェアオフィスと飲食店「BAO by CÉ LA VI(バオ バイ セラヴィ)」「CÉ LA VI CLUB LOUNGE(セラヴィ クラブラウンジ)」が入っているため、見渡せる範囲が限られている。だが、17階という高すぎない場所にあるため、スクランブル交差点の様子をはっきり見られる。予約不要な手軽さもあって、多くの観光客の来訪が期待できる。

17階の屋上テラス「シブニワ」
17階の屋上テラス「シブニワ」
シブニワからの眺望
シブニワからの眺望
17、18階にはシンガポールのリゾートホテル「マリーナベイ・サンズ」の最上階にあるレストラン「セラヴィ」が入る
17、18階にはシンガポールのリゾートホテル「マリーナベイ・サンズ」の最上階にあるレストラン「セラヴィ」が入る

 19年9月開催の会見で、同施設を運営する東急不動産の岡田正志副社長は「インバウンドの比率はさほど高くならないだろう」と話していた。確かに物販だけを見ると生活に密着した店やシニア層が好みそうなブランドが多い。しかし、うなぎやとんかつ、寿司やそばなど和食の店が充実しているのは、訪日客にとっては魅力的に映るだろう。特に6~7階の飲食店は、全17店のうち半分以上が和食の店だ。予約不要で入れる無料の屋上テラスと日本の食事が楽しめるレストランがそろっているのは大きな強み。渋谷の穴場施設として人気を集める可能性が高い。

6階の飲食店フロアは落ち着いた雰囲気
6階の飲食店フロアは落ち着いた雰囲気

(写真提供/東急プラザ渋谷)

1
この記事をいいね!する