新しいユーザーを呼び込みやすいのがいい環境

ターゲットが中高生や女性から全方位に拡大して、マーケティング施策上の変化はありますか。

辻本氏 一貫しているのは「モンハン」以外の“色”が付かないようにすることです。テーマソングにしてもタイアップなどせず、『英雄の証』というオリジナルの楽曲を使い続けています。タレントを起用したCMもありますが、プレーヤー代表として自然に楽しんでもらえるように収録前にかなりゲームの説明をしました。

逆に「モンハン」ブランドを他業種へ持ち出すことは積極的にされていたように感じます。

辻本氏 そうですね、他業種とのコラボは積極的に行ってきました。今はさまざまな企業が当たり前のように行っている「ユニクロ」のTシャツとのコラボも、ゲームIPとのコラボが珍しいタイミングで行えました。

 これは消費者と「モンハン」との接点を増やすことを重視してのことです。コラボなどでキャラクターやタイトル名が露出すれば、「モンハン」をプレーしたことがない人にも認知してもらえます。その分、興味を持ってもらいやすくなり、既にプレーしている人が誘いやすくもなるはずです。「モンハン」は協力ゲームですから、既存のユーザーが新たなユーザーを呼び込みやすくすることが良い環境作りになるのです。

そんな中、『モンハンワールド』は世界的な大ヒットになりました。要因をどう分析していますか。

辻本氏 『モンハンワールド』ほどではないものの、それ以前のタイトルも海外で売れてはいて、各国にコアなコミュニティーがいくつも形成されています。そういう場所に呼ばれてイベントに参加することがありますが、その時は必ず何かしら新しい情報を出すようにしています。結果、コミュニティーとのつながりができてきました。そんなタイミングで『モンハンワールド』の情報を全世界同時に解禁したことがヒットにプラスになったと思います。

 「モンハン」を知っている人と知らない人で出す情報も分けました。特に知らない人には丁寧な情報提供を重視しました。その一例が米ロサンゼルスで開催された世界最大のゲームイベント「E3」(Electronic Entertainment Expo)です。専門性の高いイベントでは試遊台を置いて実際に触ってもらうのが常とう手段ですが、初めてプレーした人は操作を覚えるだけでいっぱいいっぱいで、ゲーム自体の魅力を理解する前に試遊時間が終わってしまうんです。そこで今回はユーザー自身にプレーしてもらうのではなく、スタッフがプレーして見せ、どういうゲームであるかを伝えることに注力しました。

カプコン史上最大のヒットとなっている『モンスターハンター:ワールド』
カプコン史上最大のヒットとなっている『モンスターハンター:ワールド』

『モンハンワールド』が国内だけでなく世界でも売れたのには、これまでと違った工夫があったのでしょうか。

辻本氏 特にゲームの仕様面で海外向けに作っているものはありません。面白さに対する本能的な部分は、日本人も外国人も変わらないと思います。グローバルタイトルになることは目指していましたが、日本のユーザーをないがしろにするつもりは全くありません。

 それよりも、既存ユーザーと新規ユーザーの両方に楽しんでもらうということを意識しました。日本に比べてプレーしたことがある人が少ない海外に対しては、地域や文化の違いよりも「モンハン」に初めて触る人と捉えていました。

『モンスターハンターワールド:アイスボーン』はリリースから1カ月がたちましたが、状況はいかがですか。

辻本氏 『アイスボーン』はグローバルで280万本出荷(コンシューマ版のみ、19年9月時点)と好調で、ユーザーからの反響も上々です。『アイスボーン』の発売を機に『モンハンワールド』自体の売り上げも伸びていて、19年10月にはグローバルの出荷本数が1400万本を達成しています。

『アイスボーン』は大ボリュームですが、新作ではなく拡張版です。それはなぜでしょう。

 今回『アイスボーン』を拡張版としたのは、既に『モンハンワールド』を持っているユーザー全てに楽しんでもらいたいと考えたからです。『モンハンワールド』にはディスク版を購入した人もダウンロード版を購入した人もいます。その全てに向けて発信するには、新作としてリリースするより拡張版にしたほうがいいと考えました。

 新規の方も考えて『モンハンワールド』ではあえてタイトル名からナンバリングを外しました。新規ユーザーが増えるだろうというこのタイミングで「前作をやっていないとプレーできないの?」とか「分からないんじゃないの?」と思われたくなかったからです。

『モンスターハンター:ワールド』と『モンスターハンターワールド:アイスボーン』では「:」の位置が変わりました。今後は『モンハンワールド』をベースに、シリーズ展開するのでしょうか。今後の展開を教えてください。

辻本氏 そこはまだ分かりません。今は『アイスボーン』が出たばかりなので、できるだけ多くの人に長く『アイスボーン』を遊んでいただくことを第一に考えています。東京ゲームショウ2019でアップデートのお披露目をしましたが、今後も大小問わず数回のアップデートをしていきます(関連記事「『モンハン』スペシャルステージで最新情報が一挙に公開【TGS2019】」)。あとは、まだ「モンハン」でプレーしたことがない人に遊んでいただくこと。既に発表していますがハリウッド映画などの展開も考えています。

カプコンでは「バイオハザード」シリーズが映画化されて成功しています。ゲームより映画として認知している人も多いでしょう。

辻本氏 「モンハン」も同様に認知度が高まれば、既存のユーザーがまだゲームをプレーしたことがない人を誘いやすくなると思うんです。あとはグローバルでさらにどういうことをやれるかを考えているところです。

記念イベントとして「DNP Produce MONSTER HUNTER × NAKED『モンスターハンター』15周年展 - THE QUEST -」を19年10月31日から11月12日まで東京・秋葉原のベルサール秋葉原で開催する。制作・演出はネイキッド。プロジェクションマッピングなどを使い、ゲームの世界を体験できるようにした
記念イベントとして「DNP Produce MONSTER HUNTER × NAKED『モンスターハンター』15周年展 - THE QUEST -」を19年10月31日から11月12日まで東京・秋葉原のベルサール秋葉原で開催する。制作・演出はネイキッド。プロジェクションマッピングなどを使い、ゲームの世界を体験できるようにした

(写真/志田彩香、写真提供/カプコン)