フィリップス・ジャパンとモネ・テクノロジーズは、長野県伊那市と連携し、オンライン診療などが可能な専用車「ヘルスケアモビリティ」を活用した実証実験を2019年12月12日から始める。その中身とは?

専用改造を施したヘルスケアモビリティ。写真左がフィリップス・ジャパンの堤浩幸社長、右がモネ・テクノロジーズの宮川潤一社長
専用改造を施したヘルスケアモビリティ。写真左がフィリップス・ジャパンの堤浩幸社長、右がモネ・テクノロジーズの宮川潤一社長

 ソフトバンクとトヨタ自動車が設立したモネ・テクノロジーズは、2019年3月から本格始動しており、全国の400余りの自治体との間でオンデマンドの乗り合いサービスの導入などで連携する計画が進む。そして、モビリティサービスを起点とした異業種連携を促進する組織「MONETコンソーシアム」も運営しており、19年10月末時点で420社が参加する国内最大の“企業連合”を誇る。

 フィリップス・ジャパンもMONETコンソーシアムに参加しており、同社は19年4月にヘルスケアモビリティ構想(関連記事「フィリップスも参戦 『医療・介護MaaS』 答えは群馬にあり」)を発表。それから約半年、11月26日に開催されたフィリップス・ジャパンの戦略発表会で、長野県伊那市を舞台にした実証実験の内容が明らかになった。

 12月12日から2021年3月まで行われる実証実験では、トヨタのハイエースをベースにした専用車を活用する。後席空間を大胆に改造した車両で、オンライン診療に用いるディスプレーや簡易ベッド、血圧・血糖値測定器、自動体外式除細動器(AED)などに加え、車椅子のリフトも備える。当初は1台で運用を始める計画だ。

スライドドアや乗降ステップを備える。オンライン診療に使うディスプレーもある
スライドドアや乗降ステップを備える。オンライン診療に使うディスプレーもある
車椅子の乗降にも対応
車椅子の乗降にも対応

将来は移動型の調剤薬局もできる!?

 実証実験では、この専用車に看護師と運転手が乗り、患者の自宅を訪問。車両内のディスプレーを通じて地元の開業医がオンライン診療を行い、医師の指示に従って看護師が必要な検査などをする。これまで医師が行っていた訪問診療をオンラインで置き換えて効率化しつつ、患者にとってもクリニックまで移動する手間を省ける。

 サービスの流れとしては、患者が病院に診察予約を入れると、病院スタッフがヘルスケアモビリティを手配する仕組み。実証実験はトヨタ・モビリティ基金の助成を受けて行われ、患者は無料でサービスを受けられる。期間中、医師や看護師といった医療従事者間で患者の情報や訪問記録などを共有するクラウドサービスの運用や、薬剤師がオンライン上で患者に服薬指導をすることも計画している。後者に関しては、11月27日に改正医薬品医療機器法(薬機法)が参議院で可決され、1年以内に施行される見込みであり、それを待って導入する。

 そして、実証実験の終了後、21年4月以降は、提供エリアの多様化、幅広い診療領域のカバー、得られたヘルスケアデータを健康に暮らせるまちづくりのために利活用することなどを検討するという。

 舞台となる伊那市は、人口約7万人に対して東京23区より広い面積(667.93平方キロメートル)を持つ。他の多くの地方都市と同じく、地域住民の高齢化の進展や、それに伴う外出困難者の増加、加えて医療施設、医師不足が課題となっている。そんな中で、ヘルスケアモビリティによるオンライン診療の有効性を検証していく。

 フィリップス・ジャパンの堤浩幸社長は、「モビリティを活用することで、これまで画一化、固定化されてきたヘルスケアサービスを、動的にかつ最適配置できるように変えていく。法的な運用ルールの整備を進めてマネタイズの方法も23年をめどに確立していきたい」と言う。また、モネ・テクノロジーズの宮川潤一社長兼CEO(最高経営責任者)は、「自動運転時代を見据えると、車中でできることは今後増えていく。移動型クリニック、移動型調剤薬局などもいずれ実現し、地方の課題解決につなげていきたい」と話した。

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