ヤマハは2019年11月11日、ノイズキャンセリング機能搭載の完全ワイヤレスイヤホンなどワイヤレスイヤホン5製品を発表し、イヤホン・ヘッドホン市場に本格参入した。すでに人気メーカーがひしめく市場で成功できるかどうかは、音のバランスを最適化する独自機能にかかっている。

ヤマハミュージックジャパンAV・流通営業部部長 野口直樹氏
ヤマハミュージックジャパンAV・流通営業部部長 野口直樹氏

 ヤマハが発表したのは、ノイズキャンセリング機能搭載の完全ワイヤレスイヤホン「TW-E7A」、完全ワイヤレスイヤホン「TW-E5A」「TW-E3A」、ノイズキャンセリング機能搭載のワイヤレスイヤホン「EP-E50A」、ワイヤレスイヤホン「EP-E30A」の5製品18モデル。19年12月より順次発売し、実売価格(税別)は最も高い「TW-E7A」が2万4000円前後、エントリーモデルの「EP-E30A」が5000円前後で、高級モデルから低価格モデルまでラインアップをそろえて一気に投入する。

ノイズキャンセリング機能搭載の完全ワイヤレスイヤホン「TW-E7A」。IPX5相当の生活防水、ワイヤレス充電、外音取り込み機能なども備える(写真提供/ヤマハ)
ノイズキャンセリング機能搭載の完全ワイヤレスイヤホン「TW-E7A」。IPX5相当の生活防水、ワイヤレス充電、外音取り込み機能なども備える(写真提供/ヤマハ)
ノイズキャンセリング機能搭載のワイヤレスイヤホン「EP-E50A」。実売価格は1万5000円前後(写真提供/ヤマハ)
ノイズキャンセリング機能搭載のワイヤレスイヤホン「EP-E50A」。実売価格は1万5000円前後(写真提供/ヤマハ)

 ワイヤレスイヤホン市場は世界的に伸びており、特にケーブルのない完全ワイヤレスイヤホンは2016年のアップル「AirPods」発売以降、人気は高まる一方だ。ヤマハは数年遅れて後発での参入となる。

 ヤマハミュージックジャパンAV・流通営業部部長 野口直樹氏(以下、野口氏)は「オーディオ市場の8割はサウンドバー、スピーカー、イヤホン・ヘッドホンで占められているが、ヤマハにはイヤホン・ヘッドホンがない。完全ワイヤレスイヤホン市場は変化が激しく、出荷台数は増えているのに単価は下がらないという珍しい市場。市場は拡大を続けており、ヤマハらしい機能を強みに参入できると考えた。1兆円規模の市場でシェア2%、約200億円の売り上げを目指す」と参入の理由と目標を語った。

独自機能がなければ意味がない

 ヤマハが強みに掲げるのが、音量に応じて音のバランスを最適化する「リスニングケア」機能だ。一般的に音量を下げると低音域が聞き取りにくくなり、音量を上げると高音域が耳障りになる。リスニングケア機能は、音量の上下に合わせてイコライジングを施して聞こえ方のバランスを自動調整し、音量が小さくても低音を聞き取りやすくしたり、音量を上げても高音域が耳障りにならないようにしたりする。

 イヤホン内蔵のチップで処理するので、接続しているスマートフォンや音源に関係なく効果を発揮する。どんな音量でも聞きやすい音にすることで、過剰に音量を上げて鼓膜を痛めたり、音漏れで周囲に迷惑をかけたり、周囲の音に気付かず交通事故など危険な目に遭ったり、といったトラブルの減少を狙っている。

 開発には、サウンドバーやホームシアター向け製品の開発で培った、信号処理技術や音質を最適化するためのノウハウが生かされている。市場参入が遅れたのは、自社の強みを生かす方向性を決めるのに時間がかかったからだ。

 ヤマハミュージックジャパンAV・流通営業部マーケティング課課長 飯田哲也氏は「ワイヤレスイヤホン市場が盛り上がり始めたころから参入を検討していた。しかし後発なのにただ製品を出すだけでは意味がない。ヤマハにはDSPの技術や、大音量を出しづらい日本の住宅事情に合わせて培ったホームシアターシステムの独自技術がある。それをイヤホンにどう生かすか検討を重ねて開発するのに時間がかかった」と明かす。

ヤマハミュージックジャパンAV・流通営業部マーケティング課課長 飯田哲也氏
ヤマハミュージックジャパンAV・流通営業部マーケティング課課長 飯田哲也氏

 自社の技術をリスニングケア機能として耳の健康や安全性を高める方向で生かすことになり、機能を調整するのに時間がかかった。新製品のうちノイズキャンセリング機能を搭載した「TW-E7A」と「EP-E50A」は20年2月発売予定と、他の製品より発売が遅れる。これもノイズキャンセリング機能の効かせ方の調整を重ねているからだという。

 新製品をきっかけにヤマハブランド自体の浸透を狙っており、プロモーションにも力を入れている。ターゲットは、20~30代のミレニアル世代だ。「新製品にかけるヤマハの本気度をアピールし、ヤマハブランドを訴求して若いユーザーを育てたい」(野口氏)。ミレニアル世代に人気があるというバンド「WONK」をプロモーションに起用する。

ヤマハのオーディオ製品は、これまでサウンドバーや高級オーディオ機器などが中心だった。イヤホン・ヘッドホンにはヤマハブランドへの入り口としての役割を期待している
ヤマハのオーディオ製品は、これまでサウンドバーや高級オーディオ機器などが中心だった。イヤホン・ヘッドホンにはヤマハブランドへの入り口としての役割を期待している

 「ミレニアル世代を取り込むには、製品だけでなくサービスも大事。アーティストを起用してのプロモーションはヤマハとしては非常にまれだが、コンテンツサービス提供の一種と考えている。こうした取り組みを通じてヤマハブランドを訴求したい」(飯田氏)

 販売でもヤマハの本気が見てとれる。これまでは代理店経由で販売していたが、新製品はヤマハが直接営業の窓口になり、家電量販店や試聴ができるイヤホン専門店を中心に展開する。

 価格面では5000円前後のモデルからと、ワイヤレスイヤホンの売れ筋価格帯をカバーし、機能面でも現在求められる最新機能を網羅しており不足はない。イヤホンに続いてヘッドホンも準備しているという。後発のヤマハが激戦区の市場にうまく食い込めるかは、独自のリスニングケア機能をどれだけアピールできるかにかかっていそうだ。