ニコンイメージングジャパンは2019年12月13日、双眼鏡のエントリーモデル「ACULON T02 8x21」「同10x21」を発売した。狙いはずばりライブ需要。そこで効くのが“推し”カラーだ。本体色を決めるにあたり、担当者が日本のアイドルグループ史を遡り、メンバーのイメージカラーを調べたほどの力の入れようだ。

ニコンが発売した双眼鏡のエントリーモデル「ACULON T02」シリーズ。倍率10倍の「ACULON T02 10x21」はブラック1色、同8倍の「ACULON T02 8x21」は6色で展開
ニコンが発売した双眼鏡のエントリーモデル「ACULON T02」シリーズ。倍率10倍の「ACULON T02 10x21」はブラック1色、同8倍の「ACULON T02 8x21」は6色で展開
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 双眼鏡は、地味ながらも着実に伸びている市場だ。ニコンイメージングジャパン マーケティング企画部の佐藤忠志氏は「10年ほど前から毎年微増が続いている。大きな変化はなくても、ニーズは継続している状態」と話す。

ライブ会場近くの量販店で売れる

 けん引しているのが、コンサートや観劇などのライブ需要だ。宝塚歌劇や歌舞伎の劇場では昔からオペラグラスや双眼鏡の貸し出しが一般的だったが、近年はコンサートやアニメなどを舞台化した2.5次元ミュージカルの会場でも自前の双眼鏡を持参する人をよく見るようになった。

「ACULON T02」シリーズのパッケージはライブをイメージ。同時に発売する「Sportstar Zoom」シリーズのスポーツ観戦をイメージしたパッケージと比較するとターゲットが際立つ
「ACULON T02」シリーズのパッケージはライブをイメージ。同時に発売する「Sportstar Zoom」シリーズのスポーツ観戦をイメージしたパッケージと比較するとターゲットが際立つ
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 こうした需要が目立ってきたのは2~3年前から。「ちょうど“コト消費”という言葉が一般化してきた頃だった」と、望遠鏡や双眼鏡の開発、製造、販売を手掛けるニコンビジョンのマーケティング部マーケティング一課の高井良彦氏は振り返る。「会場近くの家電量販店では、イベントに合わせて双眼鏡が売れるという話を聞くようになった。近隣のライブ会場でイベントをするアーティストを事前に店頭で告知したり、会場マップとステージまでの距離を示した図を用意したりして、販売を強化する店舗もある」と言う。

 こうした動きにメーカー各社も対応。新商品のトレンドの一つになったのが防振機能だ。光学機器メーカーのビクセン(埼玉県所沢市)やケンコー・トキナー(東京・中野)、キヤノンなどは、女性のバッグにも入る小型・軽量ボディーでありながら、倍率は8~10倍のコンパクトモデルを拡充。倍率を上げても見づらくならないよう、手ぶれを抑える防振機能を搭載している。

 ただ、これらの製品は高機能な分、5万~7万円代と高い。高井氏は「ライブなどで隣の客が双眼鏡を使っているのを見て『自分も欲しい』と思ったものの、いきなり高いモデルを買うのは抵抗があるという人は多いはず。まずは手軽なエントリーモデルを手に取って良さを実感してもらい、上位のモデルに関心を広げていく戦略を選んだ」と話す。

定番の赤、実は多いパープル

 こうして発売したのが、ACULON T02シリーズだ。初心者でもさまざまなシーンで使いやすい8倍を中心にラインアップ。実売価格は8倍のACULON T02 8x21で6500円(税別)、10倍の同10x21で7500円(税別)と抑えた。

 エントリーモデルは機能が限られるため、他社製品と差異化しにくい。そこで目を付けたのがカラーバリエーションだ。従来モデルではブラックやホワイトのほかピンク、イエロー、迷彩柄を用意していたが、新モデルのACULON T02シリーズでは、ブラック、ホワイト、レッド、ブルー、グリーン、イエロー、パープルの7色をそろえた。

 カラーバリエーションを選ぶ過程で、高井氏は直近から1980年代まで遡り、人気アイドルグループのメンバーのイメージカラーを調べたという。「多いのはやはり赤。戦隊モノなどにも通じるリーダーの色ですね」(高井氏)。パープルがあるのは、まさにアイドルならでは。嵐なら松本潤、ももいろクローバーZなら高城れになど、紫をイメージカラーにするアイドルは多い。

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 また、スポーツでも色がチームやクラブを象徴する。例えばJリーグの場合、鹿島アントラーズは赤、FC東京は青と赤、サンフレッチェ広島は紫といった具合だ。

 佐藤氏は「以前は名前や写真などが入ったグッズで誰のファンかをアピールすることが多かったが、最近はイメージカラーを取り入れてさりげなく表現する人が増えている」と指摘。「数ある双眼鏡から1つを選ぶとき、“推し”のカラーが背中を押してくれれば」(高井氏)と狙いを語った。

ニコンイメージングジャパン マーケティング企画部の佐藤忠志氏(左)とニコンビジョン マーケティング部マーケティング一課の高井良彦氏(右)
ニコンイメージングジャパン マーケティング企画部の佐藤忠志氏(左)とニコンビジョン マーケティング部マーケティング一課の高井良彦氏(右)
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 ニコンの主力製品は昔も今も変わらずカメラだ。だが、近年はそのカメラの売り上げが下がっている。2020年3月期の第2四半期決算報告によると、カメラを中心とした映像事業の20年3月期営業利益は前年より320億円減って100億円の赤字。結果として、同社利益における双眼鏡の構成比率が上がってきた形だ。「20年は(東京オリンピック・パラリンピックなどの)大型のスポーツイベントもある。双眼鏡市場のさらなる伸びに期待している」(佐藤氏)。

(写真/平野亜矢)

■変更履歴
佐藤氏のコメントの一部を修正しました。お詫びして訂正します。[2019/12/13 16:30]