米インテル子会社で、自動車向けの先進運転支援システム大手のモービルアイ(イスラエル)は、2022年から自動運転車両を使ったロボタクシー事業の世界展開を始める計画を発表した。日本法人の川原昌太郎代表取締役は、日本でのロボタクシー展開にも意欲を示した。

モービルアイの自動運転テスト車両
モービルアイの自動運転テスト車両

 モービルアイは、先進運転支援システム(ADAS)や自動運転車両向けのカメラ画像解析チップ「EyeQ(アイキュー)」が主力製品。すでにEyeQは累計出荷数が世界で5000万個を超えており、完成車メーカー27社の約300車種で採用されているほどだ。例えば日本のメーカーでは、日産自動車が2019年9月に発売した新型スカイラインのハイブリッドモデルに標準搭載された、高速道路での手放し運転を可能とするシステム「プロパイロット2.0」で、モービルアイの技術が活用されている。

モービルアイの最新世代チップ「EyeQ5」
モービルアイの最新世代チップ「EyeQ5」

 同社は、こうしたADASの採用実績を生かし、搭載車からのデータをクラウドにため、高精度地図(HDマップ)の自動生成を世界規模で進めている。一般的にHDマップは専用の計測車両を用い、複数の外部データで不足情報を補完する必要があるなど、「高コストでカバー範囲が限定的。そして年間平均で約10%の道路が更新されている中で、マップの更新頻度に制限がある」(モービルアイ・ジャパン代表取締役の川原昌太郎氏)という。

 それに対してモービルアイのシステムでは、ADASに使われる車載カメラから得られるデータでHDマップの作製が可能。クラウド側に画像をそのまま送るのではなく、交通標識や路肩、車線といった必要なインフラデータのみアップロードする仕組みなので、1キロメートル当たり10キロバイトと非常にデータが軽いのが特徴だ。日本全土の高速道路など約2万5000キロメートルでも、300メガバイト足らずで済む計算。すでにモービルアイは日本の高速道路のHDマップを保有しており、2020年3月までに欧州全域、20年末までに米国の大部分のデータ化が完了する予定だという。作製したHDマップは、将来の自動運転車両で必要となるだけではなく、道路や電柱などの資産管理や、交通流量、駐車状況といった都市計画に関わる分野で活用できる。

ロボタクシーで世界を席巻?

 こうしたベースを持つ中で、モービルアイが最終的に目指すのは個人向けの自動運転車両が普及する世界。しかし、これには車両コストの大幅な低減や法制度の整備など、高いハードルがある。そこで、その前段階として集中投資するのが、自動運転車両を使ったロボタクシー事業だ。既存のタクシーでは運転手の人件費がコストの7割を占めるといわれており、これを無人の自動運転サービスに置き換えればコスト面でメリットを出せるという目論見だ。この人件費やドライバー確保のコスト問題は、米ウーバー・テクノロジーズや米リフトが展開するライドヘイリング(送迎配車)サービスでも同様のシナリオが成り立つ。モービルアイ親会社のインテルは第三者機関のデータを基に、ロボタクシーの市場規模の最大値を2030年までに世界で1600億ドル(約17兆4000億円)と見込んでいるという。

 ロボタクシーの実現に向けてモービルアイは、すでにイスラエルで自動運転車両のテストドライブを行っている。イスラエルの道路環境は、日本のように車線がしっかり引かれておらず、横断歩道を使わない歩行者も多いなど、「自動運転車にとっては過酷な状況」(川原氏)という。だが、同社のシステムを搭載した自動運転車両は、信号のない交差点での右左折も問題なくこなすなど、かなり成熟しているようだ。

自動運転のテストを着実に進めている
自動運転のテストを着実に進めている

 そのイスラエルでは、独フォルクスワーゲン、チャンピオンモーターズ(現地の輸入車ディーラー)と組み、2022年までに運転手のいないライドヘイリングサービスを展開する計画(Pintaプロジェクト)が進んでいる。同じ時間軸で、フランスではパリ交通公団(RATPグループ)と協業してロボタクシーを展開する予定。また中国では「中国テスラ」といわれる高級電気自動車(EV)メーカーの上海蔚来汽車(NIO)と組み、ロボタクシーや個人向けの専用車両を開発、量産していく。そして23年には、米国でもロボタクシーの事業化に乗り出す計画だ。

モービルアイ・ジャパンの川原昌太郎氏
モービルアイ・ジャパンの川原昌太郎氏

 こうしてロボタクシーの世界展開を進める中で、日本市場について川原氏は、23~24年にも参入する可能性を示唆した。また、パートナーとしては交通事業者の他、自動車メーカーと組むこともあり得るという。自動運転タクシーをめぐって国内では、名古屋大学発のティアフォーやJapanTaxi、損害保険ジャパン日本興亜、KDDIなど5社が組み、20年夏をめどに共同開発した車両を使って東京都内でサービスの実証実験を行い、22年以降の事業化を目指している。この他にも複数のプレーヤーがひしめく激戦区だが、“世界基準”のモービルアイがもたらすインパクトは大きいだろう。

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