明治神宮外苑内に地上13階建て、362の客室を擁する「三井ガーデンホテル神宮外苑の杜プレミア」が、2019年11月22日開業した。完成を目前に控えた新国立競技場が目の前。さらに都心ながら豊かな緑を抱く好立地とあってオリンピック開催期間はもちろん、それ以降も人気が続きそうだ。

2019年11月22日開業した「三井ガーデンホテル神宮外苑の杜プレミア」。左下の建物は明治神宮外苑アイススケートリンク
2019年11月22日開業した「三井ガーデンホテル神宮外苑の杜プレミア」。左下の建物は明治神宮外苑アイススケートリンク

豊かな緑と新国立競技場が目前の立地

 19年から20年にかけて開業が相次ぎ、20年には運営客室数が1万室に達するという「三井ガーデンホテル」。その中でも三井ガーデンホテル神宮外苑の杜プレミアは、「上質なホスピタリティーをそのままに、ワンランク上の滞在を楽しんでもらい、思い出や記憶を残してもらえるような空間サービスを提供する上級ライン」(三井不動産 ホテル・リゾート本部 ホテル事業部長の小田祐氏)という「プレミア」シリーズの1つに位置づけられる。

建物上部のラインが弧を描いている。これは新国立競技場の中心から、2020年にひっかけて半径202.0メートルの円を描くとできるアールに沿っているとのこと
建物上部のラインが弧を描いている。これは新国立競技場の中心から、2020年にひっかけて半径202.0メートルの円を描くとできるアールに沿っているとのこと

 外観素材に新国立競技場の外観とも調和する「木」を取り入れ、デザインに日本文化に基づいた「反り」を採用するなど、外見からして多くの特徴がある同ホテル。だが最大の魅力はその立地だ。

 19年12月21日にこけら落としのイベントを開催する予定の新国立競技場は、道路を1本隔てただけのまさに目の前。一部客室のバルコニーからは、競技場の拍手や歓声が聞こえそうなほど近距離で、17年に明治神宮外苑地区にオープンした「日本青年館ホテル」と並び、居ながらにして新国立競技場の興奮を体感できるホテルの誕生となった。

13Fジュニアスイートキングのテラスの向こうに、手の届きそうな距離で新国立競技場のルーフが見える
13Fジュニアスイートキングのテラスの向こうに、手の届きそうな距離で新国立競技場のルーフが見える

 南側には明治神宮外苑、北側には新宿御苑、そして西側に明治神宮が控え、都心の真ん中でありながら、貴重な緑を満喫できるロケーション。上層階からは皇居や遠くは富士山まで望む、眺望の特等席にもなっている。

すぐ隣に新国立競技場。都会の真ん中で緑を満喫できる好立地
すぐ隣に新国立競技場。都会の真ん中で緑を満喫できる好立地
宿泊客だけが利用できるルーフテラス。新国立競技場が眼下に
宿泊客だけが利用できるルーフテラス。新国立競技場が眼下に

元は世界記録が生まれた“伝説の水泳場”

 もともとここは「明治神宮外苑水泳場」があった場所。昭和時代に建設され、1948年には故・古橋廣之進選手が自由形で当時の世界記録を大幅に上回るタイムを達成した伝説の水泳場だ。その後、フットサル場として活用されていた土地に、同ホテルが建設された経緯を小田氏はこのように説明する。

 「東京オリンピック・パラリンピック開催が決まったときに、こちらからこの場所の土地を持つ明治神宮に(ホテル建設を)提案した。都市計画における(ホテルの)必要性などから、明治神宮外苑の街づくりに資すると判断され、建設に至った」

エレベーター内に飾られた、1964年の東京オリンピックなどの思い出写真
エレベーター内に飾られた、1964年の東京オリンピックなどの思い出写真

 三井不動産が定期借地(年数非公表)で明治神宮から土地を借りることで、ホテルを運営していくという。景観などに関する同地区のさまざまな条例のほか、明治神宮側から「周辺の景観と調和するホテルを」という要望があり、その外観や内観には多くの工夫が凝らされている。

 例えば外観デザインには前述の天然木を使用したほか、銀杏(いちょう)並木などで知られる「聖徳記念絵画館」と調和する石調フレームが施された。インテリアにも天然木をふんだんに使用したほか、大浴場の壁面に当時の水泳場をイメージした壁面アートを配したり、水泳場を壊した際のがれきを使ったオブジェを館内に展示したりしている。先人が繰り広げたスポーツを巡るドラマなど、この地の歴史を身近に感じられる工夫を各所にちりばめた。

大浴場の壁面アートにはかつての「明治神宮外苑水泳場」の姿が描かれていた。当時の水泳場のタイルを使ったブースもある
大浴場の壁面アートにはかつての「明治神宮外苑水泳場」の姿が描かれていた。当時の水泳場のタイルを使ったブースもある

オリンピック後の需要に不安なし

 とはいえ気になるのは、ホテル余剰が懸念されるオリンピック後だ。小田氏は「不安視する声もあるが、世界のどの都市を見てもオリンピックをきっかけに都市の認知が広がり、オリンピック以降も多くの人が訪れている」と余裕の構え。インバウンドやシニアカップルなどの、観光目的のニーズは拡大すると見ている。

 周囲の緑の恩恵もあってか、客室の開け放った窓からまるでリゾート地にでも来たかのような気持ちのいい風が流れてきた。ロビーフロアの1階には、こうした緑の環境に身を置けるテラス席のあるイタリアンレストラン「RISTORANTE&BAR E'VOLTA」が出店。その他、特別なトレーニングを重ねた視覚障害者が参加者を暗闇の中に案内する世界的な体験イベント、「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」も常設する。

 「知名度を上げるため、予約は19年4月からスタートしている。客室単価2万円強を目指す」と、運営を手掛ける三井不動産ホテルマネジメントの足立充社長も意気込む。恵まれた立地を武器に、新国立競技場と並びオリンピックで沸く東京の新ランドマークとなるか。

(写真/福光恵、酒井康治)