Instagram(インスタグラム)は「いいね!」数を表示しないテストを行っている。SNSでは重要指標のいいね!数だが、それを失うことになる。2019年のInstagram Dayでは「発見タブ」への広告表示も発表。Instagramの今後と、その活用法について考察する。

2019年10月29日に行われた「Instagram Day Tokyo 2019」
2019年10月29日に行われた「Instagram Day Tokyo 2019」

「いいね!」数の非表示にユーザーは「変化なし」

 Instagramが「いいね!」数を非表示にするテストを開始した。2019年4月からカナダで非表示にし、その後、アイルランド、イタリア、日本、ブラジル、オーストラリア、ニュージーランドでいいね!数を非表示にしている。現在日本では「〇〇がいいね!しました」をタップすると、いいね!をしているユーザー名は見えるがその総数は明示されていない。合計が確認できるのは投稿主だけだ。

 19年10月29日に行われた広告主・マーケター向けのイベント「Instagram Day Tokyo 2019」において、Instagram製造部門責任者のヴィシャル・シャー氏はこのテストについて触れ、「いいね!数を非表示にすることにより、コンテンツに注目されるようになり、安全なコミュニティーが保たれる」と語った。なおFacebookでも一部の地域でいいね!数を非表示にするテストが行われている。

 いいね!欲しさに立ち入り禁止区域で撮影したり、過激な投稿を繰り返したりするユーザーが増えているため、Instagramは安全、かつ楽しめるプラットフォーム作りへの取り組みの一環として、いいね!数非表示のテストをしているわけだ。

「“私の”Instagramを楽しんでほしい」と語るヴィシャル・シャー氏
「“私の”Instagramを楽しんでほしい」と語るヴィシャル・シャー氏

 SNSマーケティングではいいね!や「フォロワー」の数が分かりやすい指標とされてきた。いいね!数の多い投稿を研究し、フォロワー数の多いアカウントを目指している企業は少なくないだろう。実際にはインプレッションやリーチの数が重要になるわけだが、他のアカウント動向を簡単に観察できるいいね!が非表示となるのは痛手ともいえる。

 では、Instagramのユーザーはこのテストをどう捉えているのだろうか。ジャストシステムが実施した「モバイル&ソーシャルメディア月次定点調査(19年8月度)」によると、「特に変化はない」と答えた人54.1%、「『いいね!』しやすくなった」と答えた人は27.5%、「投稿の内容をより楽しめるようになった」と答えた人は23.9%だった(複数回答あり)。この結果を見ると、いいね!数の非表示が、全体として否定的に受け止められているわけではなさそうだ。

 ユーザーの気持ちをより詳しく見るために、アプリ調査のテスティー(東京・中央)が運営する「それちょう」が10~20代女性に行った調査結果を見てみよう。

 それちょうでは自由回答で感想を募っている。そこには「いいね!数に執着する人が少なくなっていいとは思う(17歳女性)」「あまり気にならない。あってもなくても変わらない(16歳女性)」「友人や自分のが見られないのは構わないが、インフルエンサーたちの投稿やコスメブランドの投稿の『いいね!』やコメントは、信頼度を表していた。なので今はなくて困っている。戻してほしい(18歳女性)」といったコメントが寄せられている。若い世代でも賛否両論あるが、気になるのは最後のコメントで、「いいね!をインフルエンサー選びの指標としていた」ことだ。

 インフルエンサーとして多数のフォロワーを持ち、自身の影響力を使ってPR案件などを行っている人たちはどう感じているのだろうか。同じくInstagram Dayに登壇したモテクリエイターゆうこす(菅本裕子)氏は、「投稿が保存された数とコメントを確認する。いいね!は写真がうまく撮れたかどうかの参考にする程度」と話す。また「自分がタグ付けされた数」も指標にしているという(関連記事「ゆうこすの目指せプロフェッショナル」)。

