ワールドは2019年10月25日、ブランドバッグのサブスクリプションサービス「ラクサス」を展開するラクサス・テクノロジーズ(広島市中区)を約43億円で子会社化した。100億円規模の資金を支援するほか、ワールドの顧客をラクサスに誘導して会員基盤の強化を図り、5年後に150億円の売上高を目指す。

ワールドは、ブランドバッグのサブスクリプションサービス「ラクサス」を展開するラクサス・テクノロジーズを子会社化した
ワールドは、ブランドバッグのサブスクリプションサービス「ラクサス」を展開するラクサス・テクノロジーズを子会社化した
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 「ワールドが目指すファッション産業の新しいエコシステムの中で、ラクサスをシェアリング、リユースの中核事業として位置付ける。ワールドの持つ人材やノウハウの提供、100億円規模の成長資金を支援する」

 ワールドの上山健二社長は子会社化するラクサスに大きな期待を寄せる。その理由はラクサス・テクノロジーズが作り上げた独自のビジネスモデルにある。

 ラクサスは月間6800円(税抜き)で、3万2000点を超えるルイ・ヴィトン、エルメス、グッチといった高級ブランドバッグを借り放題で使えるサービスだ。スマートフォン向けアプリで好きなバッグを探して予約する。自宅のバッグは好きな時に返却できる。返却後に新しいバッグを選んで使える。

 「アパレルのレンタル事業は多数あるが、バッグに特化した競合は少ない。水面下で成長してきた」とラクサスの児玉昇司社長は言う。返却して貸し出すビジネスは、商品の大半が中古だ。アパレルは今も他人が着用した商品を着ることに対する抵抗は少なくない。ストライプインターナショナルのファッションレンタル「メチャカリ」が新品にこだわる理由の1つでもある。一方、バッグは中古を使うことに対するう抵抗が少ない。さらに、自分では手が出にくい高額なバッグも定額で使い放題という利点が人気を集めている。「ラクサスは商材選びが絶妙だ」と他のサブスク事業者は口をそろえる。

ワールドから得た100億円の使い道は

 商材選びだけではなく、データを活用した効率的な経営を実現しているのもラクサスの強みだ。例えば、調達する商品もデータを根拠にしている。「どのバッグがどれぐらい使われて、収益を生んでいるかがデータで分かる」(児玉氏)。貸出率が高くとも、すぐに返却されるバッグは商品が期待値を下回っていると言える。逆に貸出率は低いが、長く使われるバッグは期待値を上回っているため満足度が高い。そういったバッグを優先的に仕入れ、お勧めすることでサービスの継続率が高まり、増収につながる。それが、95%という驚異的な継続率につながっている(関連記事『継続率95% 高級バッグ借り放題、驚異のビジネスモデル』)。

 マーケティングだけではなく、ICタグを活用したバッグの管理体制や物流の効率化、バッグのメンテナンスの内製化など、独自の仕組みを構築することで成長してきた。とはいえ、ラクサスは19年にようやく黒字化したばかり。アクセルを踏み、足早に成長路線を描くためには資金が必要と考え、ワールドの傘下入りを決めた。

 ワールドはまず100億円規模の資金を支援する。資金の主な活用先はバッグの仕入れだ。ワールドの持つ600万人という顧客をラクサスに送客するうえで、3万2000点という現在の商品数はまだ少ない。ラクサスは、消費者が自分のバッグをラクサスで貸し出して収益を得られるCtoCサービス「ラクサスX」を展開するなどして、自社にとどまらない商品調達の仕組みを整えているが、それでも一足飛びに商品を増やすことは難しい。そこで、ワールドの資金援助を得て、ラクサスのデータに基づき収益を生む商品を潤沢にする。

 また、人材の支援もする。「マーケティング、管理部門、デザイナー、とにかく人が足りない」と児玉氏は言う。そういった人材についても、ワールドから派遣するなどして支援する。

 商品数や経営体制を整えたうえで、600万人を超える会員基盤や、百貨店を除く約1500の店舗網といったワールドの資産を活用した会員獲得策を実施する。具体的にはワールドのECサイトの商品ページに、閲覧している洋服と合わせて利用できるバッグを提案して会員化につなげる。また、ワールドの店頭にラクサスのコーナーを作り、顧客が購入した洋服に合ったバッグを提案して、そのまま貸し出すといった店舗でのレンタルサービスの展開も視野に入れる。

 ワールドはシェアリングサービス、リユース企業への投資を積極化させている。18年3月に月額制ファッションレンタル「SUSTINA」を提供するオムニス(東京・港)、18年4月にブランド古着事業「RAGTAG」を展開するティンパンアレイ(東京・品川)を相次いで子会社化。19年9月にはオフプライスストア「アンドブリッジ(&BRIDGE)」の1号店を開店させた。こうしてファッションに関わる事業のポートフォリオを拡大させている。ラクサス買収もその一環となる。

 ラクサスの現在の有料会員数は約2万人で、年間の売上高は2018年8月~19年7月で13億7900万円となっている。ワールドはラクサスを支援することで、5年で会員数19万2000人、売上高150億円を目指す。