プロモーションに女性社員の感性を生かす

 キヤノンのホームページとしては、iNSPiCの専用サイトは異色である。製品や性能をあまりプロモーションしていないのだ。オンラインショップに商品情報はあるものの、大きく取り上げられているのは活用事例などだ。

 「一般的なプリンターは画素数や印刷速度などをアピールするが、そういうことはほとんどしていない。iNSPiCのユーザーは性能よりも『これを使って何ができるか』『どういう価値があるか』という部分が知りたいはず」と濱田氏は話す。

 またSNSでも使い方の提案に力を入れていると吉武氏は補足する。「『#inspic使ってみた』というハッシュタグを作って、ユーザーの投稿を集めている。検索されたときにクオリティーの高いものがヒットするようにキヤノン自身も発信している」

iNSPiCのホームページの一部。製品の性能を前面に出さず、シーンの提案を優先している
iNSPiCのホームページの一部。製品の性能を前面に出さず、シーンの提案を優先している

 こういった女性に刺さるプロモーションの裏には「ichikaraプロジェクト」と呼ばれる女性社員によるチームの存在があった。

 「(チームは)入社1~2年目の社員も含めた、部門や組織を横断した20人の女性社員で構成されている。自分がターゲットとなったときに、どういうものが刺さるか、購買行動はどうか、展示台はどういうものがいいか、SNSにはどうアップするかなど、商品に近い立場としてディスカッションをしてプランを組んだ」(吉武氏)

 女性の視点で考えたからこそ、スペック重視ではないプロモーションがはまったのだろう。

Instagramで人気の撮影方法「フォトインフォト」が簡単にできるのもその場で印刷できるからこそ
Instagramで人気の撮影方法「フォトインフォト」が簡単にできるのもその場で印刷できるからこそ

ニーズに寄り添い、親しみやすいブランドに

 iNSPiCのブランド戦略について吉武氏は「iNSPiCのような商品は、若い世代にとって“初めて手にするプリンター”になり得る。彼らが後にプリンターを買うときには、キヤノンが親しみのあるブランドになっているはず」と語った。

 おもちゃのような感覚でiNSPiCを使ってもらい、若い世代に「プリントするっていいな」と思ってもらう。それがブランドイメージにつながるというわけだ。

 一方で濱田氏は、カメラ・プリンター市場が縮小傾向にあることに対し「市場のニーズがなくなってきていると考えがちだが、実はそうではない」と話す。「今のお客様に合った提案ができていれば需要はあるし、写真をもっと楽しんでもらうことができる」

 iNSPiCでは、他社製の印刷用紙を採用し、若い女性の意見を取り入れた新たな手法でプロモーションを展開した。そうした柔軟な施策を採ったことが功を奏したと言えそうだ。

ZV-123には自撮りミラーが付いている。iNSPiCは、こうした細かいアイデアと工夫が光る商品でもある
ZV-123には自撮りミラーが付いている。iNSPiCは、こうした細かいアイデアと工夫が光る商品でもある

(写真提供/キヤノンマーケティングジャパン)