Instagramライブを放送しながら登場したゆうこす(菅本裕子)氏
Instagramライブを放送しながら登場したゆうこす(菅本裕子)氏

 最近の若い女性は、ググらずにハッシュタグを使って検索する(関連記事「今どきの“ググらない”若い女性の情報収集と購買行動」)。これについてInstagram Dayでは、「ググるからタグる」に変化したという電通メディアイノベーションラボ主任研究員の天野彬氏の言葉を引用して紹介していた。Instagramで拡散するためには、いいね!よりもハッシュタグを投稿に付けられて「タグられる」ことが重要となる。

 ユーザー、そしてインフルエンサーからもいいね!数の表示は特に必要ではないとの意見がある中で、Instagramのテストは成功しているといえる。このままいいね!の非表示が実装されるかは未定だが、おそらく方向性を変えることはないだろう。

発見タブ活用のカギは「タグ映え」にあり

 ユーザーがInstagramで情報を得たい場合、投稿に付けられたハッシュタグをタップし、同じハッシュタグが付けられている投稿の一覧を見る。この「発見タブ」画面で「いかに目立つかがポイントだ」とゆうこす氏は語り、それを「タグ映え」と呼んでいた。

 検索ボタン(画面下にある虫眼鏡アイコン)をタップすると表示される画面も「発見タブ」で、こちらも重要な役割を果たしている。ユーザーの発見タブにはInstagramがAI(人工知能)判定したお薦めの投稿が並んでいる。Facebookの公式ブログ(Facebook Artificial Intelligence)によると、そのユーザーがいいね!やフォロー、保存した投稿などから興味のあるアカウントを判定する。さらにメディアのタイプも総合して判断し、ユーザーが興味を持ちそうな投稿を抽出して、興味があると思われるランキングの上位から表示しているという。

 発見タブの1画面には動画や静止画などが約10投稿表示される。そこにはユーザーがフォローしていないアカウントも含まれており、ここでユーザーの目を引けるかどうかが重要なポイントとなる。Instagramはこの発見タブ内に広告を表示する考えだ。発見タブ内の広告は、タップするとフィード広告、または動画広告が表示される仕組みとなっている。ユーザーの投稿と同様の形式で表示されるため、彼らの目を引くことができればかなりの効果が期待できそうだ。

発見タブ広告の仕組み(Instagram Business ウェブサイトより)
発見タブ広告の仕組み(Instagram Business ウェブサイトより)

 Instagram Dayに登壇したフェイスブック ジャパン執行役員本部長の鈴木大海氏は、キーワードでなくビジュアルでサーチできるため「『こういう感じのネイル』というあやふやな要望でも結果を示せる」と語る。今や若年女性層はファッション、グルメ、レジャースポットもInstagramで検索する。そのメリットは結果がビジュアルで表示され一目で判断できるだけではない。投稿にはユーザーが複数のハッシュタグを付ける。例えば「#秋ネイル」でたどり着いた閲覧者が、投稿に付いていた「#ニュアンスネイル」をタップして新たな発見をする可能性がある。さらにビジュアルはテキストと違って解釈の幅が広いため、ユーザーの「何だろう?」がタップというアクションにつながりやすい。こうした新しい情報との出合いも、Instagram検索が若い層に受け入れられている理由だろう。

 気になった投稿を「保存」機能ですぐに見られるようにしている点も若いユーザーの特徴だ。鈴木氏によると、若年層の85%は投稿の保存を含めた何かしらの行動をとっているという。「保存済み」画面を見れば、お気に入りの投稿をビジュアルの一覧で振り返ることができる。ネイルサロンで画面を見せてオーダーしたり、オンラインショップで似た色のマニキュアを探して購入したりと、Instagramに自分仕様のオリジナルカタログを持っている状態になるわけだ。

発見タブは若年層によく使われていると語る鈴木大海氏
発見タブは若年層によく使われていると語る鈴木大海氏

 現在Instagramで公式アカウントをフォローしているユーザーは80%に上る。発見タブで興味を持ち、公式アカウントの投稿やストーリーズで商品やサービスと出合うことも十分考えられる。いいね!数へのこだわりは捨て、「タグ映え」に注力していくことがInstagramマーケティングのカギとなりそうだ。

(写真/鈴木朋子)

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