米国で流行し、日本でも定着しつつあるのが、専用のロングボードに乗り、立ち漕ぎで進む「スタンドアップパドル(SUP)」だ。だが実はハワイや米国西海岸では、すでに一歩進んだSUPの楽しみ方が出てきている。それが、SUP用のロングボードの上でヨガを行う「SUPヨガ」だ。

 フィットネス大国の米国で流行し、日本でも定着しつつあるのが、専用のロングボードに乗り、立ち漕ぎで進む「スタンドアップパドル(SUP)」。使用するロングボードはサーフィン用のショートボードより浮力が大きく、初心者でも簡単に立ち漕ぎができるため人気を呼び、国内のビーチリゾートで見かける機会も増えてきた。

 だが実はハワイや米国西海岸では、すでに一歩進んだSUPの楽しみ方が出てきている。それが、SUP用ロングボードの上でヨガを行う「SUPヨガ」だ。4月にSUPヨガの体験スクールを始めたTHE BIG BLUE(沖縄県宮古島)の田中航平代表は「SUPで海に漕ぎ出し、海岸から数十メートル離れた波が穏やかな浅瀬で行うSUPヨガは、これまでの室内ヨガとは開放感が格段に異なり、心身ともにリフレッシュできる」とその魅力を話す。

 SUPヨガで使うボードは、SUPと同じもの。THE BIG BLUE では最大クラスの長さ約366×幅91×厚さ15cmで、イタリアのブランド「RRD」のボードを使う。

 ボード上で行うヨガのポーズは地上で行うヨガと同じだ。うつ伏せ状態で両膝を抱える「アパーナアーサナ」という初級ポーズから、両肘で体を支えて逆立ちし、かつその状態から両足を組む「ピーンチャ・マユラアーサナにおけるウールドヴァ・パドマアーサナ」という難易度の高いポーズまで、レベルに合わせて取り組める。

 次ページからは、SUPヨガの代表的なポーズを3段階の難易度別に紹介していく。

SUP用のロングボードの上でヨガをする「SUPヨガ」
SUP用のロングボードの上でヨガをする「SUPヨガ」

誰でもできる! SUPヨガ「初級編」

アパーナアーサナ

 ボードの上で仰向けになり、息を吐く。続いて息を吸いながら両脚を抱え込むように曲げ、胸へ引きつける。右手で左肘、左手で右肘を押さえ、ゆっくりと5回呼吸を繰り返してポーズをキープする。

【期待される効果】腰背部の柔軟性の向上。腰痛予防

ウールドヴァ・ムカ・シュヴァーナアーサナ

 うつ伏せになり息を吐く。両手をボードに置き、手の指先は前に向ける。息を吸いながら、頭と上体を持ち上げ、腕をまっすぐ伸ばし、頭と上体を可能な限り後ろに反らす(膝はボードに付けない)。ゆっくりと5回呼吸を繰り返してポーズをキープする。

【期待される効果】背骨周辺の柔軟性の向上と筋肉強化

ウールドヴァ・ハスタアーサナ

 山のポーズと呼ばれるタダアーサナ(直立ポーズ)をボード上で。骨盤底筋群の引き締めを意識しながら、両手を頭上に伸ばし、手のひらを合わせる。その際、ドリシティ(視線)は指先へ。ゆっくりと5回呼吸を繰り返してポーズをキープする。

【期待される効果】肩こり緩和。ボード上でポーズをとることにより、両脚の筋バランスを整え、平衡感覚も養える

チャトランガ・ダンダアーサナ

 うつ伏せの状態で、胸の横で手のひらをボードにつけ、両足は約25cm離す。そして、両腕をまっすぐ伸ばして身体をしっかりと支え、息を吐きながら両肘を曲げる。全身を一本の杖のように伸ばし、頭から足先までをボードと平行にする。ゆっくりと5回呼吸を繰り返してポーズをキープする。

【期待される効果】二の腕の引き締め、手首の強化

少し慣れたら取り組みたい! SUPヨガ「中級編」

ウッティタ・パールシュヴァコナアーサナ

 まず、タダアーサナ(直立ポーズ)で立つ。息を吸ってから軽くジャンプし、両脚を1~1.2メートル開く。続いて両手の手のひらを下に向け、両手を真横に伸ばす。息を吐きながら、左足つま先を90度外に、右足つま先を少しだけ内側に向ける。左ももがボードと平行になるように左膝を曲げつつ、右足は膝の裏を伸ばして真っ直ぐにし、右手をしっかり伸ばす。ドリシティ(視線)は指先へ。ゆっくりと5回呼吸を繰り返してポーズをキープする。

【期待される効果】内ももの引き締め、ヒップアップ

ウシュトラアーサナ

 膝立ちの状態で両手を尻に当て、ももを前方に押し出すようにしながら、上体を後ろに反らす。息を吐きながら、全身を上に伸ばすようにし、右手のひらを右足裏に、左手のひらを左足裏に置く。息を吸って胸を開き、息を吐きながら骨盤底筋群を締め、背骨がアーチを描くように頭を後方に反らす。ゆっくりと5回呼吸を繰り返してポーズをキープする。

【期待される効果】背骨周辺が伸び、猫背の予防に効果的

サーランバ・シールシャアーサナI

 膝立ちになり、両手を組んで小指側をボードに置く(両肘の間隔は、肩幅と同じくらい)。頭頂部のみをボードに付け、息を吐きつつゆっくりと体重を頭のほうに移動させ、膝、つま先をボードから離す。両脚を伸ばし、全身をボードと垂直にする。ゆっくりと5回呼吸を繰り返してポーズをキープする。

【期待される効果】脳細胞の血行を促進し、思考能力を向上。活力増加にも

マリーチアーサナD

 両足を前に伸ばしてボードに座る。続いて右膝を曲げ、右足を左ももの付け根の上におき、左膝を立てる。息を吐きながら、背骨を90度ほど左に捻り、右脇の下を左ももの外側に付ける。右腕を前方に伸ばしてひと呼吸。そして強く息を吐きながら左手を肩から後ろに回し、右手をつかむ。ゆっくりと5回呼吸を繰り返してポーズをキープする。

【期待される効果】ウエストのくびれ、肩関節の可動域を広げる

難易度MAXのSUPヨガ「上級編」

チャコラアーサナ

 まず両足を伸ばしてボード上に座る。右膝を曲げて両手で足首を持ち、息を吐きながら右足を首後部につける。そして、首と頭を持ち上げて背中を真っ直ぐにする。両手をボードに置き、尻を持ち上げ、身体を両手の平で支える。ゆっくりと5回呼吸を繰り返してポーズをキープする。

【期待される効果】首や背中の筋肉の強化。もも裏のストレッチ

ピーンチャ・マユーラアーサナにおけるウールドヴァ・パドマアーサナ

 四つんばいになり、肩幅くらいの間隔で前腕をボードに付ける。首を伸ばし、頭をできるだけ高く持ち上げる。続いて息を吐きながら逆立ちをするように両足を上げ、バランスをとる。姿勢が安定したら、両足を交差させる。ゆっくりと5回呼吸を繰り返してポーズをキープする。

【期待される効果】肩や背中の筋肉の強化

難易度は高いが、体幹トレーニングの効果あり

 地上で行うヨガに比べ、SUPヨガは波で揺れるボード上で姿勢を維持するため難易度は多少高くなる。しかし、そのぶん通常あまり使われない筋肉が刺激され、効果的に体幹トレーニングができるのが利点だ。「例えばゴルフでスイングする際に軸がぶれない体作りをしたい人や、インナーマッスルを鍛えてリバウンドしにくいダイエットをしたい人など、幅広い層に向く」(田中氏)。

 現在、SUPヨガの体験スクールは首都圏では神奈川県の湘南や、千葉県の一部などにもあり、今後は全国のビーチに拡大する気配。また、SUPボードは数万円から手に入るため、初心者でもサーフィンより気軽に取り組める。今後は、ヨガ好きを中心に個人の趣味としても広がりそうだ。

(文/勝俣哲生=日経トレンディ)

「THE BIG BLUE」
所在地:沖縄県宮古島市平良字久貝 793-9 サンライズぱりなかII303
受付時間:10~19時
定休日:不定休
レッスン料金:
【ベーシックコース(90分)】1人8000円、2人目6000円
【半日午前、午後コース】1人1万2000円、2人目8000円、3人目以降6000円
【1日コース】1人2万円、2人目1万円、3人目以降8000円
【マスターコース(2日間)】1人3万円~、2人目1万5000円~、3人目以降1万円~

当記事は日経トレンディネットに連載していたものを再掲載しました。初出は2014年4月18日です。記事の内容は執筆時点の情報に基づいています

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