無料で音楽が聴ける無許諾音楽アプリを利用するきっかけは、66%が友だちや家族が利用していたから――そんな調査結果をLINEリサーチが公開した。音楽視聴はCD中心からネットを通じた視聴に移行しているが、無許諾アプリの存在が利用者を増やしているストリーミング型の音楽サブスクリプションサービスの成長の阻害要因ともなっているようだ。
「友だちや家族が利用」に次いで多かったのは「音楽アプリで検索」の40%。この2つで無許諾アプリを利用するきっかけの大半を占める。音楽配信サービスのLINE MUSIC(東京・新宿)がLINEリサーチを通じて調査し、10月下旬に開催された音楽の見本市である「TIMM」で開催されたビジネスセミナーで公表した。調査期間は2019年10月19日~10月21日で、15~59歳までの男女6万2056人を対象とした。
無許諾音楽アプリとは、無許諾でサーバーにアップされた音楽にリンクして音楽を聴けるアプリのこと。「MUSIC FM」や「MUSIC BOX」といった名前で2012年ごろからアプリストアで配信されるようになった。
日本レコ―ド協会によれば、16年ごろから10代を中心としたユーザーに広く利用されるようになり、模倣アプリもある。こうしたアプリの利用実態について、LINE MUSICでは18年10月に約23万人を対象とした調査を実施。スマホで音楽を楽しむときに最も利用する手段として11%が無許諾アプリと答えたことに危機感を抱き、19年10月にも追加調査を実施して利用実態を探った。
その結果が冒頭の認知経路だ。無許諾アプリを使う理由については、「お金がない」が30%、10代では48%となる。YouTubeなどの動画配信サービスを利用すると毎月のデータ容量が気になり「ギガが不安」とした人は全体で23%で、10代に限ると37%だった。「これで十分」「便利」とした人もそれぞれ50%を超えている。
こうした無許諾アプリを通じて音楽を聴いてもアーティストに利用料などが還元されないことについては、「支払われていない」「支払われているかわからない/考えない」とする人が全体の74%だった。アーティストへの還元などは意識せず、無料で音楽が聴ける便利なアプリとして利用されている実態が浮き彫りになった。
日本レコード協会では6月、日本音楽事業者協会、日本音楽出版社協会、日本音楽制作者連盟の音楽関係4団体と、音楽配信サービス事業会社であるAWA(東京・港)、KKBOX Japan(東京・渋谷)、LINE MUSIC、楽天の4社でアプリを配信するアップルに対して、こうした無許諾アプリへの対策強化について要望書を提出した。
日本レコード協会によれば、「MUSIC FM」「MUSIC BOX」は、19年10月末までにAndroid版が4回、iOS版で15回のバージョンアップをしたが、特にiOS版で削除までに時間がかかった。無許諾音楽アプリは広告で収入を得ているが、その収益はアーティストに還元されておらず音楽市場の拡大を阻害しているという。音楽サブスクリプションサービスは昨年、ダウンロード市場を上回る成長を見せているが、欧米ほど利用率は高まっていない。無許諾音楽アプリの利用拡大もその一因とみられており、業界挙げての対策を急いでいる。