ロッテが9月に開始した「雪見だいくふう」キャンペーンが話題になっている。ツイッターでキャンペーンの拡散に成功し、1カ月後には話題のアニメ映画とコラボ、そのさらに1カ月後には食品メーカー4社とのコラボレシピを発表と、要所で話題づくりを進めた。キャンペーンの経緯と効果を改めて追ってみた。
アレンジレシピの提案もそろそろ限界……
「雪見だいふく」は1981年の発売以来、従来のバニラ味に加えて「コクのショコラ」「とろける至福生チョコレート」など50種類以上のバリエーションを展開、ロッテ(東京・新宿)のウエブサイトでもさまざまなオリジナルレシピを提案してきた。「正直、そろそろネタが……」と悩んでいたところ、雪見だいふくファン発信のアレンジレシピがインターネットで盛り上がっていることを知ったという。
そこで始まったのが、一般からアレンジレシピを募集する「雪見だいくふう」キャンペーンだ。期間は2019年9月3日から11月29日まで。特設サイト「雪見だいくふう室」に寄せられたレシピの数は、19年10月末現在で約2000に上る。アイスのアレンジレシピが2000というのはすごい数。成功の要因を探ってみた。
まずは応募方法にSNSを活用したことだ。同キャンペーンへの応募には、「雪見だいくふう室」の応募フォームに写真を投稿する方法のほか、ハッシュタグ「#雪見だいくふう」を付けてツイッターまたはインスタグラムに写真を投稿する方法も用意した。実際、「雪見だいくふう室」に寄せられたレシピを見るとSNSからの投稿が目立つ。
ツイッターでバズらせ、話題の映画ともコラボ
キャンペーン名からしてキャッチーな「雪見だいくふう」だが、いわゆる弱音キャンペーンは珍しいことではない。既に飽きられていても不思議はない。そこでインフルエンサーを活用した告知で、キャンペーンをロケットスタートさせた。
そのインフルエンサーは、「簡単・爆速レシピ」で知られる料理研究家のリュウジ氏。19年8月29日、100万人を超えるフォロワーを持つ同氏のツイッターアカウント(リュウジ@料理のおにいさんバズレシピ)に、雪見だいふくの公式アカウント(ロッテ 雪見だいふく)が「ちょっと困っていることがあって…DM送ります。」と相談を持ちかけた。
もちろん相談内容はレシピの開発。するとリュウジ氏は「ロッテさんご安心下さい リュウジ9月3日に作ります」と返信。実際にキャンペーン初日にあたる9月3日にアレンジレシピに挑戦する様子をライブ配信して「雪見だいくふう」をアピール、14万4000人の視聴者を集めた。
その後、リュウジ氏は9月7日に「無限雪見だいふく」なるツイートを投稿。実際には冷凍庫にたくさんの雪見だいふくが入れてあるだけの新レシピ(?)だったのだが、これが3227リツイート、1.4万いいねを獲得し、大きな話題となった。
企業のマーケティングを支援するトライバルメディアハウス(東京・中央)のプロダクトソリューション事業部・井福裕之氏は、「雪見だいふくを『食べたい』『買いに行く』『買う』など、購入行動への意欲を記載したツイート数が9月は1750と、8月の約1.6倍になった」という。キャンペーンはロケットスタートに成功したと言える結果となった。リュウジ氏は10月26日に、今度は本当のアレンジレシピを投稿。こちらも2572リツイート、1.3万いいねを記録した。
続いてロッテは、19年10月11日公開の映画『空の青さを知る人よ』と雪見だいふくのコラボムービーも制作。同作品の登場人物が雪見だいふくのアレンジレシピを食べてみせるという内容で、「あおい篇(雪見塩昆布むすび)」「しんの篇(雪見チーズトースト)」「慎之介篇(雪見&ウイスキー)」「あかね篇(雪見フラポテ)」がYouTubeで公開されている。これら4作品の再生回数の合計は、19年10月末時点で400万回に迫る勢いだ。
コラボムービーももちろんツイッターで拡散。特に10月11日に投稿した、若手人気俳優の吉沢亮が声優を務める「しんの篇」は、2887リツイート、1.1万いいねと、拡散に貢献した。
門前払い覚悟の提案に4社が同意
そして19年10月30日には、食品メーカー4社とのコラボレーションが発表された。永谷園(東京・港)、ポッカサッポロフード&ビバレッジ(名古屋市)、味の素冷凍食品(東京・中央)、雪印メグミルクの各社は、雪見だいふくのアレンジレシピを新たに開発、「雪見だいくふう室」で公開した。
「門前払いを覚悟で十数社にお声がけした」と、ロッテのロッテノベーション本部 雪見だいふくブランドチーム 安藤崇平氏。とはいえ、雪見だいふくの主な顧客層は20~30代の女性だ。コラボした企業には、その層に自社製品を訴求できるというメリットがある。
「雪見だいくふう」キャンペーンは19年11月29日で終了する。9月3日~10月31日までのツイートを調べると、ツイート数は2万5450。一次発信のオーガニックツイート数も2800と多いにバズった。
「キャンペーンは、初速の盛り上げは考えるのですが、後半の盛り上げはあまり考えないケースが多く、尻すぼみに終わることが多い。ロッテのキャンペーンは、後半に盛り上がりネタ(リュウジ氏のレシピ、コラボムービー)をしっかり仕込んでいたのは素晴らしい」と井福氏は分析した。
(写真提供/ロッテ